遺言書を残す必要性がある人はとても少ない。 - 家計・ライフプラン全般 - 専門家プロファイル

吉野 充巨
オフィスマイエフ・ピー 代表
東京都
ファイナンシャルプランナー

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遺言書を残す必要性がある人はとても少ない。

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来年の相続増税を控え、金融界では生前贈与をビジネスとして取り込む動きや、ビジネスのために遺言書の作成を進める広告が目立ちます。今回は遺言書の作成について述べます。

私は、遺言書を書かなければならない方は少ないと考え、相談者にもその旨説明しています。

確かに、遺言書を残す必要がある方達(後述)もいますが、遺言書があったことによって、兄弟間で裁判をする例もありますし、兄弟が憎みあい没交渉になる例も多数見聞きしています。それは親のエゴが入るからです。
従って、一時の遺言書作成ブームに乗る前に、本当に遺言書を残すのかを自問していただきたいのです。

本来、遺産は配偶者と子供たちに公平に分けるべきものです。この前提が崩れると争いが始まります。
遺言書を残そうとされる方の中には、遺産を不均衡に分けるために書く方がいらっしゃいます。例えば、子供と反目している、面倒見が良くない、孫が多いから、孫がいないから、昔から懐いていたから等々数え上げればきりがないほど、不公平にしたい気持ちがわいてくるかもしれませんが、これらの心情でこれ位は許さるだろうと、書いてしまうのは最悪です。子供から見れば兄弟姉妹は皆平等で、普段からの親の扱いに不満を抱いている場合もあります。
また、不肖の子は、ご自分たちの育て方が悪かったと反省する事由にはなりますが、差別する理由にはならず、子供の納得も得られません。

従って、事業を継ぐ、身体に不自由がある等々社会的に認知される理由が無い限り、公平に分けることをお勧めします。

ところで、公平に分けるという内容には、死亡時の財産だけではなく、生涯に渡った公平さも必要になる場合があります。
例えば、お子様が住宅を取得する際の支援、お孫さんの留学資金、お子様の学生時代の留学等の支援、お子様の起業の際の資金提供、数えあげれば、様々な支援があったはずです。
片方に支援した場合、支援されなかったお子さんの心情に配慮する必要があります。
金銭での支援は、現時点からでも、支援されなかったお子様に生前贈与を行いましょう。
これらを生前に均しておくことが一代目の責務です。

そして、子供たち全員の前で、遺されたものは法定相続分で分けるよう、お話しください。正月の会食、夏の帰省、ご自身と配偶者の古希の祝い(昭和20年に生まれた方は今年)など、機会はあるはずです。重要なことは、全員の前でということです。日頃からの会話によって、財産分与の割合に理解を得ておくことが重要です。

ただし、一次相続の場合には、不公平が発生します。何故ならば、配偶者が生活に困らないだけの資金を渡す必要があるからです。勿論、法定相続分で足りる場合には、法定相続分がベターです。また、全財産を配偶者に遺さなければならないケースもあります。この場合には、子供たちその旨を話、理解を得ておく必要があります。ただ、お子様たちの母親(父親)に遺すのですから、理解を得るのは、容易と思われます。

早めに話すことをお勧めします。それこそ、遺産を当てにする子供が居ると困ります。
そのような恐れがある場合にこそ、全財産を母親又は父親に譲るとの遺言書が必要です。この場合、お子様の誰かが、遺留分請求を行う可能性は少ないと思われます。

また、配偶者の場合には、配偶者の税の軽減という制度が有ります。国税庁タックスアンサーから引用を載せます。
被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(1) 1億6千万円迄、又は(2)配偶者の法定相続分相当額

この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。したがって、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。
詳細は国税庁のHP タックスアンサーでお確かめください。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4158.htm

1億6000万円以上の正味の遺産額が予想される場合には、別途お子様たちも含めた遺言書の作成が必要となります。

なお、この制度を利用して、配偶者に正味の遺産額の内1億6000万円を承継してもらい、残りを子供たちで公平に分けることもできます。正味の遺産が3億円の場合で、新ファミリー一族の属性であればお子様は2人または3人ですので、一人7,000万円または約4,700万円になります。なお、相続税は基礎控除額を引いた残りを法定相続分で分け、その一人ずつの税額の集計が税金額になりますが、このケースでは配偶者の税金はかかりません。

ここでも税金の負担が「大きくなる、大きくなる」と騒ぐレベルではないように感じています。二次相続(残された配偶者がなくなった際の相続)の場合でも、原則基礎控除は使用できますから、元々の正味の遺産額から考えると、
6,000万円+600万円×法定相続人の数(通常は一次相続時から1人が減じます)
となります。

140814相続税税率新旧

遺言書を書く必要がある最大の要因は、一代目が事業を立ち上げ、又は承継していて、それを次代に引き継ぐ例です。
この場合には、引き継ぐ事業に必要な資金と不動産及び持ち株、そして納税資金が一人に集中します。その他の資産で、事業を引き継がない相続人に納得してもらう必要があります。

従って、不均衡が生じるため、前々から準備が必要になり、遺言書を書く前に事業の承継計画の作成から始めなければなりません。小規模であれば全てが承継者に譲らねばならない場合もあり、相続人が事業の承継者として相応しくないケースもあります。
このようなケースでは、早めに信頼できる専門家集団に依頼することをお勧めします。

お子様またはお孫さんのどなたかが、障害を待たれているケースなどの場合にも、家族としてどのように、該当するお子様を守っていくかが、重要なポイントになります。お子様が未成年者の場合には、親権で後見が出来ますが、成人すれば改めて後見人を立てなければなりません。従って、ファミリー内で計画を立て、財産の内どの程度該当するお子様に充てるのか等々を決めて、生前から信託に預けるなど実行策が必要になります。

なお、遺産の中で、不動産はもっとも始末に悪いものです。
現在事業としているものであっても、承継者が居なければならず、ましてや、事業規模にならない不動産は、残されても相続人が困るだけです。これらを売却し、相続しやすい資産に替えておくのは、一代目の義務と考えています。

このように、要件によって争族対策としての遺言書は必要になりますが、ブームに乗って遺言書を作成すると、思わぬリスクを抱えることにもなりかねません。

ところで、二代目という場合には、娘さんも含んでコラムを書いています。息子さんだけが付代目ではありません。
このため、田舎にある墓、自分たち1代目の墓をどのような形態にするかも、相続を考える際には必要です。
本来は遺言書を書く際の重要なポイントですが別な機会に述べます。

新ファミリー・一族は私の造語で、昭和20年生まれを初代とする一家(ファミリー)を指します。その属性は、下記の図に示す通りで、略準富裕層以上の世帯相当になります。

140810新ファミリー一族の属性

文責
FP学会会員
独立系顧問料制ファイナンシャル・アドバイザー
オフィス マイ エフ・ピー 代表 吉野 充巨

【保有資格】
ファイナンシャル・プランナー:日本FP協会認定CFP®
日本証券アナリスト協会認定 プライマリー プライベート・バンカー
宅地建物取引主任者 (東京)第188140号
ロングステイ財団登録ロングステイアドバイザー&登録講師
ホームページアドレス
http://www.officemyfp.com/

独立系顧問料制アドバイザーとは
http://profile.allabout.co.jp/w/c-64005/
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