ブログ2013年12月-5 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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ブログ2013年12月-5

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ブログ2013年12月

今月(2013年12月)は、女性の労働問題と少子化問題、高年齢者問題。民事法、商標法、独占禁止法、借地借家法、著作権法、労働法、金融商品取引法、金融法、不動産に関する行政法、宅地建物取引業法、環境法、税法、社会保障法、医事法、薬事法、行政手続法、行政機関情報公開法、行政機関個人情報保護法、行政法、地方自治法、旅館業法、道路交通法、道路運送法、食品衛生法などに関するテーマを中心に、以下のコラムを作りamebro(アメーバ・ブログ)とAllAbout(オールアバウト)に掲載しました。


民事法
大村敦志・道垣内弘人・森田宏樹・山本敬三『民法研究ハンドブック』有斐閣(2000年)
執筆当時は中堅・気鋭であった現在では関東・関西を代表する民法教授らによる民法を研究する方法のハンドブック。
実務家にとっては、リーガル・リサーチに必要不可欠の「判例の読み方」、「判例評釈」の部分が参考になる。
また、「商業雑誌には、ある意味毛色が変わった裁判例が掲載されやすい」や「ある一定の意図をもって、特定の者に有利な法状況を作り出そうとして、当該者に有利な裁判例しか掲載しない」旨の指摘は、実務家には比較的周知の事実ではあるが、あまり知られていない事実なので、有益である。
また、「公式判例と非公式裁判例があるという点について、学説からの批判を受けて問題が解消した」旨の記述があるが、疑問である。未だに同様の状況はあるが、判例データベースの網羅性・インターネットの発達などにより、問題状況が緩和されたと見るべきであろう。


労働法と社会保障法の交錯―女性の労働問題と少子化対策
平成24年に、労働契約法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法が改正されている。
非正規労働に関連する法律として、労働者派遣法、パートタイム労働法がある。非正規労働のうち、青年若年層、女性の労働問題が関係している。
女性の労働問題が少子化問題にリンクしている。これらの問題を解決するためには、労働法・社会保障法の規定の見直しが必要である。
・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
男女雇用均等法については、実質的な男女平等の目的のために、極めてきめ細やかな規定が設けられている。実効あるように、制度を運用すべきである。
・雇用保険法
雇用保険法では、私傷病の場合に傷病手当が支給される。しかし、妊娠出産の場合には手当は支給されない。私傷病の場合ですら手当が支給されるのだから、雇用保険の保険料を免除したうえ、妊娠・出産・産休の場合には手当が支給されてしかるべきである。
なお、雇用保険法の対象外の人については、生活保護法あるいは社会保障法の整備により、同様の仕組みが作られるべきである。
・年金
厚生年金保険法・国民年金法に関しては、妊娠・出産・産休中の期間中について、保険料の免除の措置が講じられてしかるべきである。なお、傷病中の場合には、保険料の減額・免除の制度が既にある。
・妊娠出産費用
また、よく指摘されるが、妊娠・出産の医療費に健康保険が利用できないという矛盾がある。例えば、国民健康保険では、妊娠・出産に要する費用は産婦などがいったん支払い、出産の後に、約40万円が産婦に支給される。しかし、妊娠・出産に関する費用は、あらかじめ全て無償化すべきである。
それに関連して、妊娠・出産・育児の期間中の健康保険料は無償とすべきである。
・育児関連
育児介護法は、育児・介護を理由とする休暇・休日・労働時間短縮・不利益取扱い禁止なを定めている。実効あるように、制度を運用すべきである。
保育園へ入園したくても定員の関係で入園できない保育園の待機児童問題を解消し、待機児童をゼロにすべきである。
義務教育や高校の無償化は、国公立の高校は授業料を無償にし、私立高校は一定額を支給する(ただし、扶養者の年収制限あり)は実現した。
しかし、学校給食費や学校の教材費については有料のままである。これらも無償にすべきである。そうでなければ、真の意味の「高校無償化」とはいえない。
また、児童・学生の学力向上を目的とする補習授業の教員の時間外手当の支給すべきである。
・児童の健康保険
児童の医療費について、現在、地方自治体によって、小学校入学前前まで、小学校卒業までといった違いはあるが、無料としている。
しかし、進んで、児童の医療費は、少なくとも義務教育終了または高校卒業まで、無料とすべきである。
また、児童の健康保険料については、児童の扶養者が負担しているが、児童分については無料とすべきである。
・企業への助成金
以上のような労働法・社会保険の関係の選択科目策を実行するためには、国から企業・健康保険組合などへの助成金が検討されるべきである。
・税法上の扶養控除の拡大
統計によれば、子供1人を大学卒業までに要する生活費・費用・学費などの合計は約1千万円とされている。
これに対して、所得税法上の扶養控除は、原則として、子供1人当たり年間38万円である(ただし、学齢期の場合には、上記金額より扶養控除が増額される)。
扶養控除が年間38万円だとして、所得税・住民税の税率が20%とすると、38万円×20年×0・2=約156万円となる。
すなわち、1千万円のうち、税金による控除があっても、約800万円前後は、親が自己負担で支出しなければならない。
そうすると、ワーキング・プアと呼ばれる層、あるいは生活水準を落としたくない中間層などは、子供を多く生んで育てるよりも、生まないという選択をすることになり、少子化に拍車をかける。
したがって、税法上の扶養控除を大幅に拡大して、税務面でも、子供を産み育てることを支援すべきである。


