- 榎並 慶浩
- リーンアカウンティングジャパン 代表
- 東京都
- 税理士
対象:財務・資金調達
前回のコラムで、資金繰り表は入金・出金を分かりやすく把握するため、
種類別にまとめて作成すべきというお話をしました。
しかし、種類別にまとまっていればそれでいいかというと、そういうわけでも
ありません。
種類別になっていたとして、下記のような項目が並んでいたらどうでしょうか?
A事業収入 10,000千円
A事業支出 △8,000千円
B事業収入 5,000千円
B事業支出 △4,500千円
借入による調達 3,000千円
借入の返済 △500千円
経費支払 △300千円
収支 +4,700千円
最終的な収支は分かりますし、個別の事業ごとや借入などの入出金額は把握
できますが、これで資金の流れが把握できるでしょうか?
上記は項目が限られてますが、実際にはもっと多くの項目が並び、かつ日次の
資金繰り表では同様のデータが30日分並ぶわけです。
ちょっと分かりづらいですよね。
そこで、そもそも資金繰り表のフレームワークをしっかり作成する必要があります。
作成する上で、財務3表の一つでもある、キャッシュフロー計算書の構造が参考になります。
キャッシュフロー計算書は、下記3つの大項目から構成されます。
・営業活動によるキャッシュフロー
・投資活動によるキャッシュフロー
・財務活動によるキャッシュフロー
つまり、営業で発生した入出金、投資やその回収で発生した入出金、借入などの財務収支を
まとめたもので構成されているわけです。
資金繰り表はこの通り作らなくてもいいですが(もちろん作ってもいいですが)、
入出金の種類を、少なくとも営業取引によるものとそれ以外に分けたほうが資金の流れが
分かりやすくなります。
また、この大分類ごとに収入合計・支出合計をまとめたうえで、収支を計算する形にすると
より分かりやすくなります。
上記の例で言えば、
A事業収入 10,000千円
B事業収入 5,000千円
営業収入合計 +15,000千円
A事業支出 △8,000千円
B事業支出 △4,500千円
経費支払 △300千円
営業支出合計 △12,800千円
営業収支 2,200千円
借入による調達 3,000千円
借入の返済 △500千円
財務収支 +2,500千円
資金収支 +4,700千円
どうでしょうか?
営業取引によって2,500千円の資金が増え、借入の調達・返済で2,500千円の
資金が増え、結果として資金収支は4,700千円のプラスだったという形です。
会社の好みで経費の前で一旦集計してもいいですね。
今回は営業収支・財務収支ともにプラスでしたが、これを長い目で見ていくと
営業収入がマイナスのときに財務収入で補ったり、投資を財務収入で補ったり、
逆に営業収入の余剰を財務支出に回したりするといった流れが見えてきます。
ちなみに、何が営業で何が財務かというのは、キャッシュフロー計算書の内容に
準拠した形で理解するのが理想的ですが、詳細は後日またコラムで触れるとして、
今のところは自社内で営業取引とそれ以外といったようなくくりで資金の取引を
整理しておけばいいかと思います。
以上、2回にわたって資金繰り表の枠組みについて説明してきました。
なお、説明を容易にするため、取引に着目した整理を行ってきましたが、
実際の資金の流れを把握するためには、もっと細かい分類が必要になってきます。
例えば、手形や小切手を用いた取引など、現金同等物を受け取っておきながら
資金化できていない場合に、資金繰り上の「資金」として見れないという問題が
あります。
この場合、手形受取は資金収支に含めないように計算を行い、回収時点で
反映するようにしなければなりません。
基本的にはエクセルなどの表計算ソフトを用いて管理していくのが一般的かと
思いますので、しっかりと計算式を組んでいくことに留意が必要です。
さて、枠組みが分かったところで、実際にどのように運用していくのか?
次回以降、実際の運用方法や留意点についてお知らせしていきます。
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