金融商品取引業者の外務員 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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金融商品取引業者の外務員

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金融商品取引業者の外務員

◎外務員の定義

外務員(64条1項)とは、勧誘員、販売員、外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、金融商品取引業者等の役員又は使用人のうち、その金融商品取引業者等のために、64条1項に定める有価証券(第2条第2項の規定により有価証券とみなされる権利を除く。)、デリバティブ取引に係る売買その他の行為を行う者をいう。

◎外務員の登録

第64条  金融商品取引業者等は、勧誘員、販売員、外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、その役員又は使用人のうち、その金融商品取引業者等のために次に掲げる行為を行う者(以下「外務員」という。)の氏名、生年月日その他内閣府令で定める事項につき、内閣府令で定める場所に備える外務員登録原簿(以下「登録原簿」という。)に登録を受けなければならない。

  有価証券(第2条第2項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利を除く。)に係る次に掲げる行為

イ 第2条第8項第1号から第3号まで、第5号、第8号及び第9号に掲げる行為

 すなわち、有価証券の売買(デリバティブ取引に該当するものを除く。以下同じ。)、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引(有価証券の売買にあっては、第10号に掲げるものを除く。)、有価証券の売買、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引の媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)又は代理(有価証券の売買の媒介、取次ぎ又は代理にあっては、第10号に掲げるものを除く。)

次に掲げる取引の委託の媒介、取次ぎ又は代理 (イ) 取引所金融商品市場における有価証券の売買又は市場デリバティブ取引、(ロ) 外国金融商品市場(取引所金融商品市場に類似する市場で外国に所在するものをいう。以下同じ。)における有価証券の売買又は外国市場デリバティブ取引、

有価証券等清算取次ぎ 、有価証券の売出し又は特定投資家向け売付け勧誘等、有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱い

ロ 次に掲げる行為

(1) 売買又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理の申込みの勧誘

(2) 市場デリバティブ取引若しくは外国市場デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理の申込みの勧誘

(3) 市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引の委託の勧誘

  次に掲げる行為

イ 第2条第8項第4号、第6号及び第10号に掲げる行為

  すなわち、店頭デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理(以下「店頭デリバティブ取引等」という。)

  有価証券の引受け(有価証券の募集若しくは売出し又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に際し、2条第6項各号に掲げるもののいずれかを行うことをいう。)

  有価証券の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理であって、電子情報処理組織を使用して、同時に多数の者を一方の当事者又は各当事者として次に掲げる売買価格の決定方法又はこれに類似する方法により行うもの(取り扱う有価証券の種類等に照らして取引所金融商品市場又は店頭売買有価証券市場(第6十7条第2項に規定する店頭売買有価証券市場をいう。)以外において行うことが投資者保護のため適当でないと認められるものとして政令で定めるものを除く。)、 競売買の方法(有価証券の売買高が政令で定める基準を超えない場合に限る。)、金融商品取引所に上場されている有価証券について、当該金融商品取引所が開設する取引所金融商品市場における当該有価証券の売買価格を用いる方法、第67条の11第1項の規定により登録を受けた有価証券(以下「店頭売買有価証券」という。)について、当該登録を行う認可金融商品取引業協会が公表する当該有価証券の売買価格を用いる方法、顧客の間の交渉に基づく価格を用いる方法

ロ 店頭デリバティブ取引等の申込みの勧誘

  前2号に掲げるもののほか、政令で定める行為

 金融商品取引業者等は、64条1項の規定により当該金融商品取引業者等が登録を受けた者以外の者に外務員の職務(同項各号に掲げる行為をいう。)を行わせてはならない(64条2項)。

 第1項の規定により登録を受けようとする金融商品取引業者等は、外務員に関して登録申請書を内閣総理大臣に提出し(3項)、内閣総理大臣は指定する協会に登録しなければならない(5項)。


◎外務員の権限

 外務員は、その所属する金融商品取引業者等に代わって、第64条第1項各号に掲げる行為に関し、一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなす(64条の3第1項)。前項の規定は、相手方が悪意であった場合においては、適用しない(2項)。

現行の金融商品取引法でも、有価証券等管理業務(28条5項)が64条1項・64条の3に掲げられておらず、外務員が顧客から株券や金銭の預託を受けた場合に、外務員の権限の範囲内かが問題となる。