労働法と社会保障法の交錯―高齢者問題
・高年齢者雇用安定法
平成24年に、労働契約法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法が改正されている。
高年齢者問題に関連する法律として、60歳以上の労働者の継続雇用を定める高年齢者雇用安定法が関係している。企業への助成金の活用も検討されるべきである。
・介護保険
介護保険法は、40歳以上の人は介護保険料を負担している。一定年齢の層だけが保険料を負担するというのは、一見すると受益者負担の原則にかなうように見える。しかし、労働者の人口構成からすると、このような制度は維持しきれないのではなかろうか。
・高額医療費
税法上の医療費控除は年間10万円以上要したときに、10万円を差し引いた当該医療費の額を課税所得から控除できる。
これに対して、健康保険で、「高額医療費」として、健康保険組合から給付を受けることができる金額は年間約百万円以上である。しかし、かような高額医療費をいったん負担できるような富裕層はあまりいないのではないか。制度の拡充が望まれる。
・税法上の扶養控除の拡大
所得税法上の扶養控除は、原則として、1人当たり年間38万円である(ただし、障害者、老親控除の場合には、上記金額より扶養控除が増額される)。
扶養控除が年間38万円だとして、所得税・住民税の税率が20%とすると、38万円×20年×0・2=約156万円となる。
すなわち、税金による控除があっても、約8割は、親の面倒をみる子供が自己負担で支出しなければならない。
そうすると、ワーキング・プアと呼ばれる層、あるいは中流層などは、高年齢者の面倒をみるのに、多大な負担がかかる。
したがって、税法上の扶養控除を大幅に拡大して、税務面でも、高年齢者問題を支援すべきである。
・これらの施策を実行するためには、社会保障法などの規定の見直しが必要である。


商標法に関する最高裁判例
 最判平成23・12・20、アリカ事件
 商標法施行規則(平成13年改正前のもの)別表第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」とは,商業等に従事する企業に対して,その管理,運営等を援助するための情報を提供する役務をいう。

商標登録拒絶事由の商標法4条1項11号
 最判平成20・9・8、つつみのおひなっこや事件
 「つつみのおひなっこや」の文字を横書きして成り,土人形等を指定商品とする登録商標と,いずれも土人形を指定商品とする「つゝみ」又は「堤」の文字から成る引用商標について,
(1)上記登録商標は,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているとはいえないこと,
(2)「つつみ」の文字部分が,土人形等の取引者や需要者に対し,引用商標の商標権者がその出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったとはいえないこと,
(3)「おひなっこや」の文字部分は,全国の土人形等の取引者,需要者には新たに造られた言葉として理解されるのが通常であり,自他商品を識別する機能がないとはいえないこと
など判示の事情の下においては,「つつみ」の文字部分だけを引用商標と比較し,その類否を判断することは許されず,商標の構成部分全体を対比すると,上記登録商標と引用商標は類似しない。
(参照条文)
商標法4条1項11号  当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について使用をするもの

『商標・意匠・不正競争判例百選』(商標法の部分)

