「考えなければならないこと」と「考えても仕方がないこと」の見極め
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昨年末の忘年会の席で、ある人が自分の勤める会社の愚痴を話し始めました。
お話によれば、今期から異動になって担当している仕事は、自分に向いていないし、やりたいことではないのだそうです。
ご本人曰く、「あるプロジェクトが失敗したせいでの異動だと思うが、そもそも会社として体制が整えられなかったことが原因で、どうしようもなかった」とのことです。
さらに、その異動先の上司と、どうも肌が合わないのだそうです。自分からの依頼がペンディングになっていたり、打ち合わせ等でもなかなか自分の意見が理解してもらえなかったりして、時間ばかりかかってしまうそうです。以前の上司は、もう少しいろいろな事を任せてくれていたのだそうです。
「今はとにかく仕事のやる気が出ない」ということでした。
会社勤めの人であれば、わりとありがちな話のように思いますが、少し問題だと思うのは、出てきている話の大半が、“考えてもどうにもならないこと”“考えても仕方がないこと”であるということです。
そもそも会社に雇われている限り、自分が相当に努力していたとしても、成果を上げていたとしても、どんな仕事を与えるかを決めるのは会社なので、不本意な仕事への異動という可能性は常にあります。
後から掛け合っても、撤回されることはほぼないでしょうから、本当に嫌なら辞めるくらいしかできることはありません。不本意な異動の確率を減らすには、社内で出世して、自分が上位の立場になっていくしかありません。
また、プロジェクトの失敗の話も、理由はどうあれ過去のことなので、今さらどうすることもできません。
上司についても同じようなことで、上司が部下を選べることはたまにはありますが、部下が上司を選べることは、基本的にはありません。
こうやって考えると、サラリーマンというのは、“自分ではどうにかできないこと”の比率が多いと感じます。
私たちのような独立事業者でも、そういうことはいろいろありますが、他人の意志や行動に、一方的に振り回されるということはほとんどありません。仮に振り回されたとしても、「今回は振り回されておこう」と自分で決めています。
もしも今回話題にあげた愚痴の人が、“自分でどうにかできること”を増やそうとすれば、まずはこれからどう行動すれば良いかを考えるべきです。
上司との関係性では、まだお互いの信頼関係がないということで、新しい上司にとってもまだ信頼できる部下ではないということでしょうから、「上司と密にコミュニケーションをとる」ということで、徐々に任される範囲を広げていくしかありません。
過去のプロジェクト失敗によるレッテル貼りが本当にあるのであれば、「プロジェクトの失敗理由を上申して理解してもらう」などという行動は考えられます。
仕事の向き不向きは何とも言えませんが、何が向いているかは他人から見た目の方が合っているという場合もあります。はじめは嫌々でもやってみると意外に向いていたという話はよくありますし、会社としてもその部署に異動させた意図はあるはずです。本人が「向いていない」と思えば思うほど、本当はできるはずのこともできなくなっていってしまいます。
こんなことを実行していくことで、考えてどうにかできることの比率を上げて、できることとできないことのバランスを多少は整えることができるはずです。
自分で“考えなければならないこと”と、“考えても仕方がないこと”を見極めて、そのバランスを取ろうとすることは、特にメンタルの維持という面からも大切なことだと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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