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うつ、家庭不和など連鎖、自殺の背景に平均4要因

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うつ、家庭不和など連鎖 自殺の背景に平均4要因 喪失賃金22兆円、10年で 民間チームが初の白書 「ストップ自殺」

自殺防止に取り組む特定非営利活動法人(NPO法人)「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京)や専門家らのチームは4日、自殺した305人の遺族からの聞き取りや警察庁のデータを分析した初めての「自殺実態白書2008」を公表した。自殺に追い込まれるまでに、うつ病、家庭不和、負債など、平均して4つの要因が連鎖している-などの内容。

年間自殺者は1998年から10年連続で3万人を超えたが、白書はこの間に失われた生涯賃金は計約22兆1200億円に上ると推計。全国の警察署別のデータを初めて分析し、地域ごとの特性も浮き彫りにされた。

チームのメンバーらは4日、白書を自殺対策担当の岸田文雄内閣府特命相に提出。データはライフリンクのホームページで公開された。ライフリンク代表の清水康之さんは「自治体単位で対策に取り組む手掛かりにしてほしい」と話している。

調査は、自殺の要因を68に分け、自殺者305人の遺族から聞き取りを実施。分析の結果、会社員なら「配置転換の後、過労と職場の人間関係の悩みが重なり、うつ病を発症」のように、自殺に至るまでに平均して4つの要因が複合していることが分かった。

最も多かった要因は「うつ病」の139件。続いて家庭不和、負債、身体疾患、生活苦、職場の人間関係、職場環境の変化、失業、事業不振、過労-の順。

また、自殺前の1カ月以内に相談機関を訪れていた人は全体の62・4%に上り、半数以上がサインを発しているのに自殺を防止できない現状も明らかになった。清水さんは「精神科などの医療機関が自殺を食い止める力をつけることや、医療機関に至る前の包括的支援が重要」としている。

2004-06年の自殺者数を発生地の警察署ごとにみると、青木ケ原樹海を抱える山梨県警富士吉田署が389人で最多。次いで福岡県警早良署330人、青森県警青森署291人の順だった。

共同通信社、2008年7月7日


「自殺対策支援センター、ライフリンク」が詳細な解析を発表しました。一口に自殺、うつ病と言うことなく、その背景にある様々な心理・社会的な要因を特定することが求められています。

これまで、日本の自殺は中高年の男性が多いと指摘されてきました。「中高年自殺」(ちくま新書、高橋祥友)によりますと、自殺の危険因子として以下が列挙されています。

1.自殺未遂歴
 過去の自殺未遂の状況・方法・意図・周囲の反応など
2.精神疾患
 躁うつ病、統合失調症、人格障害、アルコール依存症
3.サポート不足
 未婚、離婚、配偶者との離別、職場での孤立
4.性別
 自殺既遂:男性>女性、自殺未遂:男性<女性
5.年齢
 年齢が高くなると自殺率も上昇
6.喪失体験
 経済的損失、地位の失墜、病気や怪我、業績不振、予想外の失敗
7.他者の死の影響
 精神的に重要なつながりのあった人が突然に不幸な形で死亡
8.事故傾性
 事故を防ぐのに必要な措置を不注意に取らない
 慢性疾患に対する予防や医学的な助言を無視する


これは万国共通の危険因子とされています。日本においてはこれらに加え、社会の変化にも注目すべきでしょう。経済不況、成果主義、格差社会などの出現が若い人々の希望をも奪っています。

また今回の白書では山梨県や福岡県、青森県のような地方において多数を認めた一方、東京都、大阪府、神奈川県のような大都市における増加も指摘されています。これは都市部において派遣社員の増加に伴う「ワーキングプア」が生じているためでしょう。この結果、前回ご報告したような30代の自殺の増加につながると考えられます。

当院においてもこれらの問題は散見されており、医療機関としての対応もさることながら、地域・社会的な取り組みが必要と痛感している次第です。つきましては、都庁・区役所、保健所・警察署といった自治体、そして各企業、人事部、産業医とも協働し、具体的な対応を検討してまいる所存です。どうぞ宜しくお願い致します。

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