日本郵政グループ3事業、上場!! - 財務・資金調達全般 - 専門家プロファイル

竹内 大涼
株式会社トーカイエフェクト 代表取締役
三重県
資金調達コンサルタント

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対象:財務・資金調達

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日本郵政グループ3事業、上場!!

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皆さんもご存知の通り、平成27年11月4日に「日本郵政」と傘下の「ゆうちょ銀行」、「かんぽ生命保険」が東京証券取引所に株式上場しました。

今回の上場で3社の株式のそれぞれ約11%が投資家に売却されました。売り出し価格(日本郵政1400円、ゆうちょ銀1450円、かんぽ生命2200円)に対する株式の配当割合は2~3%ということもあり、個人投資家の注目が集まり、売り出し価格の3社の時価総額は14兆1450億円で、民営化企業としては1987年のNTT(初値で約25兆円)以来の大型上場となったようです。
また、3社合計の売り出し総額は約1兆1億円で、2014年の全新規株式公開(IPO)を上回る規模だったとのことです。

上場したそれぞれの企業規模は、「日本郵政」は、資本金3.5兆円、従業員約3000人、「ゆうちょ銀行」は、資本金3.5兆円、従業員約1.3万人弱、営業所数234、「かんぽ生命」は、資本金5千万円、従業員約7000人という、一大グループです。

■ゆうちょ銀行と中小企業融資について
私たち中小企業にとっては、やはり「ゆうちょ銀行」の動向が気になります。

ゆうちょ銀行としては、上場したのですから、株主の期待に応えなければなりません。そのためには企業価値を高める必要がありますが、他の銀行にはない規制を受けており、課題が多いのも事実です。

ゆうちょ銀行が新規業務に進出する場合は、金融庁や総務省の「認可」が必要となります。ただし、持ち株会社である日本郵政がゆうちょ銀行の株式を50%以上売却した時点で「認可制」から「届け出制」に緩和されるようになります。

なお、現在のゆうちょ銀行の預金限度額は1000万円です。住宅ローンなど貸し出し業務も基本的に取り扱っていません。しかしながら今回の上場で、さらに民営化が進むことになれば、将来的には、個人・法人向けの融資をはじめ、地域の中小金融機関などが手掛けている様々な銀行業務にも参入しやすくなることでしょう。

それと、今まさに「金融再編時代」に突入している感がありますが、このゆうちょ銀行の上場が金融再編に繋がるという見方もあります。ゆうちょ銀行が融資業務などに進出すれば、地域の金融機関にとっては、融資業務や住宅ローンで競争が激しくなるかもしれませんよね。よって、地域金融機関は、再編による規模拡大や効率経営を求められることになるかもしれません。

現在のところ、ゆうちょ銀行は、「預金限度額の引き上げ」以外にも、「住宅ローンなど個人向け融資」、「法人向け融資」、「損害保険の募集業務」などへの進出を目指しているようです。

それに対して、銀行業界からの反発は凄まじいものがあります。報道によりますと、全国地方銀行協会の寺澤辰麿会長(横浜銀行頭取)は「同じ土俵で相撲を取れと言うなら公平な競争条件の確保が必要」と述べ、政府関与が残る状態での新規業務は不公平だと反発しているようです。ゆうちょ銀行の預金額は約178兆円。約100行の預金を合計しても約319兆円です。ゆうちょ銀行の2倍に満たない預金額の地銀が反発するのも頷けます。

しかしながら、私たち中小企業にとってはメリットもあるのではないでしょうか。今回の上場に関しては、国家レベルやマクロの視点に立って、リスクやデメリットを論じている専門家の意見もあり、それはそれで説得力があります。しかしながら、私たち“中小企業”にとっては、ゆうちょ銀行の融資業務等への進出などがあれば、メリットがあると思いたいものです。実際のところは、歴史とノウハウを蓄積している銀行や信金と正面で競合できるようになるまでには相当の時間を有すると想像いたします。よって、ゆうちょ銀行としては、銀行との連携等によって新業務への進出を行っていくという見方もあります。

私たちとしては、今後のゆうちょ銀行業務の動向と金融再編の行方、そして、取引先金融機関の動向などを総合的に加味しながら、自社の方向性を探っていくことが重要だと思われます。