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河野 英仁
河野特許事務所 弁理士
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対象:特許・商標・著作権

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真正品の並行輸入~特許権者に無断で特許製品を輸入販売することはできるか~

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真正品の並行輸入

特許権者に無断で特許製品を輸入販売することはできるか

2014.1.28 近藤 志津雄

 真正品とは、特許権等を有する権利者によって適法に製造販売された製品のことです。真正品の並行輸入とは、外国及び日本で同一製品に対して特許権等を有する者がいる場合、第三者が外国で購入した真正品を権利者に無断で日本に輸入する行為です。その際、第三者の行為は条文上形式的には権利侵害に該当します(例えば、特許法第2条、商標法第2条)。しかし、裁判所は形式的侵害の検討だけでは並行輸入を行なった第三者に対する権利者の権利行使を認めません。

消尽(しょうじん)
 並行輸入の問題を理解するためには、「消尽」を知る必要があります。消尽とは、権利者が真正品を一度適法に販売した場合、その真正品に関する権利が使い尽くされて消えることです。国内取引では国内消尽、国境を超える取引では国際消尽といいます。権利者が真正品を販売した場合、その後の転売にまで権利者の権利が及ぶとすると、商取引に支障が生じます。そのため、判例及び学説は国内消尽を認めています。

国際消尽
 我が国では、国際消尽について意見が割れています。国際消尽を肯定する場合、日本での権利は消尽し、並行輸入は認められることになります。他方、国際消尽を否定する場合、日本での権利は消尽せず、並行輸入は形式的及び実質的侵害に該当するとされます。国際消尽を否定する場合、権利者に外国及び日本での販売に係る二重の利得を認めることになるため、権利者の保護に傾き過ぎるという意見があります。
 著作権法は国内及び国際消尽を規定しています。そのため、著作物について並行輸入が問題になることはありません。ただし、映画著作物については、配給制度を勘案して消尽は適用されず、その複製物を頒布する権利が規定されています(著作権法第26条)。特許法及び商標法には消尽の規定がなく、権利行使の可否は事案毎に司法の法解釈に委ねられています。

特許の場合
 特許権者から外国で正規品を購入した者に対しては、正規品の販売先等として日本を除外する合意がない限り、並行輸入は合法であるという最高裁判決が出されています(BBS事件:最高裁平成9年(オ)第1988号)。更に本判決は、外国で転売品を取得した者に対しては、上記合意と共に合意内容が正規品に明確に表示されていない限り、並行輸入は合法であると判断しました。最高裁はこの判断根拠を、外国において特許権者により販売された正規品が日本に輸入されることは当然に予想されるので、特許権者は外国での購入者及び転売品の取得者に対して、正規品を支配する権利を黙示的に与えていると解釈しました。

商標の場合
 下級審裁判は並行輸入による商標権侵害の成否を商標の機能により解釈してきました(例えば、パーカー事件:大阪地裁昭和43年(ワ)第7003号)。ここでの商標の機能とは、同一商標が付された商品について、出所の同一性を示す機能と、品質の同一性を示す機能です。最高裁も、商標が付された真正品の並行輸入は、商標の機能を害さない限り、合法であるという判断を下しました(フレッドぺリー事件:最高裁平成14年(受)第1100号)。本判決の特徴は品質の同一性の前提として、商標権者が輸入品及び国内品の品質管理を行い得る立場にあることを示したことです。

外国で真正品を販売した者と、国内商標権者とが異なる場合
 外国で真正品を販売した者と、国内商標権者とが異なっていても、両者が法律的又は経済的に同一視しうる関係にある場合、判例及び学説は並行輸入を認めています。同一視しうる関係とは、例えば外国企業とその日本法人、親会社と子会社、ライセンサーとライセンシー等の関係です。



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