- 水内 終一也
- 合資会社アクタリスト
- 経営コンサルタント
対象:営業
「一作業一工程って、何?」
そう思われる方は、私のコラムのカテゴリー「マーケティング以外」というコラムをお読み下さい。
以下は私がトップ営業マンだったときにやっていたことです。
私は地方の出版社で営業マンをしていました。北海道を除く東日本を統括していました。
関東の一部を部下に移管していましたので、私は地方行脚が多く、1週間、特急や新幹線で主要都市の書店さんを回るような生活でした。
1990年代半ばで、まだインターネットも普及していない時代にマッキントッシュを買って、スタンドアローンで自分の机の上にPCを置き、売上管理をしました。
売上管理は営業サポートの女性たちが毎月やってくれて帳票が月初に上ってきます。他の営業は、それを見て、売上が上った、下がったと、個店対応のために営業計画を立てて、1ヶ月、主要店を中心に営業に回ります。
何となく、チェーン店やコンビニエンス・ストアのスーパーバイザーのような仕事です。
私は、個店の帳票が上ってきて、先月の売上と、在庫の数を確認して、今月の売上目標が達成されるには何を何冊納品しなければならないかを個店ごとに一覧にして、その在庫を持ってもらうために、どんな企画・提案が必要か考えて、その提案書を作成していました。
東北や甲信越のお店に毎月行っていたら、旅費交通費で経費倒れになるので、私は、できるだけ訪問しない営業スタイルを構築していました。
行かなくてもできる営業。
魅力的ではないですか?
私は当時「一作業一工程」なんて呼んでいませんでしたが、「一作業一工程」を実践していました。
帳票のデータを入力すると自動的に、その月の売上に必要な納品数がでるように、計算式を入れ込んだエクセルの表を作りました。
もちろん表を作るときは表しか作りません。「一作業一工程」です。
一度、ちゃんとしたものを作ってしまえば、ずーっと使えます。
で、この表があるから、在庫を打ち込むことに専念すれば、納品すべき数が自動で算出できるのです。
ですので、入力するときは入力作業だけ行います。
エクセルの表を打ち出します。
そして自動計算で出てきた納品数をチェックして、修正を掛けます。
修正するときには修正だけします。
で、提案書を作ります。提案書を作るときにはアウトラインプロセッサーを使っていました。
提案書と私が決めた納品数を各書店にFaxします。
Faxするときは、ずーっとFaxを送ることだけします。
だいたい半日かかりました。
そしてFaxを送った次の朝方に、電話をします。
電話するときには電話しかしません。
電話で提案と、私が納品したい数の説明をして、会うことなく、納品が決定します。
ですので、私が営業に行くときには、大きなフェアの企画の説明か、書店の担当者とのコミュニケーションをとることが目的でした。売り込みは既に月の前半で終わっていましたから。
提案は、たいてい販促物が伴うので、私は納品数が確定すると、販促物を手作りしました。
販促物を一個一個、精魂込めて作ったのか?
いいえ。そんなことはしません。
ここでも「一作業一工程」です。
ポップを例に挙げます。
ポップとは本屋さんの店先に立っている「今、これが売れ筋です!」といった葉書サイズの販促物です。
最初に、丁寧にポップを手作りします。
色も塗ります。一つだけお手製のポップを作ります。
これが私にとっての作業見本となります。
このポップの上にコピー用紙を重ね、文字や絵柄のフチを写し取ります。
そして、大量にコピーします。
厚紙をはがき台に切ります。これまた大量に作ります。
そして出来上がったコピーを全て葉書サイズに切り取ります。
コビーを台紙に糊付けします。
自分用のマーカーで作業見本を真似て、フチの中を塗ります。
「一作業一工程」です。
短時間にお手製(に見える?)手書きポップが完成です。
そして、これを個店の納品物に同封してもらえるように、発送担当に依頼します。
私は荷物が到着する予定日の翌日に、各書店さんに電話します。
で、感想や飾ってみての見栄えを尋ね、次に制作するポップの参考にします。
こんな感じで仕事をしていましたから、私は一番営業に出ない営業マンでした。
空いた時間があったので、部内の新規物流の企画も推進できましたし、会社全体に関わる新規事業も推進できました。
普段は本当に売上の高い、毎週フォローが必要な最重要店だけ営業し、それ以外の書店は春、夏、冬の大きなフェアを提案するために営業に行きました。
・・・と、まぁ、昔話ですが。
参考になる部分があるかどうか分かりませんが、営業分野における「一作業一工程」1つだと思ってください。
「そんなことが効果あったのは景気が良かったからだろう!」
そう、お考えですか?
いいえ、違います。
1990年以降、出版業界は既に不況でした。
潰れる出版社が後を絶たない状態でした。
今、騒がれている不況と規模は違いますが、業界内は不況でした。
不況だから、売上が下がるのは当たり前だと思っていらっしゃるかもしれませんが、不況だと勝ち組と負け組が明確になるだけです。
そして勝ち組が生き残り、負け組が市場から淘汰されるだけです。
もし、業界に勝ち組がいないのだとしたら、その業界や商品・サービスは時代に合っていないのでしょう。
ガソリン燃料の時代に石炭を売っているようなものです。
タイヤの代わりに蹄鉄を売っているようなものです。
どこかに勝ち組が存在しているとしたら「一作業一工程」で作業効率を最大化し、アイデアとマーケティングの力で浮上することは可能でしょう。
諦めないで下さい。
・・・話がズレてしまいました。
ではまた。