- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
それは、換気設備の設置義務と同時に建物の気密性を規定しなかったことです。
建物の気密性が高くないと、換気設備は有効に働かないのです。例えば、ストローでジュースを飲むのにそれほど吸い上げる力は必要ありませんが、穴の空いたストローでジュースを飲むのは大変ですよね? これと同じ様に、気密性の低い家では換気設備が巧く機能しないのです。
私は散々、日本の家は石油化学建材によって気密性が高まり、それが不健康な住宅を生んだ、と語って来ましたが、この気密性は実は「不完全な気密性」なのです。
高気密でなければ、正しい換気ができないのです。
では、正しい換気とは何でしょう?
正しい換気とは本来、VOCに対処する為の付け焼き刃的なものではありません。正しい換気とは、クリーンゾーンと呼ばれる居室から新鮮な外気を取り入れ、台所・浴室・便所といった水蒸気の発生源となるダーティゾーンから排気する、というように、家の中にきちんとした換気の経路をつくることです。
これにより、室内の清浄な空気質を保つことができると共に、室内で発生した水蒸気が外壁内で結露を起こし、家の寿命を縮めることを防いでくれるのです。
無垢のフローリング、珪藻土、漆喰など、自然素材は、確かに吸放湿する素材ですが、それだけで家の健康、人の健康を守ってくれる訳ではありません。「正しい換気」がそのベースにあってはじめて活きて来るのです。