笹山幸嗣『MBO 経営陣による上場企業の戦略的非公開化』 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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笹山幸嗣『MBO 経営陣による上場企業の戦略的非公開化』

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笹山幸嗣『MBO 経営陣による上場企業の戦略的非公開化』

日本経済新聞出版社、2011年、約198頁。

銀行出身のMBA保有者、弁護士による共著である。

今日は、上記書籍のうち、以下の部分を読みました。

MBOは経営陣による企業買収である。買収の主体が従業員の場合には、EBOという。

上場廃止するため「非公開化(ゴーイング・プライベート)」の類型に含まれる。

PE(プライベート・エクィティ)ファンド・投資ファンドにより買収資金を調達せずに、自己資金で行う場合を「純粋MBO」という。

投資ファンドからの買収資金の調達の比率が高いと、議決権の過半数以上を保有されてしまい、MBOというより、投資ファンドへの売却というほうが実態に近い。

第1章 MBOとは何か

MBOを実施する企業は成熟段階にあることが多い。成熟段階にあることは、会社の業歴が長く、上場企業として十分な信用・実績もあり、手元に資産もある。

経営陣に大株主であるオーナー一族が含まれていることが多い。議決権が集中していることが多い。TOBで9割を握りやすい。なお、議決権の100%が上場廃止基準としているのは、誤りである。現在では、特定少数株主に株式が集中していること自体が上場廃止基準である。

PER(当該企業の市場での株価の総額である時価総額を会社の純資産総額で割った指標)が1倍を下回る企業が多い。

自己株式の取得を実施して金庫株(議決権がない)のある企業が多い。自己株式は議決権がないため、MBOを決定する株主総会で、相対的に特別決議をしやすい。

MBO実施前の株価に比べてMBO実施後の株価の下落率が、TOPIX平均下落率よりも、大きい企業が多いのは、意外に感じた(ここで下落率を比較したのは、一般的な株価が下落しているため)。

会社の業歴が長く、低成長であるにせよ、業績が安定していて、資産があるということは、逆に、投資ファンドから資金調達しやすいことを意味する。もっとも、本稿では指摘されていないが、そういう属性の企業であれば、あえてMBOをする必要がないのではないかという疑問を感じた。

第2章 経営者はMBOをどのように進めるか

本稿ではMBOを考える契機として、

(1) 事業や企業組織の改革を目指す

(2) 親会社からの売却

(3) 事業承継

(4) 上場維持の負担感、

があると指摘されている。

上記(1)の事業・企業改革だけでMBOを考えるかについては、MBOのコスト的に見て疑問がある。むしろ、経営の自由度を高め、上場維持費用を節約する場合のほうが多いのではないかと推測される。逆にいうと、上場のメリット・デメリットを比較して、経済合理性の観点から、上場しているメリットが少ないと感じる場合であろう。

上記(2)のオーナーが親会社の場合には、MBOの対象企業が子会社という地位を脱して、独立した会社になる。親会社が競業他社への売却を避けたい、MBOを選択するメリットがあると本稿では指摘されているが、私見では疑問がある。現在のような不況・国際化(競業会社が国外の会社である場合)では、単独の小規模の会社での生き残りよりも、同業他社との事業統合(合併など)により、市場でのシェアをある程度握り、スケールメリットを生かしたほうが得策であるし、現に上場企業でも実例が多い。スケールメリットにこだわらない会社としては、特殊な技術・知的財産、得意先などがある場合であろう。

上記(3)について。事業承継の場合、後継者が創業家にいない場合が考えられる。MBOのうち、オーナー(創業家)一族以外の取締役が会社を買収したい場合、雇われサラリーマンの取締役では買収資金がないので、投資ファンドに資金調達を頼ることになる。オーナー一族から取締役が株式を買い取り、親族以外への事業承継ということになる。サラリーマン重役から見れば、会社の買取りということになるが、投資ファンドから資金調達しているため、支配株主が創業家から投資ファンドに変わっただけということになりかねない。