商標登録拒絶事由の商標法4条1項8号の「他人の名称の著名な略称を含む商標」
 最判平成17・7・22、国際自由学園事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』10事件
商標法4条1項8号の趣旨は、人・法人等の肖像・氏名・名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。(注)
学校法人の名称である「学校法人自由学園」の略称「自由学園」が,教育及びこれに関連する役務に長期間にわたり使用され続け,書籍,新聞等で度々取り上げられており,教育関係者を始めとする知識人の間でよく知られているという事実関係の下においては,上記略称が学生等の間で広く認識されていないことを主たる理由として,「技芸・スポーツ又は知識の教授」等を指定役務とする登録商標「国際自由学園」が商標法4条1項8号所定の「他人の名称の著名な略称を含む商標」に当たらないとした原審の判断には,違法がある。
(注)商標法4条1項8号の制度趣旨が、出所の混同防止の目的ではなく、人の人格的利益の保護にあると解するのが判例( 最判平成16・6・8、LEONARD KAMHOUT事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』11事件)・通説(特許庁『工業所有権逐条解説』、網野誠『商標』、渋谷達紀『知的財産法Ⅲ』)である。なお、少数説として、田村善之『商標法』参照。
(参照条文)
商標法4条1項8号  他人の肖像又は他人の氏名・名称・著名な雅号、芸名・筆名・これらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)


商標法4条1項8号の「他人の承諾」の有無の判断基準時
 最判平成16・6・8、LEONARD KAMHOUT事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』11事件
商標法4条1項8号の趣旨は、人・法人等の肖像・氏名・名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。(注1)
 他人の肖像又は他人の氏名,名称,その著名な略称等を含む商標について商標登録を受けるために必要な当該他人の承諾の有無を判断する基準時は,商標登録査定又は拒絶査定の時(拒絶査定に対する審判が請求された場合には,これに対する審決の時)である。
 (参照条文)
商標法4条1項8号  他人の肖像又は他人の氏名・名称・著名な雅号、芸名・筆名・これらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
商標法4条3項  第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。 (注2)
(注1)商標法4条1項8号の制度趣旨が、出所の混同防止の目的ではなく、人の人格的利益の保護にあると解するのが判例( 最判平成17・7・22、国際自由学園事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』10事件)・通説(特許庁『工業所有権逐条解説』、網野誠『商標』、渋谷達紀『知的財産法Ⅲ』)である。なお、少数説として、田村善之『商標法』参照。
(注2)商標法4条3項の出願の後における事情としては、例えば、出願後に他人の略称・芸名などが著名になった場合(4条1項8号)、出願後に他人の商標が周知性を獲得した場合(4条1項10号)などである。


商標登録拒絶事由の商標法4条1項15号
 最判平成12・7・11、レールデュタン事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』13事件
 1 商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標」は、当該商標をその指定商品等に使用したときに、当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ、すなわち、いわゆる「広義の混同」を生ずるおそれがある商標をも包含する。
判決は、その理由として、「同号の規定は、周知表示・著名表示へのただ乗り(フリーライド)及び当該表示の希釈化(ダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであること」を挙げている。
2 商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、
① 当該商標と他人の表示との類似性の程度、
② 他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、
③ 当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の関連性の程度、
④ 取引者及び需用者の共通性その他取引の実状
などに照らし、右指等の取引者及び需用者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである。
3 化粧用具、身飾品、頭飾品、かばん類、袋物等を指定商品とし、「レールデュタン」の片仮名文字を横書きした登録商標は、他の業者の香水の1つを表示するものとして使用されている引用商標等と称呼において同一であり、引用商標等が香水を取り扱う業者や高級な香水に関心を持つ需用者に著名であり独創的な商標であって、右指定商品と香水とが主として女性の装飾という用途において極めて密接な関連性を有しており、両商品の需要者の相当部分が共通するなど判示の事情の下においては、商標法4条1項15号に規定する商標に該当する。

 最判平成13・7・6、PALM SPRING POLO CLUB事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』App17事件
洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類等を指定商品とし,「PALM SPRINGS POLO CLUB」の欧文字と「パームスプリングスポロクラブ」の片仮名文字とを上下2段に横書きして成る商標は,他の業者の被服等の商品を表示するものとして使用されている引用商標「POLO」,「ポロ」をその構成の一部に含むものであって,引用商標の独創性の程度は低いものの周知著名性の程度が高く,その指定商品と引用商標の使用されている商品とが重複し,両者の取引者及び需要者も共通しているなど判示の事情の下においては,商標法4条1項15号に規定する商標に該当する。
(参照条文)
商標法4条1項15号  他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から前号までに掲げるものを除く。)


