(続き)・・先週インターネットのニュースに、「米国でトランス脂肪酸を食品に用いることを原則禁止に」という記事がありました。米国食品医薬品局(FDA)が、トランス脂肪酸は動脈硬化を促進して心臓病のリスクを高くするので、食品への使用を原則として禁止しようと宣言したのです。
トランス脂肪酸とは、通常の脂肪酸の構造が「シス型」であるのに対して、自然界にはごく少量しか存在しない「トランス型」の構造をとる脂肪酸で、マーガリンや揚げ油のショートニングなどに多量に含まれています。植物油は元々液体ですが、工業的に水素添加などを行なうと半固形化し、化学的に安定化するとともにトランス脂肪酸の割合が大幅に増加します。
マーガリンは動物性油脂であるバターに比べ、コレステロールが少ないなどの理由からヘルシーであると考えられた時期がありましたが、1970年代以降むしろ動脈硬化やアレルギー、発ガンなどを促進するという研究が相次ぎ、欧米各国ではすでに規制の動きが広がりつつあります。
これとは対照的に、我が国ではトランス脂肪酸を規制しようという動きはほぼ皆無で、マーガリンはもとより飲食店などで用いるショートニングなどのトランス脂肪酸は、まさに野放しの状態です。ただ米国で事実上の禁止という扱いになれば、日本にもその影響が確実に現れるはずです。米国ほどではないにせよ何らかの規制が入った場合には、健康上の恩恵は決して小さくないと考えられます。
さて今回からは10月より開始した新メニューに関して、一つずつ詳しく解説してまいります。
① 分子整合栄養医学に基づく検査、及びサプリメント
○微量栄養素の欠乏に起因する様々な健康障害
疲れが取れない、イライラする、息切れ、冷え、眩暈、憂うつ感、ひどい肩凝りなど様々な体調不良に見舞われて、医療機関を受診する方が増えています。検査をしても大抵は大きな異常がなく、「ストレスでしょう」などと医師に言われて症状を軽減させるような薬を出されるのが一般的です。
このような一見して原因の曖昧な症状の多くが、ビタミンやミネラルなど「微量栄養素」の欠乏によるものであることが、最近の研究で明らかにされてきました。一例として心療内科でメジャーな「不安神経症」は、一般的に心理的なストレスや葛藤などが原因とされていますが、別の側面では、これら微量栄養素やタンパク質の不足に起因する場合があることが判明したのです。
不安神経症の症状の一つとして「ひどく不安になる」といったものがあります。さて不安神経症では、なぜ強い不安を感じるのでしょうか。うつ病や不安神経症などの疾患では、セロトニンという神経伝達物質が著明に減少することが分かっています。セロトニンは「気持ちを前向きにする」とか「精神的に安定する」といったことに関係していますが、セロトニンが減ると心が不安定になり、強い不安を感じるのです。
セロトニンはアミノ酸の一種であるトリプトファンを原料として作られます。ここでトリプトファンからセロトニンに化学変化させるに必要な物質として、鉄、亜鉛、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンC、マグネシウムなどが関係しています。セロトニン以外にもドーパミンなど重要な神経伝達物質があり、やはりこれらの栄養素が大きな役割を果たしています。
そのため鉄や亜鉛、ナイアシン、ビタミンB6、そしてトリプトファンなどの栄養素が不足すると、これら神経伝達物質の減少を通して神経機能が障害され、強い不安感や憂うつ感、体のだるさ、動悸など様々な症状に見舞われます。別の見方をすると、アミノ酸やビタミン、ミネラル類をしっかり摂取することがたいへん重要なのです。
○ビタミンやミネラル、アミノ酸の欠乏に伴う主な症状
※ビタミンB群欠乏:倦怠感 憂うつ感 脚気 不眠・悪夢 集中力低下
情緒不安定 口内炎 音への過敏など
※鉄欠乏:疲れやすい 動悸 息切れ 爪の扁平化 不眠 めまい 立ちくらみ
耳鳴り 肩凝り 頭痛 憂うつ感 月経過多など
※亜鉛欠乏:肌荒れ 脱毛 血糖値上昇 風邪をひきやすい 味覚障害
性欲低下 爪の白斑 傷の治りが悪い 情緒不安定など
※アミノ酸欠乏:浮腫 倦怠感 肌荒れ 風邪をひきやすい 貧血
憂うつ感 体力・筋力低下など
○「分子整合栄養医学」・・栄養状態を向上させ病気の治療や予防に威力を発揮
米国やドイツなどでは近年、栄養をベースにした医療に取り組む医師が増加してきています。うつ病をはじめとした精神疾患、高血圧などの生活習慣病、心臓病や血管性疾患、アレルギー疾患、ガン、各種難病などに於いて、アミノ酸や微量栄養素を充分に摂取することを重要視した最新の治療法として、「分子整合栄養医学(オーソモレキュラー・メディスン)」がたいへん注目を集めています・・(続く)
蒲田よしのクリニック(内科)
吉野 真人
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このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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病気を治したり予防するにあたり、いちばん大切なのは、ご本人の自然治癒力です。メンタルヘルスを軸に、食生活の改善、体温の維持・細胞活性化などのアプローチを複合的に組み合わせて自然治癒力を向上させ、心と身体の両方の健康状態を回復へと導きます。
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