「うちの会社は同年齢、同じ社歴でも、年収で最大○百万円の差がつく」というような話をされることがあります。能力主義や実績主義であるということを強調したいのだと思います。
私が人事制度検討に関わる中でも、主に経営層から「もっと差がつくような制度にしたい」という要望が出て来ることがあります。「力のある者に厚く処遇したい」「結果を出している者に報いる制度にしたい」と言われることが多いです。
この気持ちは理解できますし、俗に言われる「悪平等」があるのだとすれば、それは良い事ではありません。ただ、単に差がつくようになれば、それが解消されるわけではありません。
まず、人事制度における評価というのは、どんな精緻な仕組みであっても、その差が本当に適切なのかは、結局は誰も説明できません。あくまで自社の価値観をもとに作った、今の仕組みで評価するとそういう結果になったというだけです。
100%の納得にはなかなかならないし、差がつく度合が大きいほど、よほど納得できる説明が得られない限り、社員の意欲は下がっていきます。これは評価が低い者だけでなく、高評価を受けた者さえも、その評価が継続しないと不満を溜めていくというようなことがあります。
人事制度の本来の目的は「組織全体の業績を上げるために、人的資源を活性化すること」です。会社にはいろいろな人がいます。競争心がある人もない人も、熱い人も冷静な人も、出たがりも控えめも、派手も地味も千差万別です。そしてそのすべての人が会社としての戦力です。
ともすれば「差がつく」という形で競争心をあおることが、万人のやる気につながるように思いがちですが、競争が得意な人も苦手な人も、他人との差に興味が強い人も弱い人もいます。
もしも競争の苦手な人が多数の職場ならば、競い合うより落ち着いて協力し合う環境を作った方が組織として活性化するかもしれません。あえて「差をつけない」という仕組みの方が望ましいという場合もあり得ます。
自社の特性をしっかり見つめた上で、それに基づいた仕組みで評価を行い、その結果として差がついたのならば良いと思いますが、初めから「差をつけること」が目的ではありません。
企業風土、仕事の進め方のスタイル、社員の性格傾向などの見極めも行った上で、本来の目的を念頭に置いた上で評価のしかたを考えると良いと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
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