内田勝一・山崎敏彦『借地・借家の裁判例(第3版)』(2010年、有斐閣) - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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内田勝一・山崎敏彦『借地・借家の裁判例(第3版)』(2010年、有斐閣)

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借地・借家の裁判例 第3版 (生活紛争裁判例シリーズ)/有斐閣
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内田勝一・山崎敏彦『借地・借家の裁判例(第3版)』(2010年、有斐閣)

借地借家法に関する裁判例を比較的網羅している。

内田教授が居住権などの業績があるせいか、賃借人寄りの論述の立場であり、裁判例の取捨選択・解説にもそれが反映しているのが、若干気になった。

この点、澤野順彦『判例にみる借地借家の用法違反・賃借権の無断譲渡転貸』(新日本法規、平成24年)と読み比べると、両者の本の立場の違いは明確である。

例えば、借家のペット飼育禁止特約に違反している場合、賃貸借契約を解除できるか、という論点について、内田ほか前著によれば、解除できないという簡易裁判所の裁判例が引用されているのに対して、

澤野によれば、

犬(セパード、マルチーズなど)、猫、鳩などについて、下級審の裁判例がある。

家畜を飼育することによる当該賃貸建物の汚損の度合い、

同一共同住宅に居住する家主・他の賃借人、近隣住民の損害・苦情、

家畜の種類・数、飼育の態様・期間、

建物の使用状況、地域性

などが考慮される。

ペットの鳴き声・悪臭などで同一の共同住宅に居住する家主・他の借家人・近隣の住民に迷惑をかける、建物の構造(柱・床など)・造作(畳、建具など)に汚損・損傷を与えるなどの実害によって、賃貸目的物である住居の経済的価値を減少させる場合、目的物の善管注意義務としての保管義務(民法616条、594条1項、400条)に違反すると解されている。

なお、例えば、鳴き声・悪臭のせいで、他の借家人から苦情が来たり、出て行ってしまうような場合には、当該借家についてのみ、原状回復しても、補いきれない損害が生じるから、単に原状回復すれば良いというものではない。

また、ペットの飼育禁止であるから、もちろん解釈として、ワニなどの猛獣は、家畜より危険性がより強いから、当然に禁止されると解される。

なお、家畜禁止特約は、借地借家法37条に該当せず、有効であると解されている。

また、前記のような損害は、ペット飼育禁止特約が契約にない場合も、同様であると解されるから、相当期間内に是正するよう(飼育するのをやめるよう)に催告して、それでも是正されない場合には賃貸借契約を解除できると解されている。