建築基準法における壁量計算法の問題点 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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建築基準法における壁量計算法の問題点

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これからの家づくりの視点 木造住宅は本当に構造計算をしなくても良いのか?
さて、それでは予告通り、基準法における木造住宅2階建てについての構造チェックの問題点についてお話を始めましょう。

1) 計算上の耐力が実際の耐力を反映していない。
  壁量計算法では耐力壁の実験に基づき壁倍率を決めていますが、垂れ壁、腰壁、間仕切り壁などの耐力を評価基準から外しています。そのため、建物の実際の耐力と計算上の耐力が大きく異なり、正確な建物の耐震耐風性能の評価ができないのです。

2) 必要壁量が過小に評価されてしまう場合がある。
  壁量計算では必要な耐力を床面積1m2当たりの耐震必要壁量として定められていますが、まず、その値の元となった固定荷重が低めに設定されている、という問題があります。
 2階建ての場合など「総2階建て」を想定したものであるため、建物形状が複雑な場合に外壁や屋根軒先の重量、下屋の屋根重量が大きくなることが見落とされ、結果として、不整形な建物や重たい屋根の建物の場合には、必要壁量が過小に評価されてしまう場合があるのです。

3)床剛性に関する規定がない。
  壁量計算法は耐震要素として壁の剛性のみを規定したものですが、実際には床にも剛性がなければ例え壁量を満たしていても耐力壁に力が伝達されず、床が先行破壊されて倒壊する恐れがあります。
 例えば、外周部に面して「吹き抜け」や「階段」等が設けられた場合には、その外周部の耐力壁に力を伝達する「床」がないので、その周辺の床を通常より剛にして力を伝達するなどの配慮が必要となるのですが、基準法ではこの極めて重要な要素が欠落しているのです。

4) 過剰な仕口金物
  関西淡路大震災の時に、耐力壁として筋交いがきちんと入っていても柱が土台から抜けて倒壊してしまっている、という教訓を元に、仕口金物の規定ができました。
  金物の設置方法は、告示1100号の表から求める方法とN値計算による方法の2種類が示されています。
  告示1100号の表の根拠となるN値計算法は、耐力壁が地震等の水平力を受けて両側の柱が浮き上がろうとする力を押さえ込む、柱自重の値が出隅の柱とその他の柱で一律に定められており、実質にそぐわない過大(又は、過小)な金物が設置されてしまうことがあります。
  また、告示1100号の表は、計算を簡便にするため、2階建ての1階柱では上階からの引き抜き力が過大(安全側)に設定されており、必要以上の箇所に、また、必要以上に大きな金物を設置しなければならない結果になっています。

 この様に、基準法の規定ではまだまだ構造の問題に対して不備があることが分かります。
 次回は、品確法の新壁量計算法ならどうなのか? 見てみましょう!