- 河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権
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中国最高人民法院特許権侵害紛争案件の審理における
法律適用についての若干の問題に関する解釈(二)意見募集稿(3)
2014年9月26日
弁理士 河野英仁
第二十一条 変化する状態の製品の外観設計特許について、被疑侵害設計と変化状態図により示される各種使用状態の外観設計とが共に同一または近似する場合、人民法院は、被疑侵害設計は特許権の保護範囲に属すると認定しなければならない。
被疑侵害設計が部分使用状態の外観設計を欠くか、または、それと同一でなく近似でもない場合、人民法院は、被疑侵害設計は、特許権の保護範囲に属さないと認定しなければならない。ただし、該部分使用状態の外観設計が、全部使用状態の外観設計に対し、全体視覚効果において顕著な影響をもたらしていない場合は除く。
第二十二条 権利者が発明特許出願公開日から登録公告日までの期間、該発明を実施した单位または個人に適当な費用の支払いを求めた場合、人民法院は特許侵害に係る損害賠償額に関する法律規定を参照して適用することができる。
特許出願公開時の申請人が保護を求める範囲と特許公告により権利付与された際の特許権の保護範囲が一致しないが、被疑侵害技術方案が共に上述の2種の範囲に属する場合、人民法院は、被疑侵害者は上述の期間内に該発明を実施したと認定しなければならない;被疑侵害技術方案が単にその中の一種の範囲に属するだけである場合、人民法院は、被疑侵害者が上述期間内に該発明を実施していないと認定しなければならない。
発明特許公告日の後に、特許権者の許可なく、上述の期間内に既に製造、輸入した製品を使用し、販売許諾し、販売した場合、権利者が専利法第十一条(特許の実施行為)の規定に基づき上述の実施行為の停止を主張した場合、人民法院はこれを支持すべきである。ただし、実施者が上述の製造者、輸入者が専利法第十三条(補償金請求権)の規定により既に適当な費用を支払っていたことを挙証証明した場合は除く。
第二十三条 製品販売契約が法に依拠して成立している場合、人民法院は専利法第十一条(特許の実施行為)に規定する販売に属すると認定しなければならない。
第二十四条 特許方法により直接得られた製品にさらに加工、処理を行い得られた後続製品について、再び加工、処理を行う場合、人民法院は、該行為は、専利法第十一条(特許の実施行為)にいう該特許方法により直接得られた製品を使用することに該当しないと認定しなければならない。
第二十五条 関連製品が専ら発明創造を実施する原材料、部品、中間物等に用いられることを明らかに知りながら、特許権者の許可を得ることなく、該製品を、該特許を実施する権利がない者に提供し、または、法により侵害責任を負わない者の実施に供した場合に、権利者が該提供者の行為は、権利侵害責任法第九条に規定する帮助侵害行為に属すると主張した場合、人民法院はこれを支持しなければならない。
関連製品、方法が発明創造を実施するのに用いることができることを明らかに知りながら、特許権者の許可を得ることなく、図紙を提供し、技術方案を伝承する等の方式を通じて、積極的に該特許を実施する権利を有さない者または法により権利侵害責任を負わない者の実施を誘導し、権利者が該誘導者の行為は、権利侵害責任法第九条に規定する教唆権利侵害行為に属すると主張した場合、人民法院はこれを支持すべきである。
第二十六条 被疑侵害者は一般に一つの現有技術方案または一つの現有設計に基づき権利侵害が無い旨の抗弁を主張することができる(現有技術の抗弁)。ただし、被疑侵害者が、被疑侵害技術方案が、特許申請日前に一つの現有技術方案と公知常識との一目で分かる組合のものに属するか、または、被疑侵害設計が特許申請日前に一つの現有設計と慣常設計との一目で分かる組合のものに属することを挙証証明した場合、人民法院は、被疑侵害者の侵害しない旨の抗弁成立を認定することができる。
被疑侵害者主張の上述の抗弁について、人民法院は特許申請日時に施行されていた専利法により定められる現有技術または現有設計を参照しなければならない。
第二十七条 非強制性の国家、業界または地方標準が関連特許の情報を明示しており、被疑侵害者が当該明示をもって該標準を実施し特許権者の許可が必要でないとして特許権侵害を構成しないと主張した場合、人民法院は一般にこれを支持しない。ただし、特許権者が公正、合理、非差別的の原則に違反し、標準に係る特許の実施許可条件について悪意をもって被疑侵害者と協議し、被疑侵害者がそれに基づき実施行為を停止しないと主張した場合、人民法院は一般にこれを支持しなければならない。
標準に係る特許の実施許可条件は、特許権者、被疑侵害者により協議して確定しなければならない;十分な協議を経ても、依然として一致に至る術がない場合、人民法院に確定するよう請求することができる。人民法院は公正、合理、非差別的原則に基づき、特許の創新の程度及びその標準中の作用、標準が所属する技術領域、標準の性質、標準実施の範囲、関連する許可条件等の要素を総合的に考慮して、上述の実施許可条件を確定しなければならない。
法律、行政法規が標準中の特許を実施することに関し、他の規定を有する場合、その規定に従う。
第二十八条 被疑侵害者が個人消費の目的で発明創造を実施した場合は、人民法院は専利法第十一条(特許の実施行為)、第七十条(損害賠償の免除)にいう生産経営の目的に属さないと認定しなければならない。
