- 飯田 裕
- つくばオーラルケアクリニック 開設管理者/院長
- 茨城県
- 歯科医師/医学博士
対象:インプラント・歯科口腔外科
- 河合 毅師
- (歯科医師)
- 河合 毅師
- (歯科医師)
1.原因不明の頭痛や歯痛は歯ぎしり・くいしばりが原因かも?!
歯科医学的には、異常な咀嚼筋(=あごを動かす筋肉)の活動や、無意識に上下の歯を噛み合わせたり、接触するような顎(あご)の運動を”ブラキシズム”と呼んでいます。夜間、眠っている時に行っている、いわゆる「歯ぎしり」や「くいしばり」も広い意味でこのブラキシズムに含まれます。
異常に強い力で、あるいは結構な頻度で、長期にわたってブラキシズムが繰り返された場合、
1)歯の異常な摩耗や破折、亀裂など
2)むし歯じゃないのに歯ががしみてしまう”知覚過敏症”
3)顎の関節痛や咀嚼筋のコリや張り、筋肉痛などいわゆる”顎関節症”
などが引き起こされます。
側頭部の頭痛で”偏頭痛”と診断されて、長期にわたって投薬を受けても改善せず、当クリニックでマウスピース型の歯ぎしり防止装置(スプリント)を作製し、これと筋肉をほぐすお薬の内服で簡単に改善したケースもございます。
また、ブラキシズムは顎関節症、口腔顔面痛、頭痛などとの関連だけではなく、一度修復した治療済みの歯や、入れ歯、インプラントなどに大きな負荷が加わることで、様々な問題を引き起こすやっかいな存在でもあります。
20年ぐらい前までは、ブラキシズムの原因はいわゆる噛み合わせ(咬合)の悪さが関係していると考えられてきましたが、近頃は脳の生理学や睡眠医学の分野から就寝時のブラキシズムは中枢神経の活動によって引き起こされることが分かってきています。
簡単に言えば夢を見たり、寝返りや寝言のように脳の活動によって引き起こされているということです。寝ている間に頻回に寝返りをうつ場合もそうですが、ブラキシズムもよく眠れていない時、睡眠のリズムが崩れている時に出現しやすく、必ず浅い眠りのパターンであるレム睡眠の時間帯に出現することが知られています。
2.あなたも歯ぎしり・くいしばりをやってるかも?簡単にチェックする方法
お仕事中や何かに集中している時など、ふとした時にやっている噛み癖やくいしばりは、就寝中のブラキシズムと比べて、そこまで強い力でのくいしばりではないため、ここでは分けて考えることにします。ちなみに覚醒している時のものは、”習慣性かみしめ”、”口腔習癖”、”歯牙接触癖”などと呼ばれますが、私の臨床経験上、患者さんの数はさほど多くはないため、詳しい説明はここでは割愛させていただきます。
口内炎や舌の痛みを改善=歯科で使う漢方薬とは? http://mbp-ibaraki.com/tsukuba-occ/column/1163/
さて、寝ている間に起こるブラキシズムは、無意識にやっているため自覚がないのが厄介なところです。家族や友人などに指摘されるなどすれば気づくきっかけになりますが、1人で寝ている方は以下の項目をセルフチェックしてみて下さい。いくつも当てはまる方は歯ぎしりをしている可能性が高いです。
1)朝起きたとき奥歯が痛い
2)朝起きたとき顎が痛い、疲れている、張っている感じがある
3)最近、口が大きく開けにくくなった
4)いつも頭痛・肩こりがある
5)歯が欠けたり詰め物が外れたことが何度かある
6)舌や頬の内側の粘膜に噛んだ跡、ミミズ腫れのような圧痕がある
7)普段から無意識に歯を食いしばっている
いくつ当てはまりましたか?習慣的に、しかも長期的にブラキシズムをしている方の場合、その他にも他覚的な所見として歯の周囲組織、顎関節や歯槽骨に変化が生じていることが多く、この分野に精通している歯科医師なら診ればすぐに分かります。
3.歯ぎしり用スプリント(マウスピース型治療器具)の効果
スプリント(ナイトガードとも言います)はブラキシズムを減少させるものではありませんが、一部の歯に強い咬合力が加わることを防ぎ、分散する効果が期待できます。そもそも、装着することで強く力を込めて噛みにくくなるため、顎関節や歯に加わる負担を軽減できることからスプリントの装着は有効と考えられます。
ただし、ふつうの歯科医院でよく作製されている、厚みが2㎜以下の薄くてピタッとした透明なプラスチックのスプリントはあまり効果がないと思います。
薄く作ることで装着時の違和感が少なく、歯が削れないようにカバーする効果はあるかもしれませんが、薄いマウスピースで歯ぎしりが減少するのか十分検証した医学論文がなく(睡眠時無呼吸症候群の方が使用する分厚いマウスピースについてはブラキシズムにも効果が認められています)、逆にスポーツ選手が装着するマウスピースの様にもっと噛みやすくなってしまい、歯ぎしりが酷くなってしまう可能性もあるかもしれません。マウスピースなら何でもいいわけではないんです。
また、歯ぎしりそのものを軽減するには、よく眠れるように生活リズムを整え、適度な運動を心掛けること、飲酒やカフェインの摂取を控えることも大切かもしれません。
ストレスとブラキシズムの直接的な関連性を検証した研究があるかは存じませんが、ストレスと睡眠周期の乱れについて関連性を示唆している研究は以前から知られており、現代人にありがちなストレスを抱えた状態が、くいしばり・歯ぎしりの患者さんを増やしている一因かもしれません。ストレスのコントロールは容易ではないために、気になる症状がある方は早めにスプリントを試してみてはいかがでしょうか?スプリントは健康保険が効きますから2600円ぐらいで作成できますよ。
歯科の近未来と歯科衛生士の働き方 http://mbp-ibaraki.com/tsukuba-occ/column/1175/
つくばオーラルケアクリニック(歯科・口腔外科) JR常磐線荒川沖駅より徒歩5分
公式HP http://www.tsukuba-occ.com/
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このコラムの執筆専門家
- 飯田 裕
- (茨城県 / 歯科医師/医学博士)
- つくばオーラルケアクリニック 開設管理者/院長
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