
- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- クリティカルシンキング/バイリンガル教育
“Alternative Facts”に熱狂し「腐敗した独裁政権」に向かうトランプ支持者
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“post-truth” という言葉がOxford Dictionary により “2016 Word of the Year”に選ばれました。(Psychology Today より)
“post-truth”とは:“relating to or denoting circumstances in which objective facts are less influential in shaping public opinion than appeals to emotion and personal belief.”
(世論が、客観的な事実よりも、感情的・個人的な意見に支持される状況を指す。)
全くもってトランプ現象が “post-truth"。
事実・真実などまたいで通り越した状況です。
就任式の群衆の数が歴代最高だなどと、映像を見れば明らかな「大嘘」をなぜ言い通すのか。
最近47年でアメリカの殺人率が最高になったとか(統計をみれば明らかなのに)。
メディアはテロ報道をしていないとか(したのをみんな見たはずなのに)。
そして言い出すのが”Alternative Facts”(トランプの信じる別の事実)。
トランプ本人も、取り巻きも、そして何よりも支持者が、なんでそんな明白なめちゃくちゃな「大嘘」を平然と並べ、それを信じ、支持しているのか。
世界中が悲鳴を上げながら「なんでや〜〜?」と。
その説明には心理学の出番が必要みたいです。
直感的に「事実」を認識する時に必要なのは「論理的な理由」です。
普通は。
ところが実はかなりの人が、「論理的理由」の必要な「事実」ではなく「感情」のみに共鳴することが、研究から明らかになって来ています。
自分の支持している政治家の「嘘」を問題視もせず、その「嘘」に感情移入してしまうのは、そのような人たちです。
特に「恐怖」「不安」感情を煽られると、いともあっさり “post-truth” 状態に落ち込んでしまうのがその類の人たちです。
“post-truth” 状態になどには簡単に陥らない、理性的・論理的な人たちがアメリカ中、世界中で、トランプとその支持者と対決している。
これが今の世界のようです。
お互い「事実」に関する認識を全く共有していないので、「なんでトランプなんかが支持されてるんや〜?!」「なんでトランプを非難するんだ〜?!」の並行線です。
このイライラする平行線に、Psychology では名前までついてます。
“false consensus effect” (みんなが同じ価値観を共有しているという誤った思い込み)
トランプ支持者は、トランプが「嘘」をつけばつくほど、トランプを感情だけで信用する。
メディアが「嘘」の証拠を突きつければ突きつけるほど、トランプに感情的に共鳴し支持してしまう。
メディアが嘘つきだと真剣に思い込み始める。
トランプはロシアのプーチンのファンです。
では、トランプ支持者もプーチンのロシアが好きなんでしょうか。
プーチンの独裁の下、人権も報道の自由も押さえつけられ、今のようにタウンホール集会で言いたい放題していたら、強制収容所送り。
そんなトランプ国家に住みたいと思っているのかも。
汚職が蔓延り、社会は腐り果て、「持てる者」だけが甘美な汁を吸う。
トランプ支持者の多くを占める教育レベルの低い白人労働者階級。
まさか、自分たちが「甘美な汁の仲間入り」出来るなんて本気で思ってませんよね。
まさか。
“post-truth” を見事に作り出し、民主主義に手が届きそうだったロシアを、独裁圧政政権に引き戻したのがプーチンです。
自分と、自分のビジネスに有利になるよう法律を作り変え、自分そして自分のビジネスの邪魔になるものは文字通り抹殺して行きました。
ジャーナリストも殺されました。
自分に不利な報道をするものは消せ、です。
プーチンの支持率は高いです、ロシアでは、もちろん。
2016年は82%!
トランプも羨ましくて仕方ないでしょうね。
自分で支持率を操作したい! 早く!!
選挙運動中のトランプがMCNBCのインタビューでこう答えていました。
「プーチンは自分に反対するジャーナリストを殺していますが?」
「アメリカでも殺人は多いの知ってるかい?」
報道官のSpicer の態度を見ていると、すぐそこまでトランプ独裁圧政政権が迫っているのを感じます。
自分の娘のブランドとの契約を切ったデパートを、職権を使い脅した大統領がトランプです。
「理性・論理」を無視し「感情」のみに大きな判断を任せたトランプ支持者たち。
まんまと“post-truth” の泥沼に引きずり込まれました。
「腐敗・圧政・独裁政権」にまっしぐら。
クリティカル・シンキングの国、アメリカの「理性・論理」の力がどうやって “post-truth” の腐った勢いを止めるのか。
手に汗握って応援したいと思います。
このコラムの執筆専門家

- 大澤 眞知子
- (クリティカルシンキング/バイリンガル教育)
- Super World Club 代表
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カナダ在住。カナダからオンライン講座カナダクラブ提供。留学生へのアカデミックサポート(エッセイ指導)留学希望生へのアカデミック準備 (Reading, writing, エッセイ基本)Critical Thinking指導、最新の理論に基づくBilingual Education特別提供中。
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