聴覚障害者のTOEICテスト受験方法について - 英語全般 - 専門家プロファイル

伊東 なおみ
ILSランゲージスクール 英語講師および日本語教師
東京都
英語講師および日本語教師

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閲覧数順 2024年04月23日更新

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聴覚障害者のTOEICテスト受験方法について

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久しぶりに、こちらのテーマでのブログになります。

以前の記事は、テーマ一覧より「聴覚障害者の方のレッスン」をクリックするとご覧いただけます。

ひと言で「聴覚障害者」と言っても、色々な方がいらっしゃいます。

補聴器を付けているからと言って、健聴者と同じように聞こえる訳ではないですし、聞こえ方も人によって様々です。音は感知できるけど、言葉として捉えることが難しい方もたくさんいます。

詳しい記述については今回は触れませんが、今日は聴覚障害者の方がTOEIC(R)テストを受験する際の選択肢についてを説明していきたいと思います。

大きく分けて、現在は3つの受験方法があります。

①リスニングセクションは免除(免除と言っても、その分のスコアが考慮されることはなく、リーディングセクションのみのスコアとなり、最高でも495点です(満点は990点)。ですが、就職や転職の際には、聴覚障害者であることを明記すれば特に問題はないでしょう)

②別室にてイヤホンを使用しての受験(受験者それぞれにCDプレイヤーが準備され、持参したイヤホンをプレイヤーに接続しての受験となります)

③一般の方々と一緒に受験。スピーカーの近くに席を準備してもらうなどの配慮をしてくれる(ですが、最近はCDプレーヤーではなくサラウンド方式の部屋全体に聞こえるように天井にスピーカーが付いている場合などがありますので、一般受験とあまり変わりない場合もあります)

そして、これから新しい可能性として、4つ目の受験方法が定着するかもしれません

というのも、私が教えている生徒さんの中には、補聴器の上からヘッドホンをすると*ハウリングしてしまい、かといって補聴器を外したら全く聞こえなくなってしまうので、上記①~③の選択肢を選べない方もいるのです。軽~中度の聴覚障害者の方ですと、補聴器を外してイヤホンを直接耳にはめるとなんとか受験できる方もいますが、中度以上の方は補聴器をはずしてしまうと音が認識しづらくなってしまいますので、補聴器の上からヘッドホンをはめて受験することになります。(さらに重度の方は、通常、上記①を選択します)

*「ハウリング」とは、補聴器内のマイクに集められた音を補聴器が増幅して鼓膜へと伝えますが、耳内部へ音が入るのと同時に、鼓膜に音が反射して耳の穴の外へ音が漏れてしまうことがあります。その漏れた音を、再び補聴器のマイクが集めて増幅し、これがくり返されると「ピーピー」とか「キーン」のような音が漏れ聞こえてしまいます。一般的なマイクをスピーカーに近づけると「キーン」と音がする状態と似ています。

試験運営センターには、様々な障害を持った方がスムーズに受験できるよう、「プライオリティサポート係」という部署があります。TOEIC(R)受験の申込をする前に、障害を持った方や試験当日にサポートが必要な方(妊婦さんや病気の方など)は、まずはこちらへ連絡をするのですが、その後にFAXやメールで依頼書が届きます。

*「プライオリティーサポート係」へは、まずはこちらのIIBC試験運営センター(東京)にFAXかTELをして事情を説明してから資料やメールの宛先を送ってもらえます:http://www.toeic.or.jp/toeic/inquiry.html

依頼書には、「希望する対応内容」のほか、「証明書類の提出(身体障害者手帳のコピーや医師の診断書のコピーなど)についての記載」などが書いてあります。

希望する対応内容」の詳細は以下の通りです:

①試験当日、教室内に欠席者の空き席があった場合、空き席へ移動して受験
②教室担当試験官許可の下で、補聴器を使用して受験
③事前に座席を(前方座席やスピーカー近くの座席指定など)指定して受験
④小教室(50名以下の教室)指定
⑤イヤホン(ヘッドホン)を使用して受験
⑥リーディングセクションのみ受験
⑦その他の希望(介助者は付き添うか、視力やマークシート記入に問題はないかなど)

この依頼書には、上記で書いたような4つ目の選択肢である「CDプレーヤーに耳を近づけて受験する」選択肢が列挙されていません。ですので、そのような受験方法を希望するなら、本来は⑦のところに詳細を書かなければならないのですが、申し込み方がわからず、④とみなされて一般の方と同じ状況で受験せざるを得なかった生徒さんもいました。

そこで、サポートセンターの方に上記のハウリングの件や聴覚障害者の聞こえ方の多様性について状況を説明したところ、4つ目の受験方法を認めてもらうことができました

今までに行ったことのない受験方法だそうで(確かにイヤホンを使用した受験と異なり、一人一部屋プラス受験者一人につき一人~二人の試験官が必要になってくるので準備する側の負担も大きくなると思います)、今回の3月試験が初めての試みとなったそうです。すぐに対応してくださったサポートセンターの方々、本当にありがとうございます。

今回受験された方も、いつも当校で勉強しているときと同じような環境で受験できて良かったです、との報告を受けました。

聴覚障害者の方に限らず、様々な障害を持った方々がもっと不自由を感じることなく自己実現を果たせる環境がどんどん整って行ってほしいものです。


詳細は、スクールホームページよりお問い合わせ下さい:
http://www.ito-ls.com