『重要判例とともに読み解く 個別行政法』、要約など(その2) - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
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『重要判例とともに読み解く 個別行政法』、要約など(その2)

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相続

亘理格・北村喜宣編著 『重要判例とともに読み解く 個別行政法』有斐閣(2013年4月)
各種の行政法分野の法律の概要、最高裁判例が簡便にわかる。
行政訴訟においては、原告適格、処分性、訴えの利益、損失補償の要否、国家賠償請求などが重要な争点となる。

第7章 国土整備法(不動産に関する行政法)
「道路法、河川法、海岸法」
公共用物である道路と河川を対比しつつ、管理者(国家賠償法参照)、使用許可、安全性(国家賠償法2条1項)について、人工公物としての道路、自然公物である河川を論じている。
なお、海岸法に関する最高裁判例も引用されている。
海岸法の占有許可と裁量(最高裁平成19・12・7
 公法上の法律関係確認訴訟の訴えの利益(否定、最高裁平成1・7・4)
道路と公営造物責任(国家賠償法2条1項)
最高裁平成7・7・7(国道43号線訴訟)は否定。
河川水害と公営造物責任(国家賠償法2条1項)
最高裁昭和59・1・26(大東水害訴訟、未改修河川の場合、「改修計画にしたがった過渡的な安全性」論)、最高裁平成2・12・13(長良川水害訴訟、改修済み河川の場合)
損失補償(最高裁大法廷昭和43・11・27(河川砂利採取事件)は憲法29条3項による請求を肯定する余地を認めた。否定例として、最高裁昭和58・2・18(ガソリンスタンド損失補償事件))
「土地収用法」
都市施設用地としての民有地選定の違法性(最高裁平成18・9・4)
 損失補償(最高裁昭和48・10・18
損失補償額算定方法の合憲性(最高裁平成14・6・11)
文化財的価値の損失(最高裁昭和63・1・21(わじゅうてい事件))
「都市計画法」
用途地域決定・地区計画決定について、処分性を否定する従前の最高裁判例昭和57・4・22、最高裁平成6・4・22、最高裁平成7・3・23が、行政事件訴訟法改正後、今後どのように判断されるのかについては、裁判例の集積が待たれる。
小田急鉄道高架訴訟の最高裁平成18・11・2は、都市計画法に基づく都市施設計画決定について処分性を肯定しているので、上記の最高裁判例も黙示的に変更されたと考える余地がある。
都市計画決定の違法性
最高裁平成18・11・2、小田急高架化(本案)事件
都知事が都市高速鉄道に係る都市計画の変更を行うに際し鉄道の構造として高架式を採用した場合において,
(1)都知事が,建設省の定めた連続立体交差事業調査要綱に基づく調査の結果を踏まえ,上記鉄道の構造について,高架式,高架式と地下式の併用,地下式の三つの方式を想定して事業費等の比較検討をした結果,高架式が優れていると評価し,周辺地域の環境に与える影響の点でも特段問題がないと判断したものであること,
(2)上記の判断が,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年改正前のもの)23条所定の環境影響評価書の内容に十分配慮し,環境の保全について適切な配慮をしたものであり,公害対策基本法19条に基づく公害防止計画にも適合するものであって,鉄道騒音に対して十分な考慮を欠くものであったとはいえないこと,
(3)上記の比較検討において,取得済みの用地の取得費等を考慮せずに事業費を算定したことは,今後必要となる支出額を予測するものとして合理性を有するものであることなど判示の事情の下では,上記の都市計画の変更が鉄道の構造として高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるということはできない。
処分性
最高裁昭和57・4・22
 都市計画法8条1項1号の規定に基づく工業地域指定の決定、同条1項3号に基づく高度地区指定の決定は、抗告訴訟の対象とならない。
開発行為の許可申請に関する公共施設管理者の同意拒否の処分性(否定、最高裁平成7・3・23)
周辺住民の原告適格
最高裁平成9・1・28
一 開発区域内の土地が都市計画法(平成四年改正前のもの)33条1項7号にいうがけ崩れのおそれが多い土地等に当たる場合には、がけ崩れ等により生命、身体等に直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は、開発許可の取消訴訟の原告適格を有する。
二 開発行為によって起こり得るがけ崩れ等により生命、身体等を侵害されるおそれがあると主張して開発許可の取消訴訟を提起した開発区域周辺住民が死亡したときは、右訴訟は当然終了する。
周辺住民の原告適格
最高裁大法廷平成17・12・7(小田急高架化判決)
1 都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち同事業が実施されることにより騒音,振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,都市計画法(平成11年改正前のもの)59条2項に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有する。