商標法4条1項の登録拒絶事由と除斥期間(商標法47条)
 最判平成17・7・11、RUDLPH VALENTINO事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』40事件
商標法(平成3年改正前のもの)4条1項15号違反を理由とする商標登録の無効の審判請求が商標法(平成8年改正前のもの)47条所定の除斥期間を遵守したものであるというためには,除斥期間内に提出された審判請求書に,請求の理由として,当該商標登録が上記15号の規定に違反するものである旨の主張が記載されていることをもって足りる。
(参照条文)
商標法4条1項15号  他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から前号までに掲げるものを除く。)
商標法第47条1項  商標登録が第3条、第4条第1項第8号、第11号から第14号まで、第8条第1項、第2項、第5項の規定に違反してされたとき、商標登録が第4条第1項第10号若しくは第17号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が第4条第1項第15号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が第46条第1項第3号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない。
2  商標登録が第7条の2第1項の規定に違反してされた場合(商標が使用をされた結果商標登録出願人又はその構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものでなかつた場合に限る。)であつて、商標権の設定の登録の日から5年を経過し、かつ、その登録商標が商標権者又はその構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その商標登録についての第46条第1項の審判は、請求することができない。


商標登録出願拒絶審決取消訴訟係属中の出願分割と原出願の補正は遡及しない
 最判平成17・7・14、eAccess事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』21事件
商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に,分割出願がされ,もとの商標登録出願について指定商品等を削除する補正がされたときには,その補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはない。
(参照条文)
商標法10条1項,商標法10条2項,商標法68条の40第1項,商標法施行規則22条4項,特許法施行規則30条
(商標登録出願の分割)
第10条  商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若しくは再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に限り、二以上の商品・役務を指定商品又は指定役務とする商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる。
2  前項の場合は、新たな商標登録出願は、もとの商標登録出願の時にしたものとみなす。ただし、第9条第2項並びに第13条第1項において準用する特許法 第43条第1項 及び第2項(パリ条約による優先権主張の手続)(第13条第1項において準用する同法第43条の2第3項 において準用する場合を含む。)の規定の適用については、この限りでない。
3  第1項に規定する新たな商標登録出願をする場合には、もとの商標登録出願について提出された書面又は書類であって、新たな商標登録出願について第9条第2項又は第13条第1項において準用する特許法第43条第1項 及び第2項 (第13条第1項において準用する同法第43条の2第3項 において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな商標登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
(手続の補正)
商標法第68条の40  商標登録出願、防護標章登録出願、請求その他商標登録又は防護標章登録に関する手続をした者は、事件が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に係属している場合に限り、その補正をすることができる。
2  商標登録出願をした者は、前項の規定にかかわらず、第40条第1項又は第41条の2第1項の規定による登録料の納付と同時に、商標登録出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。


完成品に組み込まれた部品に付された商標
 最判平成12・2・24、パチスロ機(シャープCPU)事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』25事件
商標の付された電子部品がいわゆるパチスロ機の構成部分である主基板に装着された場合において、右商標はパチスロ機の外観上は視認できないが、パチスロ機の流通過程において、元の外観及び形態を保っている右電子部品とともに、中間の販売業者やパチンコ店関係者に視認される可能性があったなど判示の事実関係の下では、右商標は、右電子部品が主基板に装着されてパチスロ機に取り付けられた後であっても、なお電子部品についての商品識別機能を保持しており、右商標の付された電子部品をパチスロ機の主基板に取り付けて販売する目的で所持し、又は右パチスロ機を譲渡する各行為について、商標権侵害罪(注、現行法は商標法78条の2)が成立する。
(参照条文)
商標法(平成3年改正前のもの)37条2号,商標法(平成5年改正前のもの)78条
(侵害とみなす行為)
商標法第37条  次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一  指定商品・指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品・指定役務に類似する商品・役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二  指定商品又は指定商品・指定役務に類似する商品であって、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
三  指定役務又は指定役務・指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四  指定役務又は指定役務・指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
五  指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
六  指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡・引渡しのために所持する行為
七  指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
八  登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為
(侵害の罪)
商標法第78条  商標権又は専用使用権を侵害した者(第37条又は第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第78条の2  第37条又は第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(両罰規定)
第82条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一  第78条、第78条の2又は第81第1項 三億円以下の罰金刑
二  第79条又は第80条 一億円以下の罰金刑
2  前項の場合において、当該行為者に対してした第81条第2項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
3  第一項の規定により第78条、第78条の2又は第81条第1項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。


