木の柱に、ペンや鉛筆で無造作に横線が引かれ日付けが書いてあります。大学生になるひとり息子の成長の過程、そう、童謡のなかにでてくる、まさに“柱の傷”です。
この“柱の傷”は、たんなる目印ではありません。
この住いが、家族と共に過ごしてきた時間と記憶の蓄積をあらわしています。
なにか、あたたかいものを感じますね。
建築雑誌などで、華々しく取り上げられる住宅の写真をには、生活感はおろか部屋の中にチリひとつありません。こんな“柱の傷”とは、とても縁遠い存在に思えます。ただ、この御家族の相談も、私の作品を雑誌で見たのがきっかけだったそうですが…。
住宅とは、住み手の生活を永年にわたり内包でき、ともに成長していけるものでありたいと考えております。新築される住いでは、ゆくゆく、こんどはお孫さんの“柱の傷”がつけられるようにしたいですね。
2001.06.21
このコラムの執筆専門家
- 岩間 隆司
- (東京都 / 建築家)
- 株式会社ソキウス 代表取締役
スマートに シンプルに 住う。 都市型住宅・集合住宅
都市の厳しい条件のもとでも、住宅や集合住宅を実現させてきました。住宅計画における制約は、生活空間に個性が生まれる、ひとつの契機として、ポジティブにとらえております。
03-5735-9700
「都市の生活」のコラム
建築空間のリアルとバーチャルとギャグと‥。(2015/06/15 09:06)
近未来的物流施設(2014/03/29 17:03)
西大泉の集合住宅 ウイーク・タイドなコミュニティー(2014/03/29 14:03)
日本橋の住宅とその界隈(2013/04/09 08:04)
渋谷(2013/03/05 12:03)