米国判例:ビジネス方法は特許されるか?(第2回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国判例:ビジネス方法は特許されるか?(第2回)

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米国判例:ビジネス方法は特許されるか?(第2回)
〜ビジネスモデル特許の判断基準 大法廷判決〜  河野特許事務所 
2008年11月21日 弁理士 河野 英仁
                In re Bernard L. Bilski
                     and
                  Rand A. Warsaw

2.背景
 (1)発明者Bilskiらはヘッジ取引に関する特許出願(出願番号08/833,892、以下892出願)を行った。本発明は、定価にて販売される商品の消費リスクを管理するアイデアである。

 892出願のクレーム1*5は以下のとおりである。

定価にて商品提供者により販売される商品の消費リスクコストを管理する方法であって以下のステップを含む
(a)前記商品提供者と前記商品の消費者との間の一連の取引を開始するステップであり、前記消費者は、過去の平均に基づき定率で前記商品を購入し、前記定率は前記消費者のリスクポジション(risk position)に関連し、;
(b)前記消費者に対し対抗リスクポジションを有する前記商品のために市場参加者を特定するステップ;and
(c)前記市場参加者による一連の取引が前記消費者の一連の取引に係るリスクポジションの平衡を保たせるように、第2定率で前記商品提供者と前記市場参加者との間の一連の取引を開始するステップ.

(2)本願は商品のヘッジ取引に関する方法をクレームしている。図1は発明の概要を示す説明図である。


図1 発明の概要を示す説明図

 石炭発電所(消費者)は、発電のため石炭を購入する。石炭発電所は、石炭の急激な需要増加を望まない。急激な需要増加は、石炭価格の高騰を招くからである。反対に石炭採掘業者(市場参加者)は石炭需要の急落を望まない。需要急落は石炭の販売及び価格の低下を招くからである。

 クレームされた方法は、新たに仲介業者となる商品提供者を作り出し、この商品提供者が、定価にて石炭を石炭発電所に販売する。商品提供者は、定価を超える石炭価格の上昇の引き金となる需要急上昇の可能性を排除する。

 また、商品提供者は、石炭採掘業者から石炭を第2定価で購入する。これにより、第2定価以下の低額となる需要急落の可能性を排除する。このように、商品提供者は、これらのリスクをヘッジし、需要及び価格が急上昇した場合、不利な価格で石炭を販売する一方で、有利な価格で石炭を購入することができる。反対に、価格及び需要が急落した場合、不利な価格で石炭を購入するが、有利な価格で石炭を販売することができる。

(3)審査官は、「Technological Art」テストのもと、単なる抽象的なアイデアに過ぎず、101条に規定する法定主題ではないと判断した。出願人はこれを不服として審判請求を行った。

(4)審判部は、審査官がなした「Technological Art」テストは妥当でないものの、当該クレームは、「物理的でない金融リスク及び商品提供者、消費者及び市場参加者の法的責任」の変換に過ぎず、いかなる物理的な変換をも含んでいないことから、特許法第101条に規定する法定主題ではないと判断した。さらに審判部は、SSB事件で示された「有用、具体的かつ有形の結果(Useful, Concrete and Tangible Result)」テストをも満たさないことから、特許法第101条に規定する法定主題に該当しないと判示*6した。

(5)出願人は審判部の判断を不服として控訴した。

  

(第3回に続く)