2 鉄道の連続立体交差化を内容とする都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち同事業に係る東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号。平成10年改正前のもの)2条5号所定の関係地域内に居住する者は,その住所地が同事業の事業地に近接していること,上記の関係地域が同事業を実施しようとする地域及びその周辺地域で同事業の実施が環境に著しい影響を及ぼすおそれがある地域として同条例13条1項に基づいて定められたことなど判示の事情の下においては,都市計画法(平成11年改正前のもの)59条2項に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有する。
3 鉄道の連続立体交差化に当たり付属街路を設置することを内容とする都市計画事業が鉄道の連続立体交差化を内容とする都市計画事業と別個の独立したものであること,上記付属街路が鉄道の連続立体交差化に当たり環境に配慮して日照への影響を軽減することを主たる目的として設置されるものであることなど判示の事情の下においては,付属街路の設置を内容とする上記事業の事業地の周辺に居住する住民は,都市計画法(平成11年改正前のもの)59条2項に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟の原告適格を有しない。
訴えの利益(最高裁平成5・9・10)
 都市計画法29条による開発行為の許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
損失補償(最高裁平成17・11・1)
昭和13年に旧都市計画法(昭和43年法律第100号による廃止前のもの)3条に基づき決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地が,当初は市街地建築物法の規定に基づき,後に建築基準法(昭和43年改正前のもの)44条2項に基づいて建築物の建築等の制限を課せられ,現に都市計画法53条に基づく建築物の建築の制限を受けているが,同法54条の基準による都道府県知事の許可を得て建築物を建築することや土地を処分することは可能であることなど原判示の事情の下においては,これらの制限を超える建築物の建築をして上記土地を含む一団の土地を使用することができないことによる損失について,その共有持分権者が直接憲法29条3項を根拠として補償請求をすることはできない。
「建築基準法」
建築基準法は極めて技術的規定が多い。 『重要判例とともに読み解く 個別行政法』では、単体規定と集団規定について、最高裁判例に関連する限りで説明されている。
違法性の承継、最高裁平成21・12・17
東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条1項所定の接道要件を満たしていない建築物について,同条3項に基づく安全認定(建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める処分。これがあれば同条1項は適用しないとされている。)が行われた上で建築確認がされている場合,安全認定が取り消されていなくても,建築確認の取消訴訟において,安全認定が違法であるために同条1項違反があると主張することは許される。
行政指導と建築確認の留保
最高裁昭和60・7・16、マンション事件
 建築主が、建築確認申請に係る建築物の建築計画をめぐって生じた付近住民との紛争につき関係機関から話合いによって解決するようにとの行政指導を受け、これに応じて住民と協議を始めた場合でも、その後、建築主事に対し右申請に対する処分が留保されたままでは行政指導に協力できない旨の意思を真摯かつ明確に表明して当該申請に対し直ちに応答すべきことを求めたときは、行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで右申請に対する処分を留保することは、国家賠償法1条1項所定の違法な行為となる。
(注)現在は行政手続法33条が適用される。
処分性(肯定、最高裁平成14・1・17、建築基準法42条2項の「みなし道路の指定」)
総合設計と周辺住民の原告適格、訴えの利益
最高裁平成14・1・22
 建築基準法(平成4年改正前のもの)59条の2第1項に基づくいわゆる「総合設計」許可に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は,同許可の取消訴訟の原告適格を有する。
最高裁平成14・3・28
1 建築基準法(平成4年改正前のもの)59条の2第1項に基づくいわゆる「総合設計許可」に係る建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者は,同許可の取消訴訟の原告適格を有する。
2 建築基準法施行令(平成5年改正前のもの)131条の2第2項に基づく認定処分がされた建築物につき同項によりその前面道路とみなされる都市計画道路が完成して供用が開始された場合には,上記処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
