倫理観と経済発展　～香港の地下鉄で気づいたこと～

　　私たちが電車に乗ると「お年寄りや体の弱い方がいらっしゃったら席をお譲りしましょう」とか、「車内や駅構内の環境美化に努めましょう」といった案内がよくされます。香港でも同じようにされており、むしろ日本より徹底されているように見えました。お年寄りに席を譲る若い方を見かけました。地下鉄駅の構内にはごみは全くと言ってよいほど落ちていません。

　「香港の方は、経済発展をした理由をしっかりわかっているのではないか。」

と思いました。

論語に次のような一節があります。

「富と貴きとはこれ人の欲する所なり。その道をもってせざれば、これを得るもおらざるなり。貧しきと賎しきとはこれ人の悪（にく）む所なり。その道をもってせざれば、これを得るも去らざるなり。」 

＜意訳：豊かさと高い社会的地位とはだれもが求めるものである。勤勉な努力や高潔な人格といった正当な手段を用いなければ「真の幸福」は実感できない。貧しさと低い社会的地位とはだれもが求めようとは思わないが、他人への温かい思いやりを忘れず一生懸命に働いた結果として「貧乏な現状」があるのであれば、気にする必要は全くない。＞　

人が生きるための正しい道とは？

　世の中で何が正しい道かは人それぞれ違うでしょう。それでも、どの地域にも共通する部分はあるように感じます。香港で地下鉄に乗っている方を見ていると、日本人が昔もっていたと思われる正しい道のようなものを持っている方がたくさんいらっしゃるなと感じました。例えば、相手を思いやる、決まり事を守る。といったことです。

　国の豊かさの物差しは、大企業の株価指数とか、不動産の価格とか、そのようなもので計られがちです。ただ、人の心の持ち方やしぐさも国の豊かさの物差しに入れてもいいのではないかと、このたびの旅行で思った次第です。