危機管理できる現場力の育成 - 広報・PR・IR全般 - 専門家プロファイル

中村 英俊
株式会社第一広報パートナーズ 代表取締役 広報コンサルタント
東京都
広報コンサルタント

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閲覧数順 2024年04月18日更新

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危機管理できる現場力の育成

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企業の危機管理を考えるうえで、他山の石とすべきケースが先月も起こりました。水産加工大手マルハニチロHDの子会社アクリフーズの工場で製造された冷凍食品から農薬が検出された事件で、1月25日に40代の契約社員の男が逮捕され、何らかの意図をもって混入させたことが明らかになりました。同日夜に行われた会見では両社長の辞任などの厳しい処分に加え、業績の下方修正が発表されました。健康被害の訴えは2800人以上に上っていると報じられており、一従業員の悪意が招いた影響の大きさについて考えさせられます。
事件については、昨年11月13日に異臭がするとの苦情を受けてから、12月29日に自主回収を発表するまで1か月半かかったことや自社製品の安全基準に関する認識の甘さが問題点として指摘されています。12月30日付の新聞紙面には前日の記者会見の様子や自主回収を伝える社告が掲載されましたが、1月8日にも「お詫びとお知らせ」と題した謝罪広告が自主回収の対象となった冷凍食品の一覧が全面15段カラーで掲載されました。報道によると全国紙5紙とブロック紙5紙の計10紙が対象だったようですが、ここまで大がかりな回収広告は目にしたことがありません。おそらく数億円の掲載費用が掛かったのではないでしょうか。
1月9日には、三菱マテリアルの四日市工場で発生した爆発で5人の尊い命が失われるという痛ましい事故が発生しました。12人のけが人も出ています。爆発事故を想定したシミュレーショントレーニングに何度か関わった経験から、事態の推移に注目していましたが、第一報が報じられてから、事故が発生した日に工場長の会見に続き、その翌々日11日には同社の社長による謝罪会見が開かれました。社長会見では「事故原因」、「遺族とのやりとり」、「安全管理の不備」、「社長の責任」の4点に質問が集まったことが記事から伺えます。
爆発は熱交換器のふたを取り外す作業の際に発生したということですが、作業マニュアルはなく、経験則に頼っていたと伝えられています。今回に限らず、国内では過去に何度も爆発事故が発生していますが、そのたびに作業者の知識や経験不足が原因とされるケースが散見されます。
昨年も相次いだ爆発事故の検証記事では、「リスク検討の甘さやマニュアルの不備、リスクの認識不足、異常時の不適切な判断・対応といった、問題が浮かび上がる」(日本経済新聞電子版「相次ぐ化学プラント死亡事故 現場が失った『暗黙知』」 2013年7月16日付)と指摘しています。さらに、「暗黙知を形式知化してマニュアルに落とし込む作業が重要であることは論を俟たないが、暗黙知を伝える場や手段を確保して的確な判断力や危機管理できる現場力の育成も同時におこなわなければならない」とも述べ、日ごろからの製造現場での意識づけの大切さを訴えています。
アクリフーズの前身は、かつて集団食中毒を起こした雪印乳業の冷凍食品部門だったといいます。また、事故のあった三菱マテリアルの工場では過去にも火災や爆発を起こしていたそうです。結果として、どちらのケースも危機管理体制や現場力の育成が不十分だったと言わざるを得ず、過去の苦い教訓も活かされませんでした。
橋本拓志広報コンサルタントTwitter ID:@yhkHashimoto https://twitter.com/yhkHashimoto

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