なぜ日本の住宅寿命は短い:土地への価値観−1 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

森岡 篤
有限会社パルティータ 代表
建築家

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対象:住宅設計・構造

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なぜ日本の住宅寿命は短い:土地への価値観−1

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家の寿命を科学する
ヨーロッパと日本とでは土地への価値観がかなり異なり、ヨーロッパ人は日本人に比べ土地への執着が希薄です。
この土地への価値観の違いが、住宅の寿命に大きく影響を与えている、と考えられます。
価値観は、長い歴史の積み重ねによって形成されます。

日本人は農耕民族、欧州人は狩猟民族、と言われます。
「日本人は、農耕民族のため、土地を移動する必要がなく、土地を多く持つことが収入アップにつながるため、土地への執着が強い。これに対し、欧州人は狩猟民族のため、獲物を求めて移動する。従って、農耕民族のような、土地への執着が少ない。」というのです。
ヨーロッパが「獲物を追いかけて移動して生活する」というのは大昔の話で、ヨーロッパ人もかなり農耕民族です。このことが現在に影響しているか疑問です。
一方ヨーロッパは、一般に表土が薄く、地質がやせており、連続して畑作ができないため、耕地の一部を順に家畜を放し、地質を回復してきました。畑作と牧畜を兼業してきたという日本と異なった事情があります。

ヨーロッパの封建制の歴史の中で、戦争により王国の領土は増えたり減ったりしますが、個々には君主が変わるだけで、日本のような土地の争奪は余り起こらなかったことがあげられます。
又、国は王によって支配されているものの、キリスト教会の力が強く、土地に関する決定権は教会が握っていました。このため王の力だけで、他人の土地を分捕ることが難しく、「神の前での契約によりやりとりする」ことが常識となってきたため、「自分の土地は自分で守る」という意識が日本と比べ希薄ではないか、と考えられます。

これら、価値観形成の時代背景については本筋から離れるのでこれくらいにしますが、ヨーロッパ人が日本人と比べ、土地への執着が少ないのは確かです。

土地への価値観の違いは、住宅寿命にどのように影響を与えているのでしょう。