小谷武『新・商標法教室』(2013年)
商標法の考え方に即して、裁判例・審決例・実例をもとに、商標法を解説する平易なテキストである。ただし、旧著の改訂版のようで、法改正前の裁判例・審決例も多く取り上げられて、旧法に関する説明が長い箇所も見受けられる。約450頁の本だが、コンパクトにまとめれば、実質2/3くらいの分量になるのではなかろうか。
商標法に関する平易でありながら法的な考え方を披露してくれる新しい本格的な解説書が少ない中、推奨されるべき本である。
上記書籍のうち、以下の部分を読みました。
コラム「パテントアトーニー考」
コラム「®マーク、TMマーク、©マーク」
コラム「一審制? 主な最高裁判決」
コラム「出所識別機能」
コラム「商標を使用しない自由、商標の抹消」
コラム「パロディ商標とコラボ商標」
コラム「シーブリーズ対シーランド事件(不正競争防止法)」
第5章 (商標権の)制度論
1・商標権の発生
加勢大周事件
2・審査主義と先願主義
3・登録要件

(商標登録を受けることができない商標)
第四条1項  次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
十  他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品・役務又はこれらに類似する商品・役務について使用をするもの
十一  当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について使用をするもの
十二  他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。)と同一の商標であって、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの
十五  他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)
十九  他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)
3  第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。

商標法4条1項各号の関係
第10号(周知商標)は、周知性が必要だが、商標登録されていなくてもよい。
第11号(他人の登録商標)は、周知性は必要ないが、登録されていることが要件である。
第15号は、出所混同が生じるおそれが要件である。
第19号は、周知性・不正の目的が要件である。

4・商標権の譲渡とライセンス
5・不使用取消審判と商標の使用
(1) 登録商標と使用商標の同一性
(2) 商標としての使用(商標的使用)か否か
① 意匠的使用
② 付記的表示・小さい使用
③ 素材・機能表示
④ 文脈中の使用
⑤ 表示位置
⑥ 他の目的(商号・題号・著作者名など)での使用
(3) 商品性・役務性
(4) 不使用についての正当な理由の有無
6・商標権侵害
(1) 民事上の責任
(2) 刑事上の責任
(3) 社会的責任
コラム 「真正商品の小分け・再包装・リフォーム・セット商品」、「真正商品の並行輸入」

無効理由のある商標権
特許権の無効理由など、特許権の行使が権利濫用がある場合には、権利濫用の抗弁で対抗できる( 最判平成12・6・11、キルビー特許事件)。
2004年改正で、特許法104条の3が新設され、商標法39条で準用している。
したがって、無効理由のある商標権については、商標法39条・特許法104条の3で対抗できる。
商標法第47条1項  商標登録が第3条、第4条第1項第8号、第11号から第14号まで、第8条第1項、第2項、第5項の規定に違反してされたとき、商標登録が第4条第1項第10号若しくは第17号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が第4条第1項第15号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が第46条第1項第3号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない。
2  商標登録が第7条の2第1項の規定に違反してされた場合(商標が使用をされた結果商標登録出願人又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものでなかつた場合に限る。)であつて、商標権の設定の登録の日から5年を経過し、かつ、その登録商標が商標権者又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その商標登録についての第46条第1項の審判は、請求することができない。
ただし、商標権登録無効審判には5年間の除斥期間がある(商標法47条1項)。
条文上では「無効審判によって無効と判断されるべきもの」と規定している。
無効理由があっても、上記の除斥期間を過ぎた場合には、その間に商標に信用が化体することもあり、無効理由が治癒されたとみられる。
したがって、除斥期間経過後は、商標法39条では対抗できない。
しかし、
商標法第47条1項によれば、
 商標登録が第4条第1項第10号・第17号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、
商標登録が第4条第1項第15号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、
(注)なお、商標法4条1項19号は「不正の目的」が要件となっているから、商標法47条1項で適用除外する必要がない。
商標法47条1項2項に掲げられた条項号以外の違反の場合
には、無効審判請求できる。
したがって、これらの場合には、キルビー抗弁と構成するまでもなく、商標法39条で対抗できると解される。
もっとも、事実関係からみて、商標権の権利行使が濫用に該当する場合には、権利濫用の抗弁を認める余地はある(『商標・意匠・不正競争判例百選』32事件[森善之]、小谷武『新・商標法教室』430~431頁)。