知的財産権法の読んだ本(その2-1) - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
弁護士

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知的財産権法の読んだ本(その2-1)

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知的財産権法の読んだ本(その2-1)
[入門書]
伊藤真・伊藤塾編『実務法律基礎講座3知的財産法』(弘文堂)
初心者向けの入門書。知的財産権法を全く勉強したことがない人向け。ある程度、勉強が進んだ人には、むしろ不要。

寒河江孝充『知的財産権の知識』日経文庫
著者は知的財産権法分野で有名な弁護士である。一般の方が入門書として読むことが想定されている。現在は絶版。

[知的財産法全般]
紋谷暢男『知的財産権法概論』有斐閣(2012年4月・3版)
私は司法試験合格後に読んだ。当時の書名は『無体財産権法概論』であった。

田村善之教授の以下の書籍。
『知的財産法 第5版』(2010/5/24)
『機能的知的財産法の理論 (知的財産研究叢書)』 知的財産研究所 (1996/11)
『競争法の思考形式 (北海道大学法学部叢書)』 (1999/4)
いずれも非常に論理的・機能的に考えるテキスト。私は弁護士になってから、筑波大学院のときに、読んだ。当時の多数説や裁判例に対して批判的にチャレンジした意欲作で、知的好奇心を刺激する。ただし、少数説が多い。もっとも、田村教授の『知的財産権と損害賠償』(初版1993年)は、知的財産権侵害の損害賠償額の規定(特許法102条など)の改正に影響を与えたとして有名である。

中山信弘『知的財産権研究(1)~( 5)』 (2008/6まで)
学者・実務家による裁判例の評釈集。私は弁護士になってから、拾い読みした。

渋谷達紀『知的財産法講義Ⅰ(特許法・実用新案法・種苗法)、Ⅱ(著作権法・意匠法)、Ⅲ(不正競争防止法・独占禁止法上の私人による差止請求制度・商標法・半導体集積回路配置法)』(有斐閣、3分冊、2006年―2008年)
工業所有権(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)、著作権法、種苗法、半導体回路配置法と知的財産権法全部をカバーする著書は、約10年以上前には、入門書的なものを除けば、紋谷暢男教授の有斐閣双書、渋谷教授の本と田村善之教授の本しか存在しなかった。私は弁護士になってから読んだ。

土肥一史『知的財産法』(中央経済社)
盛岡一夫『知的財産法概説』
角田政芳・辰巳直彦『知的財産法』(2010年)有斐閣アルマ
上記3冊は、淡々と記述されている。あまり印象に残らなかった。

[判例集]
『最高裁判例解説』(法曹会)
民集・刑集登載判例に関する最高裁調査官による解説である。私は弁護士になってから、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法に関する解説は全て読んだ。

大渕哲也『知的財産法判例集(補訂版)』、有斐閣、2010年
上記書籍のうち、意匠法、不正競争防止法の部分を読みました。
採録されている裁判例は210件である。
もっとも、採録範囲は、下記の判例百選3冊と重複するものが多い、または、古い裁判例が多い。基本書で取り上げられている裁判例も多いし、説明も簡潔で要点を押さえているので、裁判例について、もう少し詳しく簡便に知りたいときに便利である。
特許法、実用新案法は『特許法判例百選』
意匠法、商標法、不正競争防止法は『商標・意匠・不正競争判例百選』
著作権法は『著作権法判例百選』

〔特許法〕
中山信弘『特許法』弘文堂(2012年9月・2版)定番基本書。法律学講座双書シリーズ『工業所有権法(上)特許法』を改題。
 私は弁護士になってから、筑波大学院のときに、授業のテキストとして指定されたので、精読した。

中山信弘・大渕哲也・小泉直樹・田村善之編『特許判例百選』有斐閣(2012年4月・4版)
 私は弁護士になってから、ほぼ全て読んだ。

増井和夫・田村善之『特許判例ガイド 第4版 』(2012/3/24)
私は弁護士になってから、拾い読みした。

〔著作権法〕
中山信弘『著作権法』有斐閣(2007年10月)
著作権法改正にも関わった知的財産権法の大家の著書である。元東京大学教授で、知的財産権法の東大学派の最長老であり、東大系の多数の後進の学者を育てた。
応用美術に関する記述は、立法経緯などや知的財産権法全体から目配りしたもので、参考になる。流麗な文章で、理由付けも詳しい。脚注で、反対説に対する簡潔だが、辛辣な批判もされている。なお、田村善之教授は中山教授の弟子なので、田村教授の文献に対するリファレンスがされていても、学説の内容に関する言及が少ないのは、配慮であろうか。
キャラクターに関する記述は、渋谷説より中山説のほうが判例に近く、結論も妥当である。
中山信弘『マルチメディアと著作権 (岩波新書)』 (1996/1/22)
中山信弘『新版 ソフトウェアの法的保護』 (1988/7)(絶版)この本は中山信弘『著作権法』にエッセンスともいえる記述が採録されている。

