blog201403、信託法 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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blog201403、信託法

寺本振透『解説 新信託法』弘文堂
罰則の部分を除く本文約310頁。平成19年刊行。信託法の立法に際して出版された。
 本書は、基本的に逐条解説であり、関連条文をまとめて解説している。
信託法は、英米法系の国で発展した法律で、主に富裕層の遺産管理などに用いられていた。近時は、投資信託、資産流動化、企業年金信託などの投資用にも用いられている。
信託法は、民法の特別規定、手続を含んでいる。また、法務省の所管のため、会社法に似た感じの規定が多い。もとより、会社法に類似しているといっても、信託法の独自性を理解しなければならない。
なお、本書では指摘されていないが、公共工事の前払金保証事業に関する法律について、信託契約の成立を認めた最高裁平成14年判決がある。これは、特別な法律の根拠があることが信託の成立を認めた前提となっている。
新しい信託法は、旧・信託法よりも使いやすように工夫がされているようだが、旧・信託法の下で起きた不具合にも対処している。そもそも信託業法の資本金要件など規制が厳しいし、信託会社や投資信託及び投資法人に関する法律の投資法人なども、委託者が事業者・富裕層・投資家、受託者が信託銀行などのプロ、信託財産も一定額以上(最低でもプラスの純資産で数億円以上)を予定しているので、特定の需要にのみ対応していると感じた。
今日までに、上記書籍のうち、以下の部分を読み終えました。
◎信託
 信託では、委託者、受託者、受益者が登場するが、このうち、受託者の利益のみを目的とする信託は許されない。それ以外の場合には、他の地位を兼ねることができる。委託者と受託者を兼ねる場合は、自己信託といい、新法で認められた。
 また、委託者が存在しない場合(例えば、遺言信託で委託者が死亡した場合、資産流動化でオリジネーターが資産を売却した場合など)、または、受益者がまだいない場合(例えば、遺言信託で委託者が存命中で信託が効力を生じていない場合、受益者が受益権を売却した場合など)もある。
 また、信託をめぐる関係者として、委託者、受託者、受益者、信託財産に対して、それぞれの債権者がいる場合があり、債権者保護手続、詐害行為取消権・否認権などの規定が整備されている。
◎信託財産
旧・信託法と異なり、株券発行会社の株券について対抗要件を規定を設けず、動産として、取り扱うという解説には違和感を覚えた。会社法では株主名簿の書換えが会社に対する対抗要件である。会社にすら対抗できないのに、第三者に対抗できるというのは、結論として、つじつまが合わない。この点、信託法としては、善意取得の問題も含めて、会社法の解釈問題に任せるというのが立法趣旨ではなかろうか。
上場株式会社は、社債、株式等の振替に関する法律により、株券電子化により、振替会社への個別株主名簿の書換えが対抗要件となっているから、上場株式会社については、社債、株式等の振替に関する法律の手続を踏むことにより、信託財産とすることに問題がない。
もっとも、事業信託・自己信託のような例外を除き、上場株式以外は信託会社は取り扱わないというのが、実務での取扱いではなかろうか。
◎受託者
 受託者は固有財産と信託財産の分別管理をしなければならないが、倒産隔離のリスクは残る。現に、J-REITの上場会社が倒産した実例がある。このため、破産法・民事再生法・会社更生法には、信託財産に関する規定が新設されている。
 本書の中で誤りがあると思われる。損失補てん等の債権の消滅時効(信託法43条)について、同条1項で信託法40条(受託者の損失補てん責任)、2項で41条(法人である受託者の役員の連帯責任)と書き分けていることからすると、43条2項により、41条の債権については、商事時効(5年)ではなく、43条2項の10年が消滅時効と解される。
・受託者が破産しても、受託者の地位を当然には失わない。委任との違いである。ただし、破産管財人・保全管理人がいる場合には受託者の権限が専属する。基本的に、民事再生法・会社更生法の場合も同じである。
・受託者死亡の場合、信託財産は、受託者の相続の対象とならない。この点、旧法では明文をもって規定されていたが、新法では当然のこととして削除された。私見では、新法でも条文を残しておいたほうが誤解を避ける意味でよかったのではないかと思われる。
◎受託者が複数の場合
信託財産と組合との違い
・共同受託の場合、信託財産は合有であるが、民法の組合の合有とは異なる。信託が終了したときも、受託者は持分を有しないから、分割を請求したり、持分を譲渡できない。共有物分割の特別規定がある。
・共同受託の場合に、任務違反行為がある受託者のみが責任を負い、任務違反行為がない受託者は、責任を負わない。
・共同受託で職務分掌のある場合、他の職務を分担する共同受託者がいる場合であっても、当該職務を担当する受託者がいない場合、新しく受託者選任の必要がある。
登記・登録がない信託の場合、受託者が誰か分らない場合もあり得るとされているが、制度上の不備ではなかろうか。
・受託者死亡の場合、信託財産は、受託者の相続の対象とならず、共同受託の場合には、残りの受託者に帰属する。
・受託者の変更等の場合、受託者には通知義務等がある。
◎受益者
・子に受給権を与え、妻を受託者とする方法が本書では例として挙げられている(相続法との関係では問題があるが)。しかし、妻を受託者とするのは、通常取られない方法である。本稿では指摘されていないが、信託会社(日本では通常、信託業務を営む信託銀行)を受託者として、委託者が離婚して離れて暮らしている、委託者の実子に対する養育費・遺産を与える受益権も考えられる。アメリカでは、離婚率が高いこともあり、資産家の場合には、よくある実例のようである。
・原則として、受益者(例えば、委託者の相続人のうちの1人)には再度の受益者指定権がないが、信託行為で受益者にさらなる受益者指定権(例えば、受益者の相続人のうちの1人)を定めて与えれば、事業承継などの際に、後継ぎ遺贈と同様か、むしろそれ以上の効果を与えることができる(信託法89条~91条)。相続法との関係では問題がある。旧法下で本条の規定がない頃の通説は、遺留分減殺請求権は信託行為についてなされると解していたようだが、例えば、第1次受益者が死亡した後、第2次受益者が生じた場合に、時期的に遺留分減殺請求権を行使できるか、または、法的安定性を害しないか、疑問がある。また、後継ぎ遺贈型・受益者連続型の相続税法に関する解説は、厳密に言えば間違っていると思われる。
◎受益権
○受益権の譲渡は、受益者の権利・義務が対象であり、地位の譲渡である。指名債権の譲渡とは異なる。
○資産の流動化などの場合、受益権証券は無記名式とされている。そのため、租税回避に利用されないかについて、税法は「信託税制」として対処している。
○受益権は、信託財産負担債務(信託財産に対する債権、受託者の費用・報酬など)に劣後する。このため、信託財産に対する貸し付けをした債権者が、受益者より優先される。例外に、劣後債権とすることはできる。しかし、信託の仕組みをよく理解していない投資家が損害をこうむる危険性を感じた。
○受益権は、取得請求(買取り請求)できる。
○受益者複数の場合の特例として、受益者集会の制度が創設された。
○新法は、以下の制度を新設した。
①信託が委託者の死後に効力を生じる場合のように受益者が現にいない場合、受託者がいない場合には、信託管理人
②受益者が受託者を適切に監督できない場合には、信託監督人
③受益者が変動し、または、多数の場合には、受益者代理人
◎委託者
遺言信託の場合、信託行為に定めない限り、委託者の地位は相続しない(147条)。
◎信託の変更、併合、分割
○信託の併合・分割については、英米では、企業年金の実例があるようである。本稿では指摘されていないが、会社が合併や会社分割する場合、福利厚生条件を統一したり、あるいは会社分割により、企業年金を分割する必要がある。集団投資スキーム・投資信託などでは、併合の手法によらずに、合同運用により、規模の利益を享受でき、同じ効果を上げられるとされる。
◎信託の終了・清算
○受託者が受益権の全部を1年間継続して保有している場合には信託が終了する(信託法163条2項)。資産流動化・集団投資スキームでは、受益権を受託者に買い取ってもらうケースが有り得る。
◎受益証券発行信託
 資産流動化のように、受益権を証券化する場合に用いられる。ただし、実務では、信託法の許容する範囲内で、信託行為によって、詳細な条件を定めているようである。
◎責任限定信託
 責任限定信託は登記が効力要件である(信託法216条)。責任限定信託は、投資法人のように、有限責任の1つの法人と考えればよい。
ただし、受託者の職務執行について違法性、故意・重過失または一定の場合に軽過失があれば、受託者の固有財産に対して損害賠償請求ができる。これは、有限責任の株式会社における役員個人の責任と同じである。

信託法
(平成十八年十二月十五日法律第18号)
最終改正:平成二五年五月三一日法律第28号
 第1章 総則(第1条―第13条)
 第2章 信託財産等(第14条―第25条)
 第3章 受託者等
  第1節 受託者の権限(第26条―第28条)
  第2節 受託者の義務等(第29条―第39条)
  第3節 受託者の責任等(第40条―第47条)
  第4節 受託者の費用等及び信託報酬等(第48条―第55条)
  第5節 受託者の変更等
   第1款 受託者の任務の終了(第56条―第58条)
   第2款 前受託者の義務等(第59条―第61条)
   第3款 新受託者の選任(第62条)
   第4款 信託財産管理者等(第63条―第74条)
   第5款 受託者の変更に伴う権利義務の承継等(第75条―第78条)
  第6節 受託者が二人以上ある信託の特例(第79条―第87条)
 第4章 受益者等
  第1節 受益者の権利の取得及び行使(第88条―第92条)
 第4章 受益者等
  第1節 受益者の権利の取得及び行使(第88条―第92条)
  第2節 受益権等
   第1款 受益権の譲渡等(第93条―第98条)
   第2款 受益権の放棄(第99条)
   第3款 受益債権(第100条―第102条)
   第4款 受益権取得請求権(第103条・第104条)
  第3節 二人以上の受益者による意思決定の方法の特例
   第1款 総則(第105条)
   第2款 受益者集会(第106条―第122条)
  第4節 信託管理人等
   第1款 信託管理人(第123条―第130条)
   第2款 信託監督人(第131条―第137条)
   第3款 受益者代理人(第138条―第144条)
 第6章 信託の変更、併合及び分割
  第1節 信託の変更(第149条・第150条)
  第2節 信託の併合(第151条―第154条)
  第3節 信託の分割
   第1款 吸収信託分割(第155条―第158条)
   第2款 新規信託分割(第159条―第162条)
 第7章 信託の終了及び清算
  第1節 信託の終了(第163条―第174条)
  第2節 信託の清算(第175条―第184条)
 第8章 受益証券発行信託の特例
  第1節 総則(第185条―第193条)
  第2節 受益権の譲渡等の特例(第194条―第206条)
  第3節 受益証券(第207条―第211条)
  第4節 関係当事者の権利義務等の特例(第212条―第215条)
 第9章 限定責任信託の特例
  第1節 総則(第216条―第221条)
  第2節 計算等の特例(第222条―第231条)
  第3節 限定責任信託の登記(第232条―第247条)
 第10章 受益証券発行限定責任信託の特例(第248条―第257条)
 第11章 受益者の定めのない信託の特例(第258条―第261条)
 第12章 雑則
  第1節 非訟(第262条―第264条)
  第2節 公告等(第265条・第266条)
 第13章 罰則(第267条―第271条)