遺言で遺産を譲与する際「遺贈」か「相続させる」かで違いがあります。
「遺贈」とは、民法第964条に明確に記されている。(包括又は特定の名義で
、その財産の全部または一部を処分することができる。)
***遺言による財産の無償譲与のことをいい、遺言により財産を与える人を遺贈
者、財産を与えられる人を受遺者といいます。遺留分を侵害する遺贈は当然に無効で
はなく、遺留分を侵害された者からの請求によって、減殺されるにすぎないとされ
ています。
一方、「相続させる」とは、最高裁平成3年4月19日判決で明確にしている。
「相続させる」趣旨の遺言は、正に同条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であ
り、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらに
は審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合
致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一
部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言
において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の
事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生
じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきで
ある。
それでは、「相続させる」遺言のメリットと「遺贈」との違いは何か?
①遺産が土地や建物など不動産の場合、登記申請手続きの際、指定された者が単独
で相続登記が出来る
「相続させる」との遺言の場合には、対象となる不動産の移転登記は相続人単独で
の申請が可能である(他の相続人の遺留分を侵害する場合であっても、この遺言書
により、他の相続人の印鑑証明や同意を得ることなく単独で不動産の所有権移転登
記手続きを行うことが出来ます)が、遺贈の場合は遺言執行者がいる場合は遺言執
行者が行い、遺言執行者がいない場合は他の相続人全員が登記手続きに協力しない限り、訴訟手続によらなければ移転登記が出来ない。
つまり、「不動産を相続させる」と記載していれば他の相続人の同意を得ることな
く移転登記が可能であるのに対し、「遺贈する」と記載されていたため、他の相続
人の印鑑証明が得られない限り単独では遺贈を受けた不動産の移転登記を得ること
が出来ない。
②遺産が農地の場合、「遺贈」と異なり知事の許可がいらない。
「相続させる」との遺言の場合には都道府県知事の許可は不要であるが、遺贈の場
合には都道府県知事の許可が必要となる
③賃借権を相続する場合、賃貸人(所有者)の承諾がいらない。
「遺贈する」遺言の場合は、借地権・借家権を取得するのに賃貸人の承諾が必要と
なります。一方、「相続させる」遺言の場合は、賃貸人の承諾は不要です。
④債権者に対して、登記なくして自己の権利の取得を対抗することができます。
このように不動産の割合が多くを占めるような相続においては(多くの相続事例
のうち不動産の占める割合は70%ぐらい)、遺言書の書き方を十分研究しておく
ことが必要です。
また、登録免許税は、受遺者が相続人でない場合は不動産の価額の20/1000です。受遺者が相続人である場合は不動産の価額の4/1000です。この税率の適用を受けるには申請書に受遺者が相続人であることを証する書面(戸籍謄本)の添付が必要です
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