建築工事完了により訴えの利益は失われる(最高裁昭和59・10・26)
「土地区画整理法、都市再開発法、土地改良法」
都市再開発法の事業計画決定に処分性を認めた最高裁平成4・11・26と、土地区画整理法の事業計画決定の処分性を否定した最高裁昭和41・2・23(青写真判決)が矛盾するのではないかという疑問が従来ありました。土地区画整理法の事業計画について、処分性を肯定する最高裁平成20・9・10により、実務的には解決しています。
なお、 『重要判例とともに読み解く 個別行政法』では、土地区画整理法について、訴えの利益・無効確認の利益について、判例変更後の適切な判例がないため、土地改良法に関する判例で代用されている。
事業計画決定の処分性
最高裁平成20・9・10、土地区画整理事業の事業計画の決定は,行政処分に当たる。
最高裁平成4・11・26、都市再開発法51条1項、54条1項に基づき第2種市街地再開発事業の事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
土地改良法の事業完成後の訴えの利益(肯定、最高裁平成4・1・24)
土地改良法の事業決定の無効確認の訴えの利益(肯定、最高裁昭和62・4・17)
第8章 環境法
「環境影響評価法(アセス法)」
「水質汚濁防止法」
排水基準、総量規制
上乗せ条例、横出し条例は許される。
地下水汚染対策
規制権限の不行使は国家賠償法上の違法性と評価される。
最高裁平成16・10・15、水俣病国家賠償法事件
国・熊本県が工場排水について、施設の一時使用停止その他の措置を取らなかったことが、 規制権限の不行使を違法と認めた。
「土壌汚染対策法」
土壌汚染対策法は、土地の土壌に蓄積された汚染物質の隔離、除去などを定めている。
調査の契機として、3条~5条の3つのルートがある。
汚染の程度に応じて、指定区域は、要措置区域、形質変更時届出区域の2つに分けられる。
汚染土地の所有者、汚染責任者の措置費用負担義務
汚染土壌の搬出規制
汚染除去の措置命令の義務付け訴訟と原告適格
有毒物質使用特定施設である旨の土地所有者に対する土壌汚染対策法3条2項の通知の処分性(肯定。最高裁平成24・2・3)
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
廃棄物の定義、最高裁平成11・3・10(おから事件)
産業廃棄物処理業の許可と許可取消
産業廃棄物処理施設許可には生活環境影響評価調査制度(ミニ・アセスメント)として自治体の考えを反映させる。
産業廃棄物の不法投棄への対処
・産業廃棄物処理業の不許可処分に対する申請者の抗告訴訟(取消訴訟、義務付け訴訟)
許可行政庁の広汎な裁量、最高裁平成16・1・15
・廃棄物処理施設の許可に対する周辺住民の取消訴訟
・水道水保護条例事件、最高裁平成16・12・24は水道水給水拒否が違法とされた。
・公害防止協定については、協定の条項ごとに個別に有効性を判断する契約説が通説、最高裁平成21・7・10である。
「自然公園法」
自然公園とは、国立公園(国土交通省大臣が指定し、国が管理)、国定公園(国土交通大臣が指定し、都道府県が管理)、都道府県立公園である。
自然公園の指定は、後続の処分を予定していないから、処分性がないと同書は解しているが、誤解であろう。判例は、国民の権利義務を制限する行政行為を処分性があるものと解してきており、自然公園の指定だけで、区域内の原状変更禁止・建築制限などの制限の効果が生じるからである。
利用規制と損失補償(自然公園法64条以下)
自然公園の管理の瑕疵(国家賠償法2条1項)
第9章 教育・文化法
「文化財保護法」
原告適格
最高裁平成1・6・20
静岡県指定史跡を研究対象としている学術研究者は、当該史跡の指定解除処分の取消しを訴求する原告適格を有しない。
文化財保護法と私法上の行為の効力
最高裁昭和50年3月6日
重要文化財の所有者が文化財保護法46条1項所定の国に対する売渡の申出をせずに、重要文化財を第三者に有償で譲渡しても、同条項は国による先買権を定めたにすぎず、国宝保存法13条3項のように主務大臣の許可を得ずに国宝の処分行為を無効とする規定がないから、売買の効力に影響がない(売買は有効である。)。
損失補償
最高裁昭和50・4・11
文化財保護法80条による史蹟名勝天然記念物の現状変更の制限につき損失補償に関する規定を欠くことをもって、直ちに同条が憲法29条3項に違反するとはいえない。
第10章 社会保障法
「生活保護法」
原告適格
最高裁昭和42・5・24、朝日訴訟
 生活保護処分に関する裁決の取消訴訟は、被保護者の死亡により、当然終了する。
保護受給資格
最高裁昭和46・6・29
交通事故による被害者は、加害者に対して損害賠償請求権を有するとしても、加害者との間において損害賠償の責任や範囲等について争いがあり、賠償を直ちに受けることができない場合は、他に現実に利用しうる資力がないかぎり、傷病の治癒等の保護の必要があるときは、生活保護法4条3項により、利用し得る資産はあるが急迫した事由がある場合に該当するとして、例外的に保護を受けることができるのであり、必ずしも本来的な保護受給資格を有するものではない。
最高裁平成13・9・25
生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことは,憲法25条,14条1項に違反しない。
