安愚楽牧場の経営者が逮捕されました。1980年代、わが国では食生活の変化で繁殖牛の不足が問題になり、和牛育成委託ビジネスはニュービジネスとして注目されました。委託オーナー募集の広告を電通が行っていたほどです。民主党代表の海江田万里さんが、PR文を書いていたのもこの時期です。
牧場と言っても一カ所ではなく、全国に40カ所以上あるのですから、高齢者を狙った単純な詐欺事件とは性格が違います。今でも、ヒノキなどの木材オーナーや農地のオーナーを募集するビジネスはあります。株式投資も、特定企業に投資して、利益の一部を配当として受け取るのですからオーナーの一種です。
安愚楽牧場の場合は、80年代のバブル最盛期に多くの人が投資先を探していたとき、和牛オーナーを募集する仕組みは、格好のビジネスでした。実際に、和牛を売って利益を上げ、配当金を多くの人が受け取っています。開業時から20年も時間が経過して、牛肉をめぐる環境も経済環境もすっかり変わってしまいました。
本来なら、配当が難しくなった時点で、委託ビジネスから撤退するのが一番です。ただ、700人近い従業員がいて、牧場施設があり、オーナーへの返済額を考えると、ずるずると騙す方向に進んで行ったと思われます。2000年以降は、他の詐欺事件と同様資金繰りは自転車操業になっていたようです。
企業経営として考えるとき、1つのビジネスモデルを20年以上も同じカタチで続けるのは無理があります。この間には、BSE問題が発生し、海外からの牛肉大量輸入など、環境は変化し続けています。資金のあるうちに、新たなビジネスモデルを導入できなかった、経営者の力量にも問題があります。
そこで、これから起業を考える人には、撤退時期についても真剣に考えることを勧めます。変化の激しい時代ですから、起業時には思いもしなかったことが度々起こります。そのため、期限を区切ってどこまで成長していなかったら撤退するといった方法で、撤退時期をはっきりさせてから起業することを勧めます。
【一言】
起業するときに、撤退時期の話をしますと厭な顔をする起業家は多いです。ただ、起業というと、失敗したときは命までとられるような話をする人がいますが、問題はこの撤退時期をはっきりさせておかないからです。早めに撤退しますと、早めの再度の挑戦も可能です。日本人特有の、一か八かの起業は考えずに、柔らか頭で上手く立ち回ることです。
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