- 鈴木 克彦
- 株式会社マクス 代表取締役
- 建築家
対象:住宅設計・構造
見学者「このサッシはアルミサッシではないですか?」
私 「ハイそうです」
見学者「えっ、何故ですか?アルミだと結露するじゃないですか」
私 「確かに、樹脂サッシの方が結露はしにくいですが、値段も高いし、
そもそも、結露を防ぐには空気環境の方がはるかに重要なんです」
見学者「どういう事ですか?」
私 「どんなに優秀なサッシでも、ガラスに『はぁ〜っ』てすれば曇りますよね」
と、こんな会話だったのですが、結局私の説明は、そのお客様を納得させる事は出来ませんでした。
ネットで色々調べていらっしゃるそうで、ご本人曰く、
「何が正しくて、何を使えばいいのか分からなくなって来た」
との事。
情報の波に溺れてしまわれていますね。
こうなると抜け出すのが大変です。
確かに、サッシや断熱材の、熱損失係数とか、熱貫流、量何てのをかじり始めると、ドツボにはまる方もいらっしゃいます(笑)。
予算はいくらでも、と言う方なら、最高等級の物を選べばいいのですが、当然そんな方はごく稀。
ここは一つ、細かい性能を云々言う前に、結露と換気という、シンプルな事を知って頂きたいと思います。
まず、結露についてなんですが、もの凄く分かりやすいページを発見致しました。
千葉市学校教育情報ネットワークの学習コンテンツというページです。
その、中学校のページの中に、「飽和水蒸気量」というページがあります。
興味がある方は、この「飽和水蒸気量」というページを使いつつ読んで下さい。
・まず、10畳間に、家族4人で寝ているとします。
・10畳の部屋は、約40m2の容積があります。
・人が快適と感じる湿度は、40〜60%と言われています。
冬場は高い方が暖かく感じ、夏場は低い方が涼しく感じます。
・冬の夜、暖房をして室温が25℃、湿度が60%で、一家は眠りにつきました。
・朝起きると、室温は15℃まで冷えていました。
真冬なら暖房を消しているとこれくらいにはなりますよね。
・さて、就寝中、人は一時間に30gの水蒸気を出しているそうです。
6時間の睡眠で、一家四人で
30g×6時間×4人=720g の水蒸気が部屋に出る計算になります。
・先程のページの飽和水蒸気曲線によれば就寝前、
25℃で60%の湿度で40m2の部屋には、
23g(グラフより飽和量)×60%×4m2=約550g
の水蒸気があった事になり、朝起きるまでには、これに先程の
720g が加わり、1,270gの水蒸気が部屋の中にある計算になりますね。
・ところが、朝、15℃まで冷えると、同じく先程の飽和水蒸気曲線で、
13g(同上)×100%×4m2=520g
までしか、室内に水蒸気として存在出来ません。
・つまり、先程の1,270g−520gの、750gは、水蒸気から水になる、
つまり結露します。
・これは、どんなに性能の良いサッシを使おうが、どんなに良い断熱材を
使おうが、温度が低下すれば、そして人が呼吸をしていれば、
絶対に結露すると言う事を示しています。
さて、でどうやったら結露しないかと言えば、答は簡単。
換気です。
上記の式は、部屋を閉め切っている場合の計算です。
(実際に起こりえる様々なファクターは複雑になるので無視しました)
換気によって、外部の乾いた空気と入れ替えられれば、結露は大幅に減ります。
ただ、どうしても寒いと換気をしないので、結露しちゃうわけですね。
薪ストーブリフォームをしたお話しをコラムに書きましたが、薪ストーブ設置前は、床暖房でした。
本当は、法令で24時間換気が義務付けられていますが、寒いので止めています。
止めちゃ駄目なんですけど止めているご家庭は多いはず…。
当然、一家5人が寝ている寝室は、朝起きるとペアガラスにぐっちゃりと結露が…。
でも、薪ストーブにして、結露はほとんど無くなりました。
理由は簡単。
薪ストーブは、燃える時、煙として煙突から空気が出て行くので、室内に空気を採り入れてやらないと燃焼出来なくなって消えてしまいます。
なので、止めていた24時間換気を稼働させているのです。
その分寒くない様に薪を燃やしていますが。
外部の乾いた空気が入ってくる事で、その空気にはまだ多くの水蒸気が溶け込めるので、結露が無くなったというだけです。
解説:例えば、先程のグラフで、外気温5℃、湿度90%の湿った空気が、
室内に入って25℃まで暖められると、その空気の湿度は30%以下
の乾いた空気になる事がお分かり頂けると思います。
冒頭の、建材の細かい性能よりも、換気が大事って分かって頂けましたでしょうか?
嘘だと思ったら、「○○年無結露補償!」と大げさに宣伝している住宅会社や、断熱材メーカーに、
「換気しなくても結露補償してくれるんですか?」と聞いてみて下さい。
「適正な換気が大前提です」
と言うはずですので。
鈴木克彦 『頑張れ四代目日記』 より