原告適格・保護の水準
最高裁大法廷昭和42・5・24、朝日訴訟
現実の生活条件を無視して著しく低い水準を設定するなど、健保・生活保護法の目的・趣旨に照らし、裁量権を濫用・逸脱した場合にのみ違法となる。
(注)実務では、要保護者の自動車の保有は、通勤用、身体障害者の通院・通所・通学用にしか認められていない。預預金については、後記のとおり議論がある。
生活保護の補足性
最高裁平成16・3・16
 1 生活保護法による保護を受けている者が同法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護金品又はその者の金銭若しくは物品を原資としてした貯蓄等は,生活保護法4条1項にいう「資産」又は同法(平成11年改正前のもの)8条1項にいう「金銭又は物品」に当たらない。
2 生活保護法による保護を受けている者が,同一世帯の構成員である子の高等学校修学の費用に充てることを目的として満期保険金50万円,保険料月額3000円の学資保険に加入し,保護金品及び収入の認定を受けた収入を原資として保険料を支払い,受領した満期保険金が同法の趣旨目的に反する使われ方をしたことなどがうかがわれないという事情の下においては,上記満期保険金について収入の認定をし,保護の額を減じた保護変更決定処分は,違法である。
最高裁平成20・2・8
 生活保護を受けている者が,保護を受け始めて間もない時期に,外国への渡航費用として約7万円という金額の支出をすることができたなど判示の事実関係の下においては,同人が,そのころ少なくとも上記渡航費用を支出することができるだけの額の,本来その最低限度の生活の維持のために活用すべき金銭を保有していたことが明らかであり,上記渡航費用の金額を超えない金額を,上記支出をした月の分の生活扶助の金額から減じ,後の月の分の生活扶助から差し引く旨の保護変更決定は,適法である。
生活保護の基準・程度
最高裁平成24・2・28 (同旨、最高裁平成24・4・2)
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定は,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,その改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえず,生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しない。
(1)ア 上記改定開始の5年前には,老齢加算の対象となる70歳以上の者の需要は収入階層を問わず60ないし69歳の者の需要より少なく,70歳以上の単身者に対する老齢加算を除く生活扶助額は70歳以上の低所得単身無職者の生活扶助相当消費支出額を上回っていた。
 イ 上記改定開始の20年前から2年前までの間における生活扶助に関する基準の改定率は消費者物価指数及び賃金の各伸び率を上回っており,上記改定開始の21年前から被保護勤労者世帯の消費支出の割合は一般勤労者世帯の消費支出の7割前後で推移していた。
 ウ 上記改定開始の24年前と同4年前とを比較すると,被保護勤労者世帯の平均において消費支出に占める食料費の割合は低下していた。
(2)ア 上記改定による老齢加算の廃止は,3年間かけて段階的な減額を経て行われた。
 イ 上記改定開始の5年前には,老齢加算のある被保護者世帯における貯蓄の純増額は老齢加算の額と近似した水準に達しており,老齢加算のない被保護者世帯における貯蓄の純増額との差額が月額5000円を超えていた。
(3) 上記改定は,専門家によって構成される専門委員会が統計等の客観的な数値等や専門的知見に基づいて示した意見に沿ったものであった。
※生活扶助相当消費支出額:消費支出額の全体から,生活扶助以外の扶助に該当するもの,被保護世帯は免除されているもの及び家事使用人給料等の最低生活費になじまないものを控除した残額
「児童福祉法」
保育所での児童の保育
児童福祉法第24条  市町村は、保護者の労働又は疾病その他の政令で定める基準に従い条例で定める事由により、その監護すべき乳児、幼児又は第39条第2項に規定する児童の保育に欠けるところがある場合において、保護者から申込みがあったときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない。ただし、保育に対する需要の増大、児童の数の減少等やむを得ない事由があるときは、家庭的保育事業による保育を行うことその他の適切な保護をしなければならない。
2  前項に規定する児童について保育所における保育を行うことを希望する保護者は、厚生労働省令の定めるところにより、入所を希望する保育所その他厚生労働省令の定める事項を記載した申込書を市町村に提出しなければならない。この場合において、保育所は、厚生労働省令の定めるところにより、当該保護者の依頼を受けて、当該申込書の提出を代わって行うことができる。
保育所へ入所したくても入所できない「待機児童問題」が社会問題となっている。予算・保育士など人的整備などとの関係はあるが、児童福祉法24条1項本文では、基準に定める児童を保育所に入所させなければならないとしている。したがって、「待機児童問題」を解消することが、少子化問題、女性の労働問題などを解決する方策である。
保育所廃止条例の制定と処分性
最高裁平成21・11・26
市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為は,当該保育所の利用関係が保護者の選択に基づき保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり,現に保育を受けている児童及びその保護者は当該保育所において保育の実施期間が満了するまでの間保育を受けることを期待し得る法的地位を有すること,同条例が,他に行政庁の処分を待つことなくその施行により当該保育所廃止の効果を発生させ,入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して,直接,上記法的地位を奪う結果を生じさせるものであることなど判示の事情の下では,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
児童養護施設職員の監護義務違反と国家賠償法
最高裁平成19・1・25
1 都道府県による児童福祉法27条1項3号の措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の長及び職員は,国家賠償法1条1項の適用において都道府県の公権力の行使に当たる公務員に該当する。
2 国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても,当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うときは,使用者は民法715条に基づく損害賠償責任を負わない。
「健康保険法」
被保険者(健康保険の加入者)の資格(最高裁平成16・1・15)
混合診療の禁止(最高裁平成23年10月25日)
診療内容と個人情報保護の訂正請求(否定、最高裁平成18・3・10)
市区町村(保険者)と国民健康保険審査会との関係(機関訴訟の可否)(否定、最高裁昭和49・5・30)
健康保険料の算定(最高裁平成18年3月1日(旭川市国民健康保険料条例事件))
保険医療機関の指定の許否(最高裁平成17・9・8は裁量権を肯定し、適法とした)
「国民年金法」
最高裁平成7・11・7
国民年金法(昭和六〇年改正前のもの)に基づく年金の受給資格を有する者が国に対して未支給年金の支払を求める訴訟の係属中に死亡した場合には、別途、遺族が社会保険超長官(当時)に請求をし支給決定を求めるべきで、右訴訟は当然に終了し、同法19条1項所定の者がこれを承継するものではない。
最高裁平成16・12・20
不法行為により死亡した被害者の相続人がその死亡を原因として遺族厚生年金の受給権を取得したとき(厚生年金保険法59条)は,当該相続人がする損害賠償請求において,支給を受けることが確定した遺族厚生年金を給与収入等を含めた逸失利益全般から控除すべきである。
最高裁昭和57・12・17
 国民年金法20条の規定(他の年金などとの併給調整)は、憲法14条違反の問題を生じない。
最高裁平成19・8・28
 1 (1)国民年金法(平成元年改正前のもの)が,同法7条1項1号イ(昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条2項8号)所定の学生等につき,国民年金の強制加入による被保険者とせず,任意加入のみを認めることとし,これに伴い上記学生等を強制加入による被保険者との間で加入及び保険料納付義務の免除規定の適用に関して区別したこと,及び(2)立法府が,平成元年法律第86号による国民年金法の改正前において,上記学生等につき強制加入による被保険者とするなどの措置を講じなかったことは,憲法25条,14条1項に違反しない。
2 立法府が,平成元年に国民年金法の改正前において,初診日に同改正前の同法7条1項1号イ(昭和60年改正前の国民年金法7条2項8号)所定の学生等であった障害者に対し,無拠出制の年金を支給する旨の規定を設けるなどの措置を講じなかったことは,憲法25条,14条1項に違反しない。
「医療法・医師法」
最高裁平成19・10・19
医療法(平成18年改正前のもの)7条(現行の医療法では30条の4)に基づく病院の開設許可の取消訴訟につき,同病院の開設地の市又はその付近において医療施設を開設し医療行為をする医療法人,社会福祉法人及び医師並びに同市内の医師等の構成する医師会は,原告適格を有しない。
最高裁平成17・7・15
医療法(平成9年改正前のもの)30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
行政処分(指定)の撤回と法律の根拠
最高裁昭和63・6・17
優生保護法(現在は母体保護法)14条1項による指定を受けた医師が、虚偽の出生証明書を発行して他人の嬰児をあっせんするいわゆる実子あっせんを長年にわたり多数回行ったことが判明し、そのうちの一例につき医師法違反等の罪により罰金刑に処せられたため、右指定の撤回により当該医師の被る不利益を考慮してもなおそれを撤回すべき公益上の必要性が高いと認められる場合に、指定権限を付与されている都道府県医師会は、右指定を撤回することができる。
「薬事法」
最高裁昭和41・7・20
 一 薬剤師について、厚生大臣の免許のほかに、薬局の開設に対し許可または更新の制度を設け、業務の遂行を規制することは、憲法第22条に違反しない。
二 調剤の規制上、薬剤師と医師について異なる取り扱いをすることは、憲法第14条に違反しない。
最高裁平成25・1・11
 薬事法施行規則15条の4第1項1号(同規則142条において準用する場合),159条の14第1項及び2項本文,159条の15第1項1号並びに159条の17第1号及び2号の各規定は,一般用医薬品のうち第一類医薬品及び第二類医薬品につき,店舗販売業者による店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法(インターネット通信販売)による販売又は授与を一律に禁止することとなる限度において,薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である。
第11章 条例
「まちづくり条例」
法律と条例の二重規制、上乗せ条例などが問題となる。
・水道水給水拒否、水道法15条1項の「正当な理由」
水道水の給水拒否したことが適法とされた例として、最高裁平成11・2・11、
 違法とされた例として、最高裁平成1・11・8武蔵野市マンション給水拒否事件
「公の施設(利用)条例」
地方自治法244条との関係が問題となる。
最高裁平成7・3・7
 一 公の施設である市民会館の使用を許可してはならない事由として市立泉佐野市民会館条例(昭和三八年泉佐野市条例第二七号)七条一号の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」とは、右会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、右会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であり、そう解する限り、このような規制は、憲法21条・地方自治法244条に違反しない。
二 「E委員会」による「関西新空港反対全国総決起集会」開催のための市民会館の使用許可の申請に対し、市立泉佐野市民会館条例(昭和三八年泉佐野市条例第二七号)7条1号が使用を許可してはならない事由として定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」に当たるとして不許可とした処分は、当時、右集会の実質上の主催者と目されるグループが、関西新空港の建設に反対して違法な実力行使を繰り返し、対立する他のグループと暴力による抗争を続けてきており、右集会が右会館で開かれたならば、右会館内又はその付近の路上等においてグループ間で暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ、その結果、右会館の職員、通行人、付近住民等の生命、身体又は財産が侵害される事態を生ずることが客観的事実によって具体的に明らかに予見されたという判示の事情の下においては、憲法21条、地方自治法244条に違反しない。
水道給水事業
最高裁平成18年7月14日
 1 普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は,同条例が上記水道料金を一般的に改定するものであって,限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく,同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないという事情の下では,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
2 普通地方公共団体の住民ではないが,その区域内に事務所,事業所,家屋敷等を有し,当該普通地方公共団体に対し地方税を納付する義務を負う者など住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用について,当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは,地方自治法244条3項に違反する。
3 普通地方公共団体が営む水道事業の水道料金を定めた条例の改正により,当該普通地方公共団体の住民基本台帳に記録されていない別荘に係る給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金の3・57倍を超える金額とすることなどを内容とする水道料金の増額改定が行われた場合において,上記の別荘に係る給水契約者の基本料金が,当該給水に要する個別原価に基づいて定められたものではなく,給水契約者の水道使用量に大きな格差があるにもかかわらず,別荘以外の給水契約者(ホテル等の大規模施設に係る給水契約者を含む。)の1件当たりの年間水道料金の平均額と別荘に係る給水契約者の1件当たりの年間水道料金の負担額がほぼ同一水準になるようにするとの考え方に基づいて定められたものであることなど判示の事情の下では,上記の水道料金の改定をした条例のうち別荘に係る給水契約者の基本料金を改定した部分は,地方自治法244条3項に違反するものとして無効である。
普通河川と条例
最高裁昭和53・12・21
 いわゆる普通河川の管理について定める普通地方公共団体の条例において、河川法がいわゆる適用河川又は準用河川について定めるところ以上に強力な河川管理の定めをすることは、同法に違反し、許されない。