売れ筋の裏に「広報」あり - 地域活性化・町おこし - 専門家プロファイル

井門 隆夫
株式会社井門観光研究所 代表取締役
東京都
マーケティングプランナー

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対象:イベント・地域活性

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売れ筋の裏に「広報」あり

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よくある地域観光に関する取材の実態

私: 「地域の○○について取材をしたいのですが、どちらを取材するのが適当か、お教えいただけないでしょうか」。

観光協会等: 「それは何軒かありますが、こちらでは一軒をおすすめはできません。連絡先を全てお教えしますので、かけてみてください」。

私: 「ご紹介をいただいたのですが、取材を・・・」

お店や宿: 「今、担当者が不在しておりますので、夜にかけ直してください」。

私: 「ご紹介をいただいたのですが、取材を・・・」

お店や宿: 「今忙しいので、日中にかけ直してください」。 

私: 「ご紹介をいただいたのですが、取材を・・・」

お店や宿: 「今、担当者が不在しておりますので、夜にかけ直してください」。

私: (知人に)「どなたか知らないすか」。

知人: 「知ってるよ。××さんがいいと思うよ」。

××さん: 「取材ありがとうございます。どのように対応すればよいですか」!

私: 「わざわざお電話までいただき恐縮です。はい、取材は・・・(といって初めて進む)」。 


地域の「広報窓口」を誰が担うか

上記のようなやり取りは(もちろん全てではありませんが)誇張ではありません。実は、毎回のように繰り返される日常です。

結局、取材は個人的な人脈をたどり行うことがほとんどです。雑誌や新聞を見ても、いつも同じような店や宿ばかりが出ている。そんな傾向をお感じになっているとすれば、それは、メディアに人脈の多い店や宿だからだと思います。そして、そうしたメディアに出た店や宿を、他のメディアもまた取材するというサイクルにはまっていくのです。

しっかりした企業は、広報課を設け、メディア取材対応(写真等の提供を含む)をしっかりやっています。しかし、中小企業は残念ながら、現場の対応に忙しいのが実情で、なかなか取材対応までしっかりできないのが本音だと思います。

観光業を含む、中小企業の多いサービス業の生産性を高めよという議論が政府から巻き起こっていますが、生産性を高めるためには、オペレーションの効率化も大切ですが、「需要を増やす」→「商圏を拡大する」→「新規市場を開拓する」というプロセスがもっと大切だと思います。そのために、必要なことのひとつとして「広報」(メディア対応)が欠かせないと思うのです。

そこで、観光協会をはじめとする行政の出番。地域の民間の店や宿の強みを熟知し、公平性の観点以前に、経営方針ややる気を基準に、どんどん広報していけばよいのです。

しかし、行政で「広報」というと、自らがやっていることを市町村民に告知することが「広報」であり、自らの町を外部に知らせることまで「広報」だと思っていないケースもまだまだ少なくありません。もちろん、そうしたことまで手が回らない実態もあると思います。


観光に力を入れている町はしっかりと広報対応している

ただ、最近ではしっかりと一民間企業の情報に関しても広報をする行政が増えてきました。そして、そうしたまちが勝ち組になりやすいような気がするのです。

例えば、長崎県の平戸市に「定置網漁体験」をさせてくれる綾香水産という漁業者がいます。今では、海外からも多くのお客様が押し寄せ、大人気。平戸市の集客にも大きく寄与しています。

この定置網体験の予約をはじめ広報対応は、綾香水産さんではなく、市の観光課が対応されています。綾香水産はあくまで漁業者であり、なかなか利用者やメディアに細かな対応はできません。そうしたフォローをされているのです。

あるいは、伊勢志摩サミットが決まった三重県の伊勢志摩地域の鳥羽市。こちらでも、インバウンド(訪日外国人)の対応が増えてきました。その対応や営業を行っているのは、鳥羽商工会議所。民間企業が個々にやるのではなく、協議会を作り、その事務局を商工会議所が担う形で、広報機能を担っています。

いずれも共通するのは、町全体の広報ではなく、「一民間企業」の広報に関しても、しっかりと行政(もしくはそれに近い機能の組織)が担っているのです。

このような「地域のワンストップ販売機能」も合わせ持った組織のことを、DMO(Destination Management Organization)といい、政府の地方創生の基本方針骨子(13ページ)にも、その育成と支援がしっかりとうたわれています。

すなわち、よくマスコミに出たり、海外で話題になったりする地域は、しっかりした「広報」機能を持つ「DMO」が担っており、冒頭のような会話は成り立たないのです。

本当に、取材の窓口になってくれ、一民間企業でも紹介してくれる担当者がいる市町村は、取材が楽で、楽しいです。こちらも、もっと知ってもらおうと頑張りたくなります。

こうした気持ちはきっと(取材が本来の仕事ではない)私だけではなく、それがお仕事である、多くのメディアの方々が思っていることではないかと思います。

地域観光を担うサービス業の生産性を高めるためにも、どの町でも、「広報」窓口機能を充実してもらえればと願っています。

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