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早わかり中国特許
~中国特許の基礎と中国特許最新情報~
2013年12月13日
執筆者 河野特許事務所
弁理士 河野英仁
(月刊ザ・ローヤーズ 2013年10月号掲載)
第29回 中国特許民事訴訟の基礎(第2回)
(3)時効の中止
訴訟時効期間の最後の6ヶ月内に、不可抗力またはその他の障害により、特許権を行使できない場合、訴訟時効は中止される。そして時効中止の事由がなくなった日から、訴訟時効期間は継続して計算される(民法通則第139条)。すなわち、時効の最後の6月以内に地震等が発生し不可抗力により特許権を行使できない場合、訴訟時効が中止される。また以下に示す「その他の障害」に該当する場合も訴訟時効は中止される(司法解釈[2008]第11号第20条)。
①権利が侵害された民事行為能力のない者、民事行為能力に制限のある者で、法定代理人のない者、または法定代理人が死亡、代理権を喪失、行為能力が喪失した場合
②相続開始後に相続人または遺産管理人が確定していない場合
③権利人が義務人またはその他の者により制御され、権利主張ができない場合
④その他、権利人が権利主張を行うことができない客観的情況が存在する場合
(4)時効の中断
訴訟時効は、訴えを提起することにより、当事者の一方が要求を提出し、または義務の履行を承諾することにより、中断される(民法通則第140条)。すなわち、当事者の一方が人民法院へ訴訟を提起、または警告を行うことにより訴訟時効期間が中断する。
ここで、「当事者の一方が要求を提出」とは司法解釈[2008]第11号第10条に規定する以下の2つの形態をいい、訴訟時効が中断する。
司法解釈[2008]第11号第10条
(1)当事者の一方が相手方当事者に権利主張文書を直接送付し、相手方当事者が文書上にサイン、押印したまたはサイン、押印はしていないが、その他の方式で相手方当事者が当該文書を受け取ったことを証明できる場合。
(2)当事者の一方が郵便送付または電子データ送信方式で権利を主張し、相手方当事者がその郵便物または電子データを受け取ったまたは受け取り得た場合。
司法アプローチだけではなく、行政アプローチ、すなわち特許権者が特許管理業務部門に処理を申請した場合も時効は中断される(司法解釈[2008]第11号第14条)。
司法解釈[2008]第11号第14条
権利者が人民調解委員会及びその他の合法的に民事紛争関連解決の権力を有する国家機関、事業単位、社会団体等の社会組織に相応の民事権利の保護を求めた場合、訴訟時効は請求が提出された日より中断されるものとする。
なお、訴訟時効期間は、中断の時からあらためて計算される。例えば、警告を行った場合、警告を行った日からあらためて2年の期間が起算される。
(5)時効の抗弁
訴訟時効の期間を徒過しても、当事者が自由意志で履行する場合、その履行は訴訟時効の制限を受けない(民法通則第138条)。従って、特許権侵害の被告となった場合は、時効期間を計算し、必要に応じて訴訟時効抗弁を行うことが必要である。当事者が訴訟時効抗弁を提出しない場合、人民法院は訴訟時効問題についての釈明及び訴訟時効の規定を適用した裁判を行ってはならないとされている(司法解釈[2008]第11号第3条)。当事者が一審期間において訴訟時効抗弁を提出することなく、二審段階において初めて時効抗弁を行った場合でも、原則として人民法院はこの訴訟時効抗弁を認めない(司法解釈[2008]第11号第4条)。従って、被告側としては、一審の段階から時効について検討を行っておくことが重要となる。
→続きは、月刊ザ・ローヤーズ10月号をご覧ください。
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