- 中舎 重之
- 建築家
対象:住宅設計・構造
熟練の大工さんが地下足袋の足の裏で感じて許す変形角を数値に置き換えると、
1/450であったとの事です。 これは貴重な情報です。
設計室に居て電卓を叩いて得た答えより確かなデータです。
国の決めた規準や数値を当てにせずに、現場での大工さんの感覚に学びたいものです。
下階に管柱がないが、半間の耐力壁が付く2階梁を計算してみます。
スパン:1.5間(2730mm)、2階管柱位置:端部より半間、
耐力壁倍率2.5倍で長さ半間(910mm)。
長期荷重P1=0.7kN、耐力壁からの集中荷重P2=13.5kN
短期荷重P3=P1+P2=14.2kN。
変形量では、P1=3.9、P2=6.5、合計のP3=10.4mm。
変形角=10.4/2730=1/263(小成らず)1/300∴NG
此処では、耐力壁の軸力が長期荷重に対して、いかに過大であるかを示しました。
これは梁のサイズを上げて処理する問題ではなく、
設計において此の位置にての耐力壁配置を避けるか、
1階に管柱を配置すべき事例と思います。
集成材の話です。
タワミ=変形量が大きくなる梁には、集成材を採用するのが良いでしょう。
先に計算した梁のサイズは、幅120x背270mmのスギ材(ヤング係数:E=7.0 kN/mm2)です。
これを、サイズは同じで集成材のE120-F330にて計算します。
タワミに有効なヤング係数はE=12.0 です。
計算は先の数値に(7.0/12.0)倍を掛けます。
タワミ量:P1=2.2、P2=3.7、合計のP3=5.9mmです。
変形角=5.9/2730=1/462 < 1/300 でOKです。
此の集成材ですと、熟練の大工さんもニッコリです。
建築用語の「適材適所」とは、此の事です。
ちなみに、製材のヤング係数を記します。
Ⅰ類ベイマツ:10.0、
Ⅱ類ヒバ・ヒノキ:9.0、 Ⅲ類ツガ:8.0、 Ⅳ類スギ:7.0
当方が20数年前に木造3階建ての計算を行う時、
土台と柱材はヒバ、梁材はベイマツを指定していた理由がお分かり頂けますね。
最後に、外壁面での柱・梁には、集成材の使用は禁止です。
集成材は水分に反応しやすいのが弱点です。
外壁面は従来どおり製材を使用して下さい。
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