法定労働時間とは、労基法第32条で定めた「1日について8時間、1週間について40時間(特例事業場は44時間)」のことをいい、一方の所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で会社が就業規則などで独自に決めることができる労働時間をいいます。このケースのように、午前9時から午後5時まで(休憩時間1時間を除く)の会社の場合、所定労働時間は7時間ということになりますから、必ずしも法定労働時間と所定労働時間はリンクしません。
法定労働時間と所定労働時間の相違点は、時間外労働の割増賃金について影響します。時間外労働として25%以上の割増賃金を支払わなければならないのは、あくまでも法定労働時間を超えた時間についてです。したがって、この会社のように所定労働時間が7時間である場合には、法定労働時間の8時間に至るまでの「空白の1時間」については割増率を乗じる必要はありません。一般的にこの「空白の時間」を「法内残業」などと呼んで、労働基準法上の時間外労働と区別しています。法内残業時間には割増賃金の支払いは不要ですが、通常の賃金は支払うことになります。ただし、月給制の場合、「空白の1時間」は、月額賃金に含むものと定めれば別途支払う必要はないとする判例も示されています。
また、時間外・休日労働をさせる場合には、会社と労働者の過半数代表者との間で「時間外労働・休日労働に関する協定届」(通称「36協定届」)を締結し、労働基準監督署へ届け出なければなりませんが、これも、法定労働時間を超えて労働させる場合に限って義務付けられているものですので、日々の勤務が法内残業の範囲で事足りるのであれば、届け出る必要はありません。