「面談の仕方がわからない」というマネージャーの悩み
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最近は多くの会社も、人事評価や組織マネジメントの仕組みの中に、上司と部下間の面談や話し合いが盛り込まれるようになりました。
私が社会人になりたての頃、会社に評価面談の制度はあったものの、実際には上司と飲みに行って話したことを面談のかわりにしたり、「どうせ毎日話しているから」などといって面談をさぼっていたりということもありました。自分としては「そんなものだ」と思っていましたし、別にそれでも問題ないとも思っていました。
しかし最近では、特に上司の側がこんなことをしようものなら、不真面目、不謹慎、上司失格などと批判されてしまうような、上司と部下の双方が、面談をとても真剣に捉えていることが増えてきたと思います。
普通に考えれば、面談は自分の給料やその他処遇、これからの自分のキャリアに関わる話をする場ですから、私が経験したような形はおかしいはずですが、その当時はそんなゆるい時代だったと言えるのかもしれません。いずれにしても、上司と部下のコミュニケーションの中で、オフィシャルな面談の場というのはどんどん重要視されるようになってきたと思います。
そんな中で、ある会社のマネージャーから聞いた、ご自身の悩みのお話です。それは「面談をどうやったらよいのか、どのように話を進めればよいのかがわからない」という、面談の仕方についての悩みでした。
この話を聞いて、「マネージャーがこんなことを言っていては、その役割が果たせていない」などと、厳しい見方をする人もいるでしょう。
ただ、ここではマネージャーに、少し配慮してあげなければならない理由があります。
実はこのマネージャーが属している会社は、半世紀を超える歴史のある会社ですが、評価面談の仕組みを導入したのは、つい3、4年前のことでした。
それまでは上司が一方的に評価だけをし、結果をフィードバックすることもなく、また部下からもそれに対する不満の声はなかったそうです。
しかし、世の中一般で行われていることで、上司と部下がともに成長していくために必要な仕組みであると考えて、遅まきながら評価面談を実施することになりました。
ですからこの会社では、上司と部下の面談を経験したことがある人は、当初は一人もいなかったということです。「上司から面談された経験がある人」も「部下を面談した経験のある人」も、社員の中には誰もいません。
制度を始めるにあたっては、特に管理職向けの研修など、いろいろ準備はしましたが、実際にお手本がないということで、特に初めの頃は、「どう面談すればよいのかわからない」という人が、ずいぶんたくさんいたようです。そんなことから、始めはいろいろ混乱もありました。
その後、研修を継続しておこなったり、個別に相談を受けたりということをしながら、社員が面談の場数をこなしていくことで、みんなが徐々に慣れて落ち着いていきました。
ただ、それでも「上司から面談をされた経験がない」というところで、まだまだ自信を持って面談にのぞめない管理職が残っているようです。
これは、社員同士の面談制度を当たり前にやってきた会社からは、想像できないことかもしれませんが、このような苦労をしながら一生懸命に取り組んでいる会社があります。
面談制度が一般的になってきたがゆえに、マンネリ感から「こんなことは時間の無駄だ」などという声を一部で聞くことがあります。
ただ、この会社のように、上司と部下が真面目に面談に向かい、特に上司たちが真剣に悩んでいる姿を見ていると、「不満を言うくらいなら、自分たちで有意義な面談にしていけばよい」と思ってしまいます。
悪い意味の慣れによるマンネリで、せっかくの面談の場を無意味なものにしてしまっているのであれば、それはもったいないことです。
せっかく設けられたコミュニケーションの場を、もっと意味があるものにしてほしいと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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