
「あの~。お客様に一組ずつゆっくりと客席に入っていただくのなら、入口でゲームかなんかしてもらって、お客様が入ってくるのを遅くしたらどうですかね?」
おそるおそる手を挙げて発言したのは、ホールスタッフのHさんでした。いつも楽しそうに仕事をやっている、この店で一番明るいスタッフです。彼女が提案したのは、ランチタイムで11時半くらいから一気にお客様が店内になだれ込んできて、一気にオーダーがキッチンに通されて、キッチンが一気に忙しくなるのを防ぐ為に、お客様を、客席にご案内する前にゲームをしてもらったら、ゆっくりと順番にオーダーを通すことが出来るんじゃあないか・・・・と言うことでした。
ところが、そんな彼女の提案に対して、他のスタッフが
「あはは、バッカじゃあないの~そんなことしたら、それに待たされている後ろのお客様が怒って帰ってしまうわよ。バカみたいな提案しないでよ~きゃはは・・・」
と、笑ったのです。その為。笑われたHさんは、赤い顔をして下を向いてしまいました。
実は、この「おかしな意見を言ったら笑われる」と言う気持ちも、「言える会議」を進める上で大きな障害となっているのです。私のような関西人は、おかしな事を言って笑ってもらえると「おいしい」と喜ぶのですが、残念ながらその感覚を自然に持ち合わせているひとは、全国的に見ると多数派ではありません。むしろ、笑われるのが恥ずかしくて、いや、まさしく笑われることが「恥」として捉えているひとの方が圧倒的に多いのです。なので、私のように、あえて「笑わせよう」としていない限り、発言に対して笑いが生じてしまうと、もう何も言えなくなってしまうのです。
「言える会議」を目指しているのならば、会議出席者は、発言者が「わざとおかしな事を言って笑わせようと企んでいる」のか、「普通にまじめに意見を言ったら、ちょっとおかしかった」のかを事前に判別しておかねばなりません。「笑わせようと思っていた」のならば、笑って上げないと悲しいだろうし(でも、おかしくないのに気を遣って笑ってはいけませんが)、まじめに意見を言ったのならば、声高らかに笑ってはいけません。間違いなく傷つきます。
ただ、議事進行者にとっては、こういう一見「こいつ何を考えるんだ?」と言うような意見が出てきた時の対応の仕方がセンスの分かれ目です。一刀両断するのか、上手く拾い上げるのか、何事も無かったかのようにするのか・・・進行役の対応の仕方で、空気は一変してしまうのです。
「Hさん、まずは、提案をしてくれたこと、改めて感謝するわ。楽しい意見をありがとう。Hさんらしいわね。面白いじゃない。」
と、ホールとキッチンのそれぞれの立場や事情があるので、なかなか『これだ!』と言う意見が出にくい中で、面白い意見を言ったHさんをほめ、感謝したのです。スタッフリーダーのAさんが、Hさんの意見を笑わずに、丁寧に受け取ったことで、Hさんの意見を笑っていたスタッフ達の空気が一変しました。以前ならば、当のAさんが一番先に笑って批判をしていたのです。しかし、部下のひとりひとりに強みがあることを知り、それに敬意を払うことの大切さを理解したAさんは、もうむやみにひとの意見を笑うようなことはしませんでした。そして、そのAさんの余裕を持った態度は、スタッフ達のミーティングに対する気持ちをも変化させていったのです。
成長したAさんの大人な態度による進行で、ミーティングは、前向きで積極的な意見が交わされるようになってきました。もっとも、元はと言えば、Aさんに部下の話を聴く姿勢が全く無かったことが、一番の原因でこの店の会議は「後ろ向きで消極的な会議」になっていたわけなのです。その為、発言をするスタッフにおいても、「批判的」「攻撃的」「防御的」な態度が蔓延していたのでした。
Aさんは、そのことに対する反省も踏まえ、自分がスタッフの意見をしっかりと受け止めて、最期まで聴き、決して否定をしない態度を続けることで、ちょっとゆがんでいたスタッフ達の、「ミーティングに対する姿勢」に変化を促していたのかも知れません。
さて、ここ数日は、「言える会議」を実現するために、「言えなくなる要因」についてお話ししてきました。この店に関しては、Aさんの成長により、徐々に言えない雰囲気は薄くなってきました。しかし、ミーティングや会議で意見が出にくくなる要因は、それだけではありません。あとふたつ、自分勝手なひとの心が起こす「言えない会議」の要因があるのです。
それはまた明日。
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