インド特許法の基礎(第3回)(2):外国出願に関する情報の通知について(2) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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インド特許法の基礎(第3回)(2):外国出願に関する情報の通知について(2)

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インド特許法の基礎(第3回)(2)

~外国出願に関する情報の通知について(2)

 

                               河野特許事務所 2013年8月9日 執筆者:弁理士  安田 恵

 

 

3.第8条(2)

 

(1)提出書類の具体的内容

 

(1.1)提出すべき書類

 

 審査官の要求に従って提出すべき書類の要否は次の表の通りである。審査官は”Details regarding the search and/or examination report including claims of the application allowed”と述べているが,拒絶されたクレーム及びオフィスアクションも提出しなければならない。

 

 

 

表2 第8条(2)が要求する各提出書類

 

書類

要否

国際調査報告及び国際調査見解書等

拒絶理由通知書

意見書

不要

補正書

不要

引用文献

不要

補正クレーム(後に更なる補正あり)

不要

特許査定の通知書

拒絶査定の通知書

補正クレーム(最終的に確定したクレーム)

 

 

 

(1.2)どの国のオフィスアクションを提出すべきか

 

 審査官の要求内容は概ね統一されているが,どの国のオフィスアクションを提出すべきかについては,3通りの要求パターンがある。

 

<パターン1>

 

 ある審査官は,審査報告において”…filed in all the major Patent offices such as USPTO,EPO and JPO etc.…”と述べ,米国特許庁,欧州特許庁及び日本特許庁等の主要特許庁の情報を提出すべきことを出願人に要求する。

 

<パターン2>

 

 また他の審査官は,審査報告において”…filed in all the major Patent offices…”と述べ,主要特許庁の情報を提出すべきことを出願人に要求する。

 

<パターン3>

 

 更に他の審査官は,審査報告において”…filed in all countries outside India…”と述べ,全ての国の情報を提出すべきことを出願人に要求する。

 

 

 

 パターン1では,米国特許庁,欧州特許庁及び日本特許庁のオフィスアクション等情報を提出すれば足りるように思えるが,”etc.”の記載があるため,主要3カ国の情報で十分かどうか疑義が残る。またパターン2では,主要国の例示が無いが,多くの弁護士は,米国特許庁,欧州特許庁及び日本特許庁に加え,中国及び韓国を加えた主要5カ国の情報を通知すれば良いと考えているのが現状である。パターン3では,出願国数に拘わらず全ての国の情報を例外無く提出しなければならないと解釈できる。

 

 

 

 このように要求内容が微妙に異なり,主要国の解釈も曖昧であるため,どの国の情報を提出すれば良いか,不確かな状態である。

 

 

 

 運用が不確かな状況の中で手続負担を軽減し,必要な情報を提出する対応方法の一例としては,欧州特許庁,米国特許庁,日本特許庁,中国特許庁,韓国特許庁で発行されたオフィスアクションの写し,特許又は拒絶されたクレームを提出しておき,「審査官が必要と考えるのであれば他国のオフィスアクション等を速やかに提出する準備がある」旨を意見書に記載しておく方法がある。万一,審査官が,第8条(2)の要求を満たしていないと判断した場合であっても,追加の審査報告が通知されるため,不足する情報を追加的に提出する機会を確保することができる。

 

 

 

 更に手続負担を軽減したい場合,欧州特許庁,米国特許庁,日本特許庁の主要3カ国のオフィスアクション等の情報を提出することも考えられる。

 

 

 

 なお,上記パターン3の通知があった場合,全ての国のオフィスアクションを提出すべきと考える弁護士もいる。出願人は,特許の重要性と,事務手続負担とを比較考量して,提出すべき書類を決定すべきである。

 

 

 

(1.3)翻訳文

 

 審査官は,オフィスアクション等の情報が英語で記載されていない場合,オフィスアクション等の適切な翻訳文を出願人に要求する。主要3カ国のオフィスアクション等を提出する場合,日本特許庁からのオフィスアクション及びクレームの翻訳を提出することが望ましい。また,主要5カ国のオフィスアクション等を提出する場合,中国及び韓国のオフィスアクション及びクレームの翻訳を提出することが望ましい。ただし,翻訳文は機械翻訳で足りる。適切な翻訳である旨の宣誓書も不要である。また,逐次訳である必要は無く,要点を英訳したものであっても良い。要点としては,新規性・進歩性,及び発明の特許性(規則12(3))に関する審査官の判断が記載されていれば足りる。

 

 

 

 欧州特許庁又は米国特許庁のオフィスアクションの情報が存在している場合,手続負担を軽減するために,非英語のオフィスアクション等の翻訳文提出を保留しておき,「審査官が必要と考えるのであれば他国のオフィスアクション等を速やかに提出する準備がある」旨を意見書に記載しておく方法がある。翻訳文が必要と判断した場合,審査官によって追加の審査報告が通知され,翻訳文の提出機会が確保されると考えられる。

 

 

 

 なお,PCT出願によるインド出願を行った際に作成される国際調査報告書及び国際調査見解書については,WIPOで作成される英語記載の国際調査報告書及び国際調査見解書を提出すれば良い。

 

 

 

(2)提出時期の徒過

 

 外国出願の明細事項と同様,提出期限を徒過した場合,提出時期の要件を満たしていないとして拒絶される場合がある。この場合,所定の手数料と共に嘆願書を提出すれば拒絶理由が解消する(規則137)。特許が認められた後に,外国出願のオフィスアクションを追加的に提出することは認められない点,留意すべきである。

 

(第3回へ続く)

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