高速増殖炉「もんじゅ」の不具合がニュースになるたびに、役所の新規事業を思い出します。わが国では、50基以上の原発が稼動していましたから、そこから排出される使用済みプルトニウムの量は膨大になります。そのプルトニウムの処理を目的に「もんじゅ」は建設されました。
使用済み燃料を原料として、増殖炉は稼動しますから、夢のエネルギー施設といわれました。ただ、1991年の運転開始以来、22年の年月が経ちますが、一度として燃料を処理したことはありません。現在では、これまでに1兆円を越える投資をしてきたのだから、今さら止めることができない事情で動かそうとしています。
この場合、初期段階での事業設計に大きな誤りがあったと考えられます。似たような事例は、起業においてはいくらでもあります。神奈川県で弁当専門店を開業した40代男性は、周辺地域での競合店も調査して、コンビニ店も弁当店もないことで開業しました。ところが、その周辺には宅配サービスを行っている、生協や無店舗業者がいることに開業後気付きました。
本来なら、見込み違いの大きな失敗に気付いたとき廃業するとよかったのですが、多額の初期投資をしていたことで開業を続けてずるずると赤字の垂れ流しです。人ごとならば冷静に判断できますが、自分が開業したときは止めるに止められずに、ビジネスを引きずる人が少なくありません。
結局、男性は開業後1年で店を畳みました。直ぐの時点で止めているとそれほど大きな赤字にはならなかったと思います。会社勤めに切り替え、今は借金を返済する毎日です。授業料としては、相当高くつきましたが、再度の起業を目指す毎日です。失敗した後から相談するよりは、起業する前に相談する方が安上がりで、得るものも多いはずです。
【一言】
一旦投資すると、その後止められずにずるずると投資を重ねる典型が、超音速旅客機コンコルドです。経済性が悪く、赤字経営でしたが、フランスと英国の威信を掛けた最速の旅客機でしたから、2000年の墜落事故が発生するまで、止めるに止められず03年になってやっと廃止しました。起業前には徹底的に事業化を検証し、先の見通しが立たなくなったら早く止めるのが、現代のビジネスの鉄則です。
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