- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
第二東京弁護士会知的財産研究会『ブランドと法』
商事法務、2010年、本文430頁。
複数の講師(裁判官・弁護士・弁理士などの実務家)による講演録のまとめである。
ブランドに関する法律として、商標法、不正競争防止法、独占禁止法を取り上げている。
今日までに、上記書籍のうち、「ブランドと独占禁止法」の部分を読みました。
独占禁止法に関する一般的説明は、独占禁止法を勉強したことのある人にとっては、やや長いです。
独占禁止法21条に基づく知的財産ガイドラインは商標権には適用されない。
独占禁止法は、供給される商品・役務について、市場画定をおこない、市場に対する悪影響つまり競争制限的効果を考える仕組みである。そして、市場画定の際には、ブランド間競争(異なるブランド間での競争)・ブランド内競争(同じブランド内での競争)にわけて考えるから、指定商品・指定役務に対する商標権を独占禁止法の適用除外とするわけにはいかない。なお、商品・役務の需要側の場合の市場画定も同様である。
講師は上記のようには説明していませんが、私の説明のほうが簡潔・端的で分かりやすいと思われる。
また、流通ガイドラインでは、再販売価格維持はブランド内競争でも違法であるという立場と理解するのが通例であろう。
また、化粧品会社に対する公正取引委員会の審決と、資生堂・富士喜屋の民事訴訟とでは、結論が逆になっているのは周知のとおり。
なお、講師は、いろいろな事例を引き合いに出しているが、結論を明示していない箇所が少なくない。
「商品形態模倣」
自社の商品形態を模倣する他社の商品に対抗する法的手段として、以下のものがある。
1、商標法による商標権(ことに立体商標権)
2、不正競争防止法2条1項1号(周知商品等表示)
肯定例、黒烏龍茶事件(東京地判平成21年12月26日、判例タイムズ1293号254頁)
否定例、正露丸事件(大阪地判平成18年7月27日、控訴審である大阪高判平成19年10月11日)
否定例、ワンカップ大関事件(神戸地判平成9年7月16日、控訴審である大阪高判平成10年5月22日)
否定例、永谷園ふりかけパッケージ事件(東京地判平成13年6月15日)
3、不正競争防止法2条1項2号(著名商品等表示)
4、不正競争防止法2条1項3号(発売後3年以内の商品等形態模倣禁止)
否定例、香酷事件(大阪地判平成16年12月16日)
否定例、アトシステム事件(大阪地判平成21年6月9日)
5、意匠法による意匠権
6、著作権法に基づく著作権(応用美術の論点)
なお、商標法や不正競争防止法における「混同のおそれ」「周知性」「著名性」などの要件を立証するためのアンケート調査は、調査の対象、調査の手法(特に誘導的な質問のしかた)などが恣意的なことが多く、裁判所では、余り重視されていないようである。
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