中国特許民事訴訟概説(第4回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国特許民事訴訟概説(第4回)

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中国特許民事訴訟概説 ''〜中国で特許は守れるか?〜''(第4回) 
河野特許事務所 2008年9月2日
執筆者:弁理士 河野英仁、中国弁理士 張   嵩


4.裁判管轄
(1)事物管轄
  特許事件の第1審案件は原則として中級人民法院が管轄する(法釈(2001)第21号第2条)。中国は2審終審制であるため控訴審である高級人民法院の判決を経て裁判は終了する(人民法院組織法第12条第1項)。日米の如く3審制でない点に注意を要する。
 また,訴額に応じて高級人民法院が第1 審となる場合もある(北京市高級人民法院・北京市各級人民法院の第1審知的財産権民事紛争案件処理の審級別管轄に関する規定,京高法発2002年338号)。この場合,最高人民法院が第2審となる。このように最高人民法院が第2審となる場合もあることから,日米の裁判所と異なり,どの段階においても,事実の認定及び法律の適用のいずれをも争うことができる。このように,中国の人民法院は4層構造であること,2審終審制であること,及び,第1審が事案に応じて相違すること,この三つのポイントを理解しておくことが重要となる。
 第2 審で判決が出た場合,それで終わりか?答えは否である。例外的に民事再審(Retrial)制度(以下,再審制度)が設けられている。この再審制度は日本国特許法第171条の「再審」とは全く性質の異なるものである。以下にその詳細を説明する。
(2)再審制度
1.再審制度とは
中国における,再審制度は,裁判監督手続きとして設置されている特殊な手続きである。人民法院の発効した誤った判決または裁定に対して再び裁判をする制度である。事実の認定,及び,法律の適用のいずれにおいても誤りがある場合は,本制度により再度審理を行う。
2.再審手続きを起動する主体
 中国民事訴訟法によって,再審を起動するのは以下の3主体である:
(a)人民法院
 各級の人民法院内部において,院長の提出及び裁判委員会の討論を経て,再審手続が起動する。また,上級の人民法院は下級の人民法院の発効判決・裁定,最高人民法院は地方の各級の人民法院の発効判決・裁定に対して,再審を起動できる。これは最高人民法院を頂点とする人民法院システム自体の内部監督を意味する。
(b)人民検察院
 最高人民検察院は各級の人民法院の発効判決・裁定に対し,また,上級の人民検察院は下級の人民法院の発効判決・裁定に対し,控訴の方式にて再審手続きを起動できる。これは,人民検察院による法律執行への監督を意味する。
(c)当事者
 当事者は人民法院の発効判決・裁定・和解書について不服を有する場合,同級または上級の人民法院に再審請求を申し立てることができる。なお,現行の民事訴訟法においては同級または上級の人民法院に再審請求を行うことが可能であるが,法改正予定の民事訴訟法においては同級の人民法院には再審請求ができず,上級の人民法院にのみ再審の請求が可能となる。

(第5回に続く)