“ブラック企業”と“ホワイト企業”に境目はあるか?
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“ブラック企業”という言葉、ポピュラーなものとしてすっかり定着してしまいました。この反対語はたぶん“ホワイト企業”だと思いますが、こちらを耳にする機会は少ないように感じます。
ネットで“ホワイト企業”を調べてみると、それなりにいろいろな情報が出てきました。やはり基本的には優良企業といわれる会社に関する事柄ばかりです。“ホワイト企業ランキング”というようなものもありましたが、その中身は「新卒の離職率が低い企業」のランキングでした。確かにすばらしいことには違いありませんが、これをもって“ホワイト企業”と言いきって良いのだろうか・・・。少々疑問に感じてしまいました。
私もいろいろな会社とお付き合いさせて頂き、みんなそれなりに優良企業ですが、「ではそれがホワイト企業か?」と問われると、必ずしも肯定できることばかりではありません。いろいろな理由で辞める人たちはいるし、それは必ずしも良い辞め方ばかりではありません。程度の差はありますが、どんな会社でもハードワークはあります。法律的にもすべての会社が制限速度以内で走っているともいえません。
“ブラック企業”といわれてしまうような会社は、確実に存在するだろうと思います。会社と社員の間で、常識では考えられないような主従関係を強いる会社の話は確かに耳にします。
ただ、逆に“ホワイト企業”といわれると、これはこれでなかなか定義するのが難しいと思います。どんな条件ならホワイトなのかということが、あまりにも抽象的でなおかつ複合的です。
例えば
「給料が高くて人は辞めないけど、労働法規にルーズな会社」
「人間関係は和気あいあい、ストレスがないけど給料が安い会社」
「知名度があって雇用も業績も安定しているけど激務の会社」
「仕事は面白いが、業績が悪くていつ潰れるかわからない会社」
みんなある点ではブラックですが、ある点に限定してみれば良い会社でホワイトともいえます。
ただ、このように少しでも危うさがあるような会社、悪意があるのかないのか何とも言えないような会社は、きっと今はすべてブラック企業に分類されているのだと思います。結構厳しい基準だなぁと思います。
私は“ブラック企業”を擁護するつもりは全くありません。そんな会社は消えてなくなれ!と思います。ただ、こうやって両面から見ると、“ホワイト企業”と言われるには、相当にハードルが高いと感じます。もしも自分が相応な規模の会社の経営者だったとして、その会社が“ホワイト企業”と呼ばれるようにできるかどうか・・・あまり自信がありません。
“ブラック企業”は、そのブラックの中身を冷静にじっくり見る必要があるように思います。そうでないと、世の中の会社はみんなブラック企業になってしまいます。それでは経営者たちはあまりにもかわいそうだし、働く人たちにとっても、夢や希望が無くなってしまうように感じます。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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