第二十九条 特許権者の許諾なしに製造されて販売された特許権侵害製品であることを知らずに、生産経営の目的で、当該製品について使用、販売の申出又は販売を行い、かつ、当該製品の合法的な出所を証明できる場合、権利者が上記販売の申出者、販売者による侵害行為を差し止めるよう請求したとき、人民法院は、これを支持しなければならない。上記使用者の挙証によって、専利権侵害製品の製造者が、権利者が侵害により受けた実際の損失を賠償したことが証明された場合、権利者が上記使用者による使用行為を差し止めるよう請求したとき、人民法院は、これを支持しないが、当該使用者は、専利権侵害製品と専利製品との値段の格差を支払わなければならない。
「知らない」とは、一般に、「実際に知らない」ことをいう。ただし、権利者の挙証によって、上記侵害者が知るべきであったことが証明された場合、当該侵害者の「知らない」との主張について、人民法院は支持しない。
「合法的な出所」とは、正当な商業行為による専利権侵害製品の購入行為をいう。正当な商業行為は、合法的な購入ルート、通常の売買契約、合理的な価格などが含む。合法的な出所について、使用者、販売の申出者又は販売者は取引慣習に符合する関連証拠を提示しなければならない。契約書における権利瑕疵担保条項のみで合法的な出所を証明する場合、人民法院は支持しない。
第三十条 権利侵害者が関連特許の実施を停止することで、社会公共利益を害し、または、当事者間の利益に厳重な不均衡をもたらす場合、人民法院は権利侵害者の実施行為を停止させないよう判決することができ、かつ、合理的使用費の支払いをもってこれに代える。
第三十一条 権利者の申請に基づき、人民法院は、権利侵害者が権利侵害製品及び専ら権利侵害製品を製造するのに用いる材料及び工具等を提出させ、権利者に処理させる判決を命じることができる。ただし該処理が権利侵害者の物的価値に厳重な損害を与えるか、または、権利侵害製品が既にその他の物に取り付けられ交換が困難な場合は除く。上述の物品は権利者により処理する場合、人民法院は賠償額を確定する際に、該物品の相応価値を控除しなければならない。
第三十二条 権利者が専利法第六十五条第二項(侵害者の利益に基づく損害額)の規定に基づき賠償額を確定することを主張する場合、権利侵害者が、権利者が権利侵害により受けた実際の損失、権利侵害者が権利侵害により得た利益または合理的特許使用費を証明する証拠を提供し、かつ、権利者が反証により覆す証拠を提供できない場合、人民法院は権利侵害者が提供した証拠に基づき賠償額を確定することができる;権利侵害者が上述の証拠を提供しない場合、人民法院は専利法第六十五条第二項の規定に基づき賠償額を確定することができる。
第三十三条 人民法院は、賠償額を確定するに当たり、権利者が既にできる限りの手段により挙証し、特許権利侵害行為に関連する帳簿、資料が主に権利侵害者により掌握されている状況下では、人民法院は権利侵害者に特許権利侵害行為に関する帳簿、資料を提供するよう命じることができる;権利侵害者が正当な理由なく提供を拒むか、または、虚偽の帳簿、資料を提供した場合、人民法院は権利者の主張及び提供した証拠を参考として賠償額を認定することができる。
第三十四条 権利者が権利侵害者と、特許権利侵害の賠償額または賠償計算方法を約定し、権利者が在特許権利侵害訴訟において該約定に基づき確定賠償額を確定した場合、人民法院は支持しなければならない。
第三十五条 専利法第四十七条第二項(特許権の無効宣告)にいう特許権無効を宣告する前とは、特許権無効宣告請求審查決定書に記載された決定日前をいう;該項にいうすでに執行され、既に履行または強制執行されたとは、既に実際に執行され、実際に履行されまたは強制執行された部分をいう;該項にいう悪意は、特許申請人、特許権者が明らかに申請特許の技術方案が現有技術または現有設計等であり権利付与されるべきでない特許権の情形に属するということを知りながら、依然として将該技術方案について特許を出願しかつ特許権を取得したことを含む。
第三十六条 人民法院は、当事者が和解協議に基づき提出した訴訟取り下げ申請を許可すると裁定する場合、特許権無効を宣告した決定は対在宣告特許権無効前に該和解協議にて既に履行した部分に対しては、遡及力を有さない;未だ履行されていない部分についても履行しない。ただし、該和解協議が社会公共利益または第三者の利益を害する場合は除く。
和解協議が特許権無効宣告決定に対する遡及問題に別途約定を有する場合、その約定に従う。
第三十七条 特許復審委員会がなした特許権無効宣告決定について、無効宣告請求人または特許権者が法定期間内に人民法院に起訴せず、または、該無効宣告決定が人民法院の効力を生じた裁判により維持され、当事者が該無効宣告決定に基づき再審を申請し、特許権無効宣告に前に人民法院が下したが、まだ執行していないまたは執行が完了していない特許権利侵害の判決、調解書を取り消すよう請求した場合、審查を経て事実に属すると判断した場合、人民法院は再審しなければならない。;当事者が上述の無効宣告決定に依拠して、特許権無効宣告前に人民法院が下したがまだ執行していない、または、執行が完了していない特許権利侵害の判決、調解書の執行を終結するよう申請した場合、審查を経て事実に属すると判断した場合、人民法院は執行を終結する裁定をしなければならない。
特許復審委員会がなした特許権無効宣告の決定について、無効宣告請求人または特許権者が既に法定期間内に人民法院に起訴したが終審しておらず、当事者が該無効宣告決定に基づき再審を申請し、特許権無効宣告前に人民法院が下したがまだ執行または執行が完了していない特許権利侵害の判決、調解書の取消を請求した場合、審查を経て事実に属すると判断した場合、人民法院は再審の審查を中止する裁定をしなければならず、かつ、原判決、調解書の執行を中止しなければならない。
以上
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