「一つ目国」の悲劇
ある旅人が、旅の途中で道を見失い、
不思議な国に迷い込んでしまいました。
その国は、一つ目人間の国だったのです。
その国の住人は、誰もが、目が一つしかない人々であり、
旅人のように目が二つある人間は、
一人もいなかったのです。
その国に迷い込んだ当初、
旅人は変わった風貌の住人を見て驚き、
そして、しばらくは、
彼らを不思議に思って眺めていました。
しかし、その国で過ごすうちに、
旅人はだんだん孤独になってきました。
自分だけが二つの目を持つことが、
異常なことのように思われてきたのです。
そして、その孤独のあまり、
ついに、その旅人は、
自ら、片方の目をつぶし、一つ目になったのです。
この旅人の悲劇は、決して、
遠い彼方の国の物語ではありません。
なぜなら、
我々も、しばしば、
この旅人のように、
自ら、片方の目をつぶそうと考えてしまうからです。
自分自身であることの孤独。
そのことに、耐えられず、
自分自身であることを、
やめようと考えてしまうのです。
(※「自分であり続けるために」田坂広志 著 より)
Julie Adham
(こちらも我が家のお気に入り♫ )
このコラムの執筆専門家
- 大園 エリカ
- (東京都 / クラシックバレエ教師・振付家)
- 舞踊家(クラシックバレエ) 元プロバレリーナ
natural & elegance
長年プリマとして国内外で活躍。現役引退後は後進の指導とバレエ作品の振付けに専念。バレエ衣裳や頭飾りを作り続けて得たセンスを生かし、自由な発想でのオリジナルデザインの洋服や小物等を作る事と読書が趣味。著書に「人生の奥行き」(文芸社) 2003年