 外務員は、証券会社の営業所以外の場所で有価証券の売買等の勧誘を行う者であり、通常、その代理権には何らかの内部的制限がある。昭和40年改正前の証券取引法には外務員の代理権に関する規定がなかったため、これをめぐる学説・裁判例上の争いがあり、外務員が勧誘以外について証券会社の代理権を有するのか、外務員は証券会社と顧客のいずれの代理人であるかという基本的な点が問題とされていた。

 最3小判昭38・12・3民集17巻12号1596頁は、外務員は、特別の事情のない限り、証券会社の商業使用人として、保護預かりや名義書換えのための株券の預託を受けるなど株式取引の付随的事項について、一般に証券業者を代理する権限を有するものと解するのが相当である旨判示している。この判例は、それまでの下級審裁判例の流れを総括したものと評されている。

 上記最高裁昭和38年判決が出てから、昭和40年に証券取引法64条が新設された。その後、平成10年の法改正で、旧・証券取引法(現行の金融商品取引法)64条から64条の3に条番号が繰り下がった。

 旧・証券取引法64条1項は、外務員が、その所属する証券会社に代わって、「その有価証券の売買その他の取引」に関し、一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなす旨規定している。その趣旨は、外務員に代理権があると信じて取引した顧客を保護するため、その外務員が所属証券会社より現実に代理権を付与されているか否かを問わず、また現実に授権された代理権の範囲いかんを問わず、善意の顧客に対する関係では、外務員に一定範囲の私法上の代理権の存在を擬制し、外務員が顧客との間でした行為の効果が証券会社に帰属することを認めたものであると解するのが通説である。

通説は、旧・証券取引法64条1項にいう「その有価証券の売買その他の取引」とは、当該外務員が所属する証券会社が現実に営んでいる取引のことをいい、同条で擬制される外務員の一般的代理権の範囲は、当該証券会社の現実に営んでいる営業範囲に限定されると解している(鈴木竹雄=河本一郎『証券取引法〔新版〕』370頁、神崎克郎「有価証券外務員」経済法8号4頁、小島孝「有価証券外務員」『証券取引法大系』364頁、龍田節「証券取引法と外務員」ジュリ500号566頁など)。

通説の理由としては、

(1)商業使用人である支配人の代理権に関する商法38条1項にいう「其ノ営業ニ関スル」とは、当該営業主の営業に関し、という意味であるところ、外務員も商業使用人であり、証券取引法64条1項の「その所属する証券会社に代わって、その有価証券の売買その他の取引・・・・・・に関し」という文言は、支配人同様外務員の代理権の範囲を限定する趣旨のものと解されること、

(2)顧客は、個々の外務員の権限については、これを知り得ないことが多いのに反し、自己が取引しようとする外務員の属する証券会社の営業範囲についてはこれを知り得る機会が多いのであるから、外務員の行為についての証券会社の責任負担の範囲をその営業範囲に制限しても顧客の保護のために欠けるところは大きくないこと

などが挙げられている。

下級審裁判例として、東京地判平7・2・16判時1550号65頁は、この通説と同様の一般論を明確に示した上、外務員がした他人名義で取得した株式等の売付け、新規公開株について制限数を大きく上回る株数の売付け等を当該外務員の所属する証券会社の業務の範囲外とし外務員の権限外の行為であるとした。他人名義である点が外務員の権限外とされたポイントと思われる。

また、大阪地判昭57・11・26金判674号41頁は、所属証券会社には割当てがなく買付けをすることが不可能な大量の公募株の買付けの注文を受けることは架空の取引であり、外務員の権限外の行為であるとしている。公募株の注文については、証券会社が現実に営む業務かどうかは一般的かつ客観的に判断すべきであり、個別的かつ主観的に判断すべきではなく、当該証券会社が現実かつ一般的に公募株の売却又はその媒介を営んでいる以上、これは外務員の代理権の範囲に属することであり、現実に当該公募株について会社に割当てがあるか、したがって、売却可能であったかどうかは問題とならないと批判する学説がある(並木俊守・上記大阪地裁昭57判決の評釈・金判695号47頁)。前記通説にいう「現実に営む業務」に当たるかどうかについて、なお考慮すべき問題があるように思われる。

これに対し、東京地判昭57・4・27判例タイムズ482号155頁は、外務員が、真実は証券会社が引受幹事会社になっていないので販売することができない公募株の買付注文を受けたという事案について、外務員に代理権がなかったことを認めるに足りる証拠はないとして、外務員が当該取引について一般的代理権を有していたと認めた(ただし、同判決は、外務員は、権限を濫用し、顧客である原告の代理人として金員を保管していたとして、結局顧客の預託金返還請求を棄却している。)。

