譲渡所得における取得費の引継ぎ、ゴルフ会員権贈与、租税判例百選48事件 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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譲渡所得における取得費の引継ぎ、ゴルフ会員権贈与、租税判例百選48事件

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相続

譲渡所得における取得費の引継ぎ、ゴルフ会員権贈与、租税判例百選48事件
所得税更正処分取消請求事件
 平成17年2月1日 最高裁第3小法廷 判決
 破棄自判、 裁判集民事 第216号279頁
【判示事項】
 1 受贈者が贈与者から資産を取得するために要した付随費用の額と所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」
2 ゴルフ会員権の受贈者が贈与を受けた際に支払った名義書換手数料の額と,所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」
【裁判要旨】
 1 受贈者が贈与者から資産を取得するために要した付随費用の額は,受贈者が同資産を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に当たる。
2 ゴルフ会員権の受贈者が贈与を受けた際に支払った名義書換手数料の額は,受贈者が同会員権を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に算入される。
【参照法条】
 所得税法33条3項,所得税法38条1項,所得税法60条1項,民法第3編第2章 契約

(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)
第三十八条  譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。
2  譲渡所得の基因となる資産が家屋その他使用又は期間の経過により減価する資産である場合には、前項に規定する資産の取得費は、同項に規定する合計額に相当する金額から、その取得の日から譲渡の日までの期間のうち次の各号に掲げる期間の区分に応じ当該各号に掲げる金額の合計額を控除した金額とする。
一  その資産が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供されていた期間 第四十九条第一項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)の規定により当該期間内の日の属する各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるその資産の償却費の額の累積額
二  前号に掲げる期間以外の期間 第四十九条第一項の規定に準じて政令で定めるところにより計算したその資産の当該期間に係る減価の額
   
(譲渡所得)
第三十三条  譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。
2  次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一  たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二  前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得
3  譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一  資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
二  資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの
4  前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
5  第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。

(贈与等により取得した資産の取得費等)
第六十条  居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。
一  贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
二  前条第二項の規定に該当する譲渡
2  居住者が前条第一項第一号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす。

【参考判例】
所得税更正処分等取消請求事件
平成18年4月20日  最高裁第一小法廷  判決
 破棄差戻し、裁判集民事第220号141頁
【判示事項】
 1 資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるかどうかの判断基準
2 土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良法42条2項に基づき同区に支払った決済金が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるとされた事例
3 土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良施設の目的外使用に関する同区の規程に基づき同区に支払った使用負担金が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるとされた事例
【裁判要旨】
 1 資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるかどうかは,現実に行われた資産の譲渡を前提として,客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきである。
2 土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良法42条2項に基づき同区に対し決済金を支払った場合において,上記組合員が上記農地を転用目的で譲渡するためには同項の規定を受けて定められた同区の規程により上記決済金を支払わなければならなかったという事実関係の下では,上記決済金は,上記農地を転用目的で譲渡するか否かにかかわらず決済の時点で既に支払義務が発生していた賦課金等の未納入金に係るものを除き,上記農地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除されるべき所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たる。
3 土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良施設の目的外使用に関する同区の規程に基づき同区に対し使用負担金を支払った場合において,上記使用負担金の支払により,転用された土地のために土地改良施設を将来にわたり使用することができることになり,上記農地の譲渡価額の増額がもたらされるものであるという事情の下では,上記使用負担金は,上記農地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除されるべき所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たる。
【参照法条】
 (1~3につき)所得税法33条3項 (2につき)土地改良法42条2項