『専門研修講座・建築紛争』 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

村田 英幸
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閲覧数順 2017年06月26日更新

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『専門研修講座・建築紛争』

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『専門研修講座・建築紛争』

ぎょうせい、平成23年刊行

弁護士会での研修講義録である。

Ⅴ 建築紛争における損害額の認定状況

講師は、建築紛争の損害賠償請求額が青天井であるかのようなことを述べているが、誤りである。

建築紛争では、損害賠償費目をコツコツと積み上げてしていくため、むしろ請求者が瑕疵を特定し、瑕疵たる理由付け、補修・建て替えの費用を見積もり、それに対して建築業者・売主の側で個別・具体的に認否・反論し、裁判所が認定していくという方式である。

したがって、やり方は違うが、施工について、見積もり、その査定の作業に近い。しかも、そもそも、なぜ瑕疵なのかという難しい作業が前提としてあるため、建築士の鑑定が必要であり、余計に難しい。当事者双方の主張が並行線のまま、裁判所が果たして瑕疵として認定してくれるか、瑕疵である場合に金額はいくらかという問題となる。

なお、講師は、交通事故の赤本を引き合いに出しているが、交通事故では人身損害、慰謝料、物損であるのに対して、建築紛争では不動産の交換価値または使用価値、補修等費用の物的損害、または、まれに慰謝料が問題となるため、建築紛争と交通事故とでは重なる損害費目は物損・補修費・登録費用・税・慰謝料などであり、それ以外は余り参考とはならない。

むしろ、東京地方裁判所民事22部(建築集中部)で定着している瑕疵等一覧表の方式、建築基準法令、過去の裁判例で瑕疵と認められた先例のほうが重要である。

講師は、契約とは違う建築材料を用いたことが瑕疵と認めた最高裁判決では、損害額として、材料代差額等の結局330万円しか認められなかったことを指摘している。この事件では、最高裁・差し戻し控訴審まで合計4審級の裁判をやって長時間がかかり、建築士の鑑定費用や弁護士費用などを考えると、損害賠償額が多くないと、むしろ経済的に見合わないということになりかねない。

・交換価値の下落分

補修しても補いきれない交換価値の下落分について、損害賠償額となるとするのが裁判例。

なお、シックハウスについて、瑕疵に該当するかが問題となるが、裁判例はまだ確立していないようであるが、私見では、有害物質が建築基準法令の基準を超える場合には瑕疵に当たると考える。

・相殺、同時履行の抗弁

請負人の残代金請求権と施主の補修請求権は同時履行関係にあるが、請負人・施主のいずれからも、相殺でき、相殺後の残代金に対する遅延損害金は相殺の意思表示をした日の翌日から発生する(最高裁平成9・7・15)。

したがって、残代金請求権が残る可能性がある事案では、建築紛争が長引くと、遅延損害金のため、施主に不利になる。そのため、同時履行の抗弁を主張したほうがよい場合がある。

損害費目

・建て替え、補修の工事費用

・仲介業者の仲介手数料

・各種費用の消費税

・建築士などの調査費用

建築士は時間給(本稿では指摘されていないが、一説によると、東京周辺では、往復の移動時間を含めて1時間当たり8千円+消費税)で調査費用を請求するため、多額になる可能性があるが、裁判例は損害賠償額が認められる場合に限定して、調査費用を認めている。建築士の調査結果に間違いがあるかどうかも、裁判例では重視されている。裁判所で認められなかった調査費用は施主の自腹になる。

・補修工事のために居住者の移転が必要な場合の移転費用・移転先の家賃・諸費用

・逸失利益として、賃貸物件について、使用できなかった期間に得べかりし家賃

・契約解除が認められる場合には、新しい物件の登記費用

・既に支払った火災保険料

・ローンの利息

・弁護士費用

慰謝料

慰謝料については、本稿では結論・理由付けが明示されていないが、私見では、以下のとおり、考えるべきである。

原則として、建築紛争は物的損害のため、物の交換価値・使用価値が補填されれば、慰謝料は認められない。

例外的に、瑕疵が請負人の不法行為により生じた場合には、損害賠償請求できる。

過失相殺、寄与度

 注文者の指図について、民法636条が問題となる。請負業者は民法636条本文で免責されると誤解していることが多い。しかし、建築は専門性が高いから、裁判例は、民法636条本文だけで、請負人を全面的に免責することを認めていない。

 施主の指図は過失相殺の対象となる場合がある。

 地震・天災などは、損害発生についての寄与として、考慮される。

損益相殺

建て替え・補修によって建物の耐用年数が延びたことによる利益を控除すべきとする裁判例がある。

また、建て替え前の使用収益(家賃相当額)を控除すべきとする裁判例がある。

物損の交換価値と使用価値の関係について、講師は、大審院の富喜丸事件をご存じないようである。