強い家造り  19 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

中舎 重之
建築家

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対象:住宅設計・構造

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強い家造り  19

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     Ⅲ 床 組 編

   1:2階床

 水平剛性の話です。

床面の水平剛性を高める理由は、各所に配した耐力壁に、

風圧力や地震力の水平力を均等に分配する事にあります。

床面が弱ければ、各所に配置された耐力壁は、各自が負担すべき面積分担のみにしか抵抗しません。

耐力壁の強さとは関係なく分担すべき面積以外は知らない顔をします。

 床面が強ければ、各所の耐力壁がスクラムを組んだ状態になり、

強い壁は弱い壁をカバーして頑張ってくれます。此の頼もしい状況を現出させるのが、

床に剛性を持たせる理由です。


  昔は、1階の部屋毎の天井裏には、四隅に斜め材の火打ち梁を入れていました。

近来は部屋の四隅ではなく、家の四隅にのみ火打ち梁を入れて済ませている建物を多数見かけます。

  これでは、壁量の計算を綿密に行っていても、

配置した耐力壁が設計者の意図した様には働いてはくれません。

意匠設計者も建築審査機関も、その事には触れずにいます。

ただひたすら必要な壁量を満たす事だけに集中しております。

 風圧力や地震力の水平力が、どう流れて行くのかに関心が持たれない事が、

木造住宅における現実の大きな問題です。

大学や大学院の研究者も、此の件での実大実験は行っているようですが、

木造の構造実務者が、扱える数式が見えて来ません。


  昭和2年建築の建物の話です。

1923年(大正12)9月1日の関東大震災から、4年後の1927年(昭和2)に建築した木造住宅に、

当方が耐震設計の仕事で出会いました。

当方が眼にした時で、築80年にはなる時期でした。

柱と梁の仕口(接合部)に隙間がまったく見えないのです。

まさに神の業と思いました。

 木材の経年における自然な乾燥により仕口には隙間が見えるのが、普通の現象です。 

此の不思議な事象を大工さんに聞きました。

答えは木を刻む前に木材を完全乾燥させて、木材が自由に曲がり、たわんだ後で、

木を刻む事で可能との事でした。

  此の建物の2階床組を説明します。 

ネタを落とし込んで大梁の天端を揃える工法です。

その上にスギの30mmの厚板を釘打ちしていました。

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