- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
お陰でそれまで性善説で成り立っていた基準法も、一気に性悪説に変わり、突然、極端な締め付けが行なわれた事によって、建設業界は官製不況に落ち入ってしまいました。
これだけ厳しくなれば、建築物の安全性はもう問題ないだろう、と思われている方が多いかもしれません。
しかし、木造住宅については、耐震偽装問題とは別に、構造の安全性については未だに曖昧な部分が多々残されているのです。そして、多くの設計者がその問題点を知らぬまま木造住宅の設計をしているのです。
今回は、木造住宅の構造の安全性について実際にどのような検証が行なわれているのか、そして、どこにどんな問題が残されているのか、取り上げてみたいと思います。
現在、建築基準法において構造計算(許容応力度計算)が必要とされているのは木造3階建ての場合のみであり、木造2階建て以下の場合には構造計算が必要とされていません。
仕様規定として、壁量計算、壁のバランス、柱接合部の3つのチェックのみで、それ以外は建築士の判断に任されているのが現状であり、こうしたチェックを行ったかどうか、ということも確認申請時にはその提出を免除されています(今後、提出を義務付ける方向で検討されていますが、)。
また、旧基準法においては壁量計算のみのチェックで、壁のバランス、及び柱接合部のチェックが付け加えられたのは、関西淡路大震災による法改正の時でした。これにより在来軸組工法による木造住宅の構造的なウイークポイントが随分改善された訳ですが、問題点を総てクリアーした、という訳ではないのです。
現在、木造住宅を構造的に検証する手段として次の3つの方法があります。
1) 建築基準法の告示等で示されている方法(壁量計算法)
2) 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)の新壁量計算法。
3) 許容応力度計算法。
次回は、1)の建築基準法における壁量計算法の問題を取り上げます。
ちょっと難しいかもしれませんが、お付き合い下さい。