多くの会社とお付き合いする中で、会社毎の雰囲気の違いというのはいろいろな部分で感じます。私が良く感じる違いの一つに、「経営者や上司に対する社員の対応」があります。どんな違いかというと、“フラットで差がないイーブンな関係か”、または“何かと上司を持ち上げて特別扱いするような関係か”というところです。
前者は社員の年齢や社歴が若い会社に多く、後者は中堅規模以上で年齢構成が比較的高い、社歴が比較的長いという中のいずれかに当てはまるところが多いようです。ごく簡単に分類すると、前者は俗にいう「さん付け運動」などとは無縁の会社、後者は「さん付け運動」の実施を真剣に検討するような会社、という感じでしょうか。
また、これはあくまで私が感じる傾向ですが、前者は議論や意見交換が活発だが、俗にいう礼儀やマナーにはちょっとルーズ、後者は上意下達、トップダウンの傾向が強く、上に対して物申すような気概はあまりないというように感じます。
お付き合いがある会社の中で、圧倒的に後者の雰囲気のところがあります。上司が寄ってくると社員たちは何となくそわそわしだし、いろいろ気を遣って話しかけます。上司もだからといっていばる訳ではありませんが、そんな感じを当たり前に捉えている様子です。飲み会では上司の特別席があり、周りの人間があれこれと世話を焼きます。ゴルフなどに行っても同じです。まぁ普通の光景といえばそうなのかもしれません。
私はフラットな関係の会社からそうでない会社まで、両極端を見てきましたので、その会社の風土が世間一般でどんな位置づけかは、自分の経験範囲である程度わかりますが、中にいる人たちにはそんな尺度はほとんどないはずです。他社と比べようもないので仕方ありませんが、こんな様子を私から見ると、「ちょっとチヤホヤしすぎじゃない?」などと思ってしまいます。
私自身はあまり権威主義な感じが好きではないので、フラットな関係性の会社には好感を持ちますが、それでもあまりに礼儀知らず、常識知らずでは困ります。組織の統制を考えれば適度なトップダウンも必要です。
一方で、上司に何かとチヤホヤする会社は、上司が自分の身の上に影響力がある相手だと社員が認識しているということです。組織としては機能しているということですし、それはそれで必要なことでしょう。ただこれも行き過ぎると、個人が自律的に考えることをしなくなり、組織の活力を失います。
「あちら立てればこちらが立たず」というところがありますが、中にはフラットな関係を維持しながら礼儀正しい会社もあります。ある会社では、もともと自由な雰囲気がある中で、顧客向けの礼儀を重視した教育をしていった結果、いつの間にか社内でも「親しき仲に礼儀あり」の雰囲気ができていったのだそうです。
好ましい社風を意識的に作るのはなかなか難しいことですが、いろいろ工夫すれば良い面を両立することは可能です。自社なりの方法をいろいろ試してみると良いと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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