最高裁判所第3小法廷判決平成15年3月25日、預託金返還請求事件

裁判集民事209号269頁、判例タイムズ1121号112頁、金融商品取引法判例百選41事件

証券会社に所属する外務員が、顧客に対し、同証券会社の架空の取引口座の存在をかたって同口座の利用を勧誘し、金銭の預託を受けるなどしたが、その入出金の経過が同社から同顧客に交付された取引報告書等には全く記載されておらず、同外務員がした説明からは同口座において同顧客のための証券取引が行われるものと解することが困難であるなど判示の事情の下においては、同外務員がした上記金銭の受託等の行為は、証券取引法(平10年改正前)64条1項にいう「その有価証券の売買その他の取引」に当たらない。

 本件事案については、「客方」口座が実在しないYの取引口座であること、入出金の経過がYからXに交付された取引報告書等には全く記載がないこと、Aの説明からは同口座に入金された金銭は会社が運用し、複利の利息が付されるというのであり、同口座において行われる証券取引の損益が顧客に帰属するとの説明があったことはうかがわれず、同口座においてXのための証券取引が行われるものと解することが困難であるなどの事情がある。また、原判決は、Aが預託を受けて「客方」に入金した金銭でXのため株式を購入した事実があることを指摘するが、このような事実があったとしても、その株式の買付けは、Aに交付された金銭について「客方」から出金した処理をした上で行われた別個の取引であるとみられる。本判決は、これらの事情から、Aがした「客方」口座の利用は、Yが証券会社として行うことのできる取引としての実体を有しない架空のものであり、証券取引法64条1項にいう「その有価証券の売買その他の取引」に当たらないとしたものである。外務員が所属する証券会社が現実に営む取引といえるかどうかについて、一般的・客観的にみるという立場に立ったとしても、Yが当時証券会社として一般的・客観的に上記のような取引を現実に営んでいたとみることは困難であると思われる。

 本判決は、上記規定にいう「その有価証券の売買その他の取引」の意義について一般的な判示をしたものではないが、同規定の適用の限界を示した事例として意義のある判例といえよう。

 なお、本判決は、予備的請求である不法行為に基づく損害賠償請求について原審に差し戻しており、使用者責任の要件の存否、過失相殺の当否等が更に審理され、差戻審において、不法行為に基づく損害賠償請求が一部認められた。

◎最高裁判所第3小法廷判決昭和51年2月17日

金融法務事情798号35頁、株券引渡請求事件、金融商品取引法判例百選40事件

顧客が外務員を通じて証券会社に株式売却の委託をするにあたり、指値による株式売却をするまでの間、外務員個人の用に供することを許容して株券を外務員に預託した場合においては、顧客が外務員に株券を預託したときに直ちに顧客と証券会社との間に株券預託の関係が生ずるものではなく、外務員が委託の趣旨に従い株式売却のため株券を証券会社に交付したときにはじめて証券会社がその預託をうけたものと解すべきである。

 本件事案の概要は次のとおりである。Xは、Y証券会社の登録外務員Aを通じてYに株式の売却の委託をするにあたり、Xの指値によって株式の売却がなされるまでの間、Aが個人として株券を利用することを許して右株券をAに交付したところ、Aは、これをA個人の用に供し、Yに交付しなかつた。Xは、外務員AはYの代理人として右株券の預託をうけたものであると主張して、Yに対し株券の返還を求めたが、原審は、Xにおいて株券を個人として利用することをAに許していた以上、その株券の返還をYに求めるとすれば、その株券が現実にAを通じてYに存するか、少なくとも1度はAからYに交付されたことが必要であるところ、右事実が認められないとしてXの請求を棄却すべきものとし、本判決も右原審の結論を維持した。

 証券会社と顧客との取引に際し外務員が介在する場合に、外務員が証券会社の代理人たる地位に立つか顧客の代理人たる地位に立つかは、具体的事情によって決せられるベき事実認定の問題である。

 Xは、上告理由において、証券取引法64条によればAがYの代理人として本件株券の預託をうけたことは明らかであると主張するが、同条は、従来外務員がその職務に関し証券業者を代理する権限があるか否かおよびその範囲について紛争が絶えなかつたため、前記昭和38年最高裁判決が契機となって、昭和40年の法改正によって外務員の権限の範囲を明らかにした規定であって、外務員を顧客の代理人と認定しうることとは直接の関係をもたない。