「無気力なリーダー」はどうして無気力になったのか
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ある日の昼食時、前の席にサラリーマンらしき二人組が座りました。同じ部門の先輩と後輩のようです。
どうも自分たちの同僚らしい他のリーダー(仮にAさんとします)の話が始まりました。
後輩:「この間、Aさんの部下のBが『これも調べるんですか?』って聞いてきましたよ」
先輩:「そこ自分で調べなきゃ、できるわけないじゃん・・・。Aがちゃんと指示してないんだろ?」
後輩:「そもそも期限とか、どこまでやるとか、いつもちゃんと指示してないですよね・・・」
先輩:「だいたいやる気がないんだよ。無気力だし・・・」
後輩:「そう見えちゃいますよね」
先輩:「こんなやり方してたらうまくいくわけないんだよなぁ・・・」
一方的な話なので真偽のほどはともかく、お二人の話からすれば、どうもAさんはリーダーとしてやるべきことをやらない、無気力な人のようです。
このリーダーAさんは、なぜそんなにやる気がなくて無気力なんでしょうか?
理由を思いつくままに挙げてみました。
● 本人としては一生懸命やっているつもりだが、周りからはそう見えない。
● もともと能力不足だったのに、過大評価やその他の事情でリーダーにしてしまった。
● リーダーかどうかに関わらず、そもそも無気力でやる気がない人だった。
● 何かをきっかけにして、無気力になってしまった。
本人の能力不足と周囲の見込み違いが大半なのかもしれませんが、私がいろいろな企業の組織改革をお手伝いする中で、「何かをきっかけにした無気力」という問題に行き当たることが、意外に多いと思っています。
この例ほど極端ではなくても、
「やろうとすればできるかもしれないけど、あえて手を出さない」
「直接責任があること以外のよけいなことはしない」
「どうせやっても変わらない」
「そこまで関わる気力はない」
「もうあきらめている」
といった発言、振る舞いを見ることは、どんな組織でも多かれ少なかれあります。
「学習性無気力」といわれるものです。
これに関しての有名な話は「カマスの実験」で、水槽のカマスとエサの間をガラス板で仕切り、カマスがエサを見つけて食べようとしても、ガラス板にぶつかってエサを食べられないことを繰り返すうちに、エサを見ても反応しなくなる。その後ガラス板を外してもカマスはエサを取ろうとせず、「どうせやってもムダだ」ということを学習して行動しなくなってしまいます。
そしてこの解決方法は、「新しいカマスを水槽に入れること」で、彼らは普通にエサを取ろうとし、それを見た“無気力なカマス”は、「なんだ、食べられるのか!」とそれまでの学習から解放されるということです。
「言ってもやってもムダ」という環境にいると、気力は少しずつ低下し、やがて完全な無気力状態になってしまいます。これはカマスも人間も同じです。
この話の中のAさんがどんな状況かはわかりませんが、もしも学習性無気力ならば、“やればできる”、“無気力は損をする”ということを、周りの誰かが見せつけることで改善されることもあるように思います。話していた同僚のお二人にも、できることがあるかもしれません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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