ダメ男しか好きになれない　～境界性パーソナリティ障害　その４～

今回のコラムも前回に続いて、「境界性パーソナリティ障害」を症例をあげてご説明したいと思います。

その前に、「境界性パーソナリティ障害」　とは何か？のおさらいです。
この障害は、
大人になってもパーソナリティが未熟であるがゆえに、感情面で不安定さが露出し、日常生活や対人関係においてトラブルを抱えてしまう障害
です。

では、そもそも　「パーソナリティ」　って何？ということですが、
パーソナリティとは、ある人に特有の認知、行動、感情などの「あり方」のこと。
性格、気質、倫理観、価値観、など、　「その人」　を統合する概念です。

※ただし、このような症状の人がすべて　「境界性パーソナリティ障害」　ではありませんのでご注意ください。

【症例３：ダメ男しか好きになれない】

Bさんは20代後半のフリーター。学生時代から寂しがり屋で、一人になることへの不安がとても強く、「今晩一緒にいてくれるなら」と、その寂しさからゆきずりの男性と一夜を共にしてしまうことが時々ありました。
でも、心の中ではいつも、一生自分のことを大切にして守ってくれる男性の存在を求めています。
ですので、数か月前に行きつけの飲み屋さんで知り合った男性と恋愛関係になり、同棲しようという話になったときは、天にも昇るような幸せな気持ちでした。

「これで私もやっと幸せになれる！」

しかし、同棲を初めてすぐに、彼は会社を辞めてしまいます。その後は就職活動もせずに遊び歩いてばかり。そしてお金がなくなると、Bさんにお金の無心をします。
『またお金・・・』と思いながらも、「絶対こんな生活続けないから。今にでっかい仕事して、すげー金とってくるから」という彼の言葉を信じてBさんはお金を渡し続けています。
「私しか彼の理解者になれない。私がいないと、この人はダメになる」
こんな思いがどうしても消えないのです。

しかし、それから数ヵ月が経ち、Ｂさんの資金も底をついてくると同時に、その彼氏は荷物をまとめて出て行ってしまいました。
原因は他に女性ができたから、でした。
運命の人に、Ｂさんはあっさりと振られてしまったのです。
Ｂさんは、消費者金融に借金をしてでもあなたを支えるから！と泣きついたのですがダメでした。

ひとりになってしまった！
とてつもない不安が再燃したＢさん。またゆきずりの男性と一夜をともにする生活が始まります。
そして、住所も年齢も職業もわからないまま、なりゆきで一晩を一緒に過ごした男性が、そのままＢさんの家に転がり込むような形で次の同棲が始まりました。
「今度の人は絶対に間違いない」と言うＢさんに「でも素性もわからない人と一緒に暮らすなんて無謀だよ！」と友人たちは忠告するのですが、Ｂさんは聞く耳を持ちません。

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恋愛においても、第三者からみると、わざわざ苦しい方に、自分自身を傷つける方に、自らを追い込んでいくように見えるこの障害の方の恋愛パターン。

でも、心のからくりは違っていて、
コントロールが不能なほどの激しい心の動揺に苦しんでいる彼女（彼）たちは、自分の体を犠牲にするような行動をすることで、なんとか気持ちの安定をはかっているのです。
リストカットなどの自傷行為や過食嘔吐などの摂食障害もその１つと言えます。



次回は、症例をいったんお休みして、「境界性パーソナリティ障害の方に自覚はあるか？」と題してコラムをお届けしたいと思います。