田村善之『著作権法概説』 (2001/11)
非常に論理的・機能的に考えるテキスト。ただし、少数説が多い。私は弁護士になってから、筑波大学院のときに、読んだ。

田村善之『論点解析 知的財産法』 (2011/3)
 特許法と著作権法の部分からなる。私は、著作権法の部分のみ読んだ。

渋谷達紀『著作権法』中央経済社(2013年2月)
同・『知的財産法講義Ⅱ(著作権法、意匠法)』(有斐閣)より、論述が詳しく、頁数も多い。
複製物とされるものが著作物ではない場合には、複製権などの著作権侵害にならないとするのが渋谷説だが、判例通説と異なる。確かに、二次的著作物には適法要件が必要である。しかし、二次的著作物にもならないものだと、かえって著作権侵害を免れるのでは、不均衡である。ただし、同一性保持権(著作者人格権)侵害にはなる(この点は判例通説と同じ。)とするのが渋谷説。
応用美術に関する記述は、裁判例の論理構成を3つに分析しており、参考になる。ただし、自動車のデザインを著作権で保護しようとする学説はないようである。ミニチュアカーに関する「ちょろQ事件」に関する論述であろうか。
キャラクターに関する記述は、理由付けや法律構成が余り詳しくなく、やや不満足であった。中山説のほうが判例に近く、結論も妥当である。
通説と異なる独自の点
・美術の著作物(絵画、彫刻)について、固定を要件と解している。この解釈の不都合な点は、彫刻を設計図にしたがって固定した場合や増製した場合、固定前に、彫刻の著作物が存在しないことになるが、それでは結論が妥当ではない。また、固定後に美術の著作物の原作品が毀損・滅失した場合にも美術の著作物は存在しているとのバランスをどうとるのか、疑問がある。
・建築の著作物について、建築物の完成・固定を要件と解している。この見解では、設計図にしたがって建築の著作物を建築する前は、建築の著作物は存在しないこととなるが、結論が妥当であろうか。著作権法2条1項15号ロがある建築の著作物については、条文上の根拠があり、この規定をみなし規定と解するから、説明可能であろうが、そのような条文の存在しない他の著作物について、どのように説明するのであろうか。
・写真の著作物について、固定を要件と解している。この見解は、現像前の写真、デジタルカメラで撮影し、現像する前にも、固定されていないと解している。そうすると、現像前の未発行の写真については、保護が与えられないこととなるが、結論が妥当であろうか。
なお、旧法では、写真の著作物について、固定を要件としていたが、現行法では要件ではない。もっとも、同じ解釈を取るべきといえるかは疑問である。
・ゲームソフトを映画の著作物ではないと解している。

斉藤博『著作権法』有斐閣(2007年4月・3版)
簡潔なテキスト。私は弁護士になってから、筑波大学院のときに、斉藤教授の講義を拝聴し、テキストとして読んだ。

半田正夫『著作権法概説』法学書院(2013年2月・15版)
著者は、大学教授である。通説判例は著作権を財産権であり、著作者人格権と区別している。しかし、半田説は、著作者人格権を著作権に含ませている(ドイツ著作権法の影響を受けたもの)。この点に、半田説の最大の特徴がある。
私は弁護士になってから、筑波大学院のときに、斉藤教授の本と比較しながら、読んだ。

松村信夫=三山峻司『著作権法要説 実務と理論』世界思想社(2013年2月・第2版)
著者は二人とも弁護士・弁理士・法科大学院教員の三足のわらじを履く実務家。重要な判例については詳細に検討されている。分りやすいと弁護士にも評判がいい。
私は弁護士になってから、読んだ。

三山裕三『著作権法詳説―判例で読む15章』レクシスネクシス・ジャパン(2013年1月・9版) 著者は、弁護士である。重要判例を用いての解説である。
私は弁護士になってから、読んだ。

岡村久道『著作権法』民事法研究会(2013年4月・新訂版)弁護士による著作。図解つきでわかりやすい。第8章、第9章を著作権法の契約実務、訴訟実務(要するに要件事実)に充てているのが本書の特徴。初版は商事法務にて出版。また、私が弁護士になってから読んだ、岡村弁護士による『著作権の法廷』(絶版)は、今となっては古いが、当時は類書が少なく、実務家向けの読み物風の本で、参考になった。

加戸守行『著作権法逐条講義』著作権情報センター(2013年8月改訂予定)
元文部科学省官僚の公式コンメンタール。分厚くて高い。テキストを読んでいてわからない部分を調べるのに辞書として利用。私は弁護士になってから、筑波大学院のときに、拾い読みした。

『新・裁判実務体系22著作権関係訴訟法』青林書院
2004年刊。裁判官・学者による共著である。上記書籍のうち、以下の部分を読みました。
「プログラム著作権侵害訴訟における審理」
 プログラムの著作物関係として、印刷・画面での侵害とプログラムの著作物での侵害の双方が有り得る。
 証拠の分量が大量になりやすいので、代表的な侵害部分に絞って、争点整理をする審理方法は参考となる。
「著作権侵害訴訟における和解」
比較的著名な著作権侵害事件の和解条項の実例が掲載されている。
ただし、和解条項の作成方法の一般論が述べられていないので、やや不満が残った。強いて言えば、侵害者側は侵害の事実を認めずに、解決方法(氏名表示、著作権譲渡、和解金など)を定めているようである。
また、謝罪広告は、和解条項には入れないのが通例のようである。もっとも、マスメディア・雑誌などが関係する事件では、別論であろう。
 本稿では指摘されていないが、侵害者が再度著作権侵害しないこ0とを約束する条項を定めるべきであろう。
「キャラクターの侵害」
 漫画ポパイ事件の最高裁判例は必ずしもキャラクターだけでは著作物とはいえないとしている。
 しかし、キャラクター自体が、美術の著作物に該当する場合には、あえて著作物性を否定する必要はないと解されている。
 ファンシフル・キャラクター、オリジナル・キャラクター、ストーリー性のあるキャラクターかによって、判断基準が異なるものではなく、その本質的特徴を感得できるかどうかによって、著作物性、著作権侵害の成否を決定するとういのは、判例の判断基準と一致する。
 2次元の著作物を3次元にした場合、本質的特徴に付加した部分があるかどうかというキューピー人形事件の判断基準は、2次元の原著作物で表現されていない部分について3次元で表現した場合に付加された部分が創作的表現か、3次元著作物が2次元著作物(原著作物)の本質的特徴を感得できるかという判断基準であり、上記の判例の一般論を応用したものである。
 オリジナル・キャラクター、ストーリー性のあるキャラクターの場合には、そもそも何の説明がないわけではなく、背景、人物の設定、特徴、特異な容貌・姿態などの要素が付加されているから、著作権侵害の成否を決めやすい。
 言語の著作物を美術の著作物にした場合も、同様であり、原作である言語の著作物を利用した美術の著作物は、二次的著作物である(キャンディ・キャンディ事件)。
「デジタル・コンテンツと著作物性」
 私見として、デジタル・コンテンツについて、静止画と動画に分けるべきであろう。
 静止画は、美術の著作物の侵害と同じ判断基準により、かつ、インターネットにおける送信可能化権・公衆送信権の侵害を加味して考えれば足りる。
 本稿では指摘されていないが、動画については、映画の著作物およびプログラムの著作物と同様の考え方が妥当する。著者は、動画のストーリーは保護対象にならないとしている。単なるアイディアに過ぎない場合は、著作権法で保護されない。しかし、判例によれば、映画の著作物の場合には、ロール・プレイング・ゲームであっても、ストーリー改変は、同一性保持権・翻案権の侵害に該当する。インターネットを利用した場合には、送信可能化権・公衆送信権を侵害する。
 有償の素材集については、原則として対価を得て利用許諾をしているに過ぎず、著作権を留保している点には注意が必要である。ましてや、無償で公開しているブログなどは、対価すら得ていないので、利用許諾すらしていないと考えられる。
 本稿では、自動生成物について、著作権者を観念できないとされる。しかし、私見では、翻訳ソフトなどのソフトウェアを用いる場合には、コンピューターやソフトウェアを操作している人間を想定できる。ただし、原著作物のデッド・コピーや改変物に過ぎない場合は、著作物性がなく、同一性保持権・翻案権・複製権等の侵害となると解される。
「インターネットと著作権」
 著作権法は、有形的再製を複製とし(21条)、無形的な利用方法を21条の2~26条の2で規定している。インターネットに関しては、著作権侵害かどうかは、著作権の支分権である送信可能化権・公衆送信権でほぼ対処できるというのが、現在の判例である。したがって、今日では、複製権侵害かどうかを議論する実益は失われた。
 自分のホームページに他人のホームページを表示するリンクについては、考え方が分かれる。単に他人のホームページのURLを表示しているだけならば、侵害とならない。しかし、侵害者が他人のホームページを取り込んで、侵害者が侵害者自身の広告などに利用しているような場合には、引用には該当しないとして、むしろ侵害者が他人の著作権者をただ乗りしていると同様であるという考えにより、著作権侵害を肯定した裁判例がある。
本稿が著作権侵害の成否について、アメリカのプロバイダー法を参照している部分は、著作権侵害者の責任と、単にデジタルデータが経由しているに過ぎないプロバイダーの責任を混同している。プロバイダーを経由するデジタルデータには、著作権があるもの・ないもの、著作権を侵害しないもの・著作権侵害になるものが混じっており、プロバイダーには通常区別できないからである。
アメリカ法を手本にした日本のプロバイダー責任制限法でも、上記と同じ立法趣旨である。

高部眞規子『実務詳説 著作権訴訟』金融財政事情研究会、平成24年
著者は、知財高裁の裁判官である。
大きく分けて、著作権法の訴訟手続、著作権(支分権、著作物)侵害の成否、著作者人格権の侵害の成否に分けて解説している。
著作権侵害の成否について、著作権の支分権、著作物の種類ごとに、要件事実や侵害の成否を検討しているので、類型ごとに主に問題となりそうな点がわかる。ただし、必らずしも網羅的ではないため、基本書で補う必要がある。

中山信弘・大渕哲也・小泉直樹・田村善之編『著作権判例百選』有斐閣(2009年12月・4版)
私は弁護士になってから、筑波大学院のときに、読んだ。
版が改訂されてから、再度、読んだ。

[商標法]
田村善之『商標法概説』 (2000/7)
非常に論理的・機能的に考えるテキスト。ただし、少数説も多い。
私は弁護士になってから、筑波大学院のときに、読んだ。

末吉亙『知的財産法実務2・商標法(第3版)』(中央経済社)
弁護士が企業の担当者・実務向けに執筆した本。
商標法の初心者が勉強するのには良いと思われる。
条文、特許庁の審査基準の引用、裁判例の紹介である。学説にはほとんど触れていない。
ただし、囲みで判決文を延々と引用しているのは、もっと要領よく要約できるはずで、不要と思われる。
また、裁判例で定説が固まっていない分野について、裁判例の紹介はあるが、特に考察はされていない。同種の事案で、結論が肯定・否定にわかれている下級審裁判例についても、淡々と紹介するだけで、解説もない。
何か特別なテクニックが書いてあるかと思って読んでみたが、そのようなことはなかった。

小谷武『新・商標教室』
弁理士による読み物風のテキスト。

大渕哲也・田村善之・中山信弘・茶園成樹『商標・意匠・不正競争判例百選』別冊ジュリスト No.188- (2007/11/14)
私は弁護士になってから、読んだ。

奥田百子『なるほど図解 商標法のしくみ(第2版)』(中央経済社、2012年)
著者は弁理士である。商標法の入門書である。
商標法のしくみを全て図解しているわけではなく、平易な文章に、おおむねイラストが付いている形式の本である。
ただし、結構、初歩的な間違いが見受けられる。
例えば、著作権について、アイディアを保護すると書いてあるが、アイディアそのものを保護するのではなく、創作的な表現が保護対象である。
また、比較的古い裁判例も紹介しているのは良いとは思うが、現行の商標法に即した方がよいと思われる。現行の商標法には妥当しない旧・商標法に関する裁判例を長々と紹介するのは、いかがなものかと思われる。
・例えば、商標権として、商品の商標しか認められず、役務の商標が認められていなかった時代の裁判例
・商標の「使用」に「輸出」が含まれていなかった時代の裁判例
ちなみに、不正競争防止法の周知商品等表示(商品形態)の例として挙げられている、バター飴缶事件は、『商標・意匠・不正競争判例百選』68事件とは、別の事件である。

[不正競争防止法]
田村善之『不正競争法概説』 (2003/9)
不正競争防止法・独占禁止法上の私人による差止請求制度などについて、非常に論理的・機能的に考えるテキスト。田村教授は不正競争防止法の改正にも関与している。ただし、少数説も多い。

経済産業省知的財産政策室『逐条解説 不正競争防止法(各年版)』有斐閣
所管官庁による不正競争防止法の改正の解説本である。不正競争防止法が改正される年度に出版される。

[実務書]については、「知的財産権法の読んだ本(その2-2)」で触れる。

[雑誌]
大渕哲也・茶園茂樹・上野達弘・横山久芳「知的財産法の重要論点」(法学教室連載・319号~)特許法と著作権法の重要論点を解説。私は著作権法編のみ読んだ。

「ジュリスト」には、知的財産法に関して、学術的な解説論考が掲載されている。
「月刊ビジネス法務」には、知的財産法に関して、実務的な解説論考が掲載されている。