寺本振透『解説 新信託法』弘文堂 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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閲覧数順 2017年08月21日更新

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寺本振透『解説 新信託法』弘文堂

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相続

寺本振透『解説 新信託法』弘文堂
罰則の部分を除く本文約310頁。平成19年刊行。信託法の立法に際して出版された。
 本書は、基本的に逐条解説であり、関連条文をまとめている。
信託法は、英米法系の国で発展した法律で、主に富裕層の遺産管理などに用いられていた。近時は、投資信託などの投資用にも用いられている。
また、信託法は、民法の特別規定、手続を含んでいる。
なお、本書では指摘されていないが、公共工事の前払金保証事業に関する法律について、信託契約の成立を認めた最高裁平成14年判決がある。
新しい信託法は、旧・信託法よりも使いやすように工夫がされているようだが、旧・信託法の下で起きた不具合にも対処している。そもそも信託業法の資本金要件など規制が厳しいし、信託会社や投資信託及び投資法人に関する法律の投資法人なども、委託者が事業者・富裕層・投資家、受託者が信託銀行などのプロ、信託財産も一定額以上を予定しているので、特定の需要にのみ対応していると感じた。
今日までに、上記書籍のうち、以下の部分を読みました。
○信託財産
旧・信託法と異なり、株券発行会社の株券について対抗要件を規定を設けず、動産として、取り扱うという解説には違和感を覚えた。会社法では株主名簿の書換えが会社に対する対抗要件である。会社にすら対抗できないのに、第三者に対抗できるというのは、結論として、つじつまが合わない。この点、信託法としては、善意取得の問題も含めて、会社法の解釈問題に任せるというのが立法趣旨ではなかろうか。
上場株式会社は、社債、株式等の振替に関する法律により、株券電子化により、振替会社への個別株主名簿の書換えが対抗要件となっているから、上場株式会社については、社債、株式等の振替に関する法律の手続を踏むことにより、信託財産とすることに問題がない。
もっとも、事業信託・自己信託のような例外を除き、上場株式以外は信託会社は取り扱わないというのが、実務での取扱いではなかろうか。
○受託者
 受託者は固有財産と信託財産の分別管理をしなければならないが、倒産隔離のリスクは残る。現に、J-REITの上場会社が倒産した実例がある。このため、破産法・民事再生法・会社更生法には、信託財産に関する規定が新設されている。
 本書の中で誤りがあると思われる。損失補てん等の債権の消滅時効(信託法43条)について、同条1項で信託法40条(受託者の損失補てん責任)、2項で41条(法人である受託者の役員の連帯責任)と書き分けていることからすると、43条2項により、41条の債権については、商事時効(5年)ではなく、43条2項の10年が消滅時効と解される。
・受託者が破産しても、受託者の地位を当然には失わない。委任との違いである。ただし、破産管財人・保全管理人がいる場合には受託者の権限が専属する。基本的に、民事再生法・会社更生法の場合も同じである。
・受託者死亡の場合、信託財産は、受託者の相続の対象とならない。この点、旧法では明文をもって規定されていたが、新法では当然のこととして削除された。私見では、新法でも条文を残しておいたほうが誤解を避ける意味でよかったのではないかと思われる。
○受託者が複数の場合
信託財産と組合との違い
・共同受託の場合、信託財産は合有であるが、民法の組合の合有とは異なる。信託が終了したときも、受託者は持分を有しないから、分割を請求したり、持分を譲渡できない。共有物分割の特別規定がある。
・共同受託の場合に、任務違反行為がある受託者のみが責任を負い、任務違反行為がない受託者は、責任を負わない。
・共同受託で職務分掌のある場合、他の職務を分担する共同受託者がいる場合であっても、当該職務を担当する受託者がいない場合、新しく受託者選任の必要がある。
登記・登録がない信託の場合、受託者が誰か分らない場合もあり得るとされているが、制度上の不備ではなかろうか。
・受託者死亡の場合、信託財産は、受託者の相続の対象とならず、共同受託の場合には、残りの受託者に帰属する。
・受託者の変更等の場合、受託者には通知義務等がある。
○受益者
・子に受給権を与え、妻を受託者とする方法が本書では例として挙げられている(相続法との関係では問題があるが)。本稿では指摘されていないが、信託会社を受託者として、委託者が離婚して離れて暮らしている、委託者の実子に対する養育費・遺産を与える受益権も考えられる。アメリカでは、離婚率が高いこともあり、資産家の場合には、よくある実例のようである。
・原則として、受益者(例えば、委託者の相続人のうちの1人)には再度の受益者指定権がないが、信託行為で受益者にさらなる受益者指定権(例えば、受益者の相続人のうちの1人)を定めれて与えれば、事業承継などの際に、後継ぎ遺贈と同様か、むしろそれ以上の効果を与えることができる(相続法との関係では問題があるが)。

信託法
(平成十八年十二月十五日法律第18号)
最終改正:平成二五年五月三一日法律第28号
 第1章 総則(第1条―第13条)
 第2章 信託財産等(第14条―第25条)
 第3章 受託者等
  第1節 受託者の権限(第26条―第28条)
  第2節 受託者の義務等(第29条―第39条)
  第3節 受託者の責任等(第40条―第47条)
  第4節 受託者の費用等及び信託報酬等(第48条―第55条)
  第5節 受託者の変更等
   第1款 受託者の任務の終了(第56条―第58条)
   第2款 前受託者の義務等(第59条―第61条)
   第3款 新受託者の選任(第62条)
   第4款 信託財産管理者等(第63条―第74条)
   第5款 受託者の変更に伴う権利義務の承継等(第75条―第78条)
  第6節 受託者が二人以上ある信託の特例(第79条―第87条)
 第4章 受益者等
  第1節 受益者の権利の取得及び行使